あらすじ
氏子の発案で、小烏神社で「虫聞きの会」を開くことに。鈴虫や蟋蟀 の声を聞きながら皆でお月見を楽しんでいたが、医者の泰山が気になることを口にする。江戸で不眠に苦しむ患者が増えているというのだ。数日後、以前泰山に命を救われた元芸子が竜晴を訪れ、ある扇子を手に入れてから、毎晩同じ悪夢を見ると訴えるが。流行り病か、それとも怪異か。
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Posted by ブクログ
〈小烏神社〉の宮司で様々な術を操る竜晴と二柱の憑喪神・抜丸と小烏丸の活躍を描くシリーズ第六作。
今回は江戸で不眠に苦しむ患者が増えているという、医師・泰山の話が発端。
単なる噂話ではなく、泰山の患者で元芸子のおくみや伊勢貞衡も奇妙な夢で眠れない日々が続いているという。
読み進めていくと、このシリーズによく出てくる憑きものの話だと分かるのだが、憑いているものは小烏丸にも縁のあるものだった。
ネタバレになるため詳しく書けないのがもどかしいが、この怪異の裏には小烏丸に縁のある者を巡っての切ない想いがあった。
ただこの話がこれだけに終わらないのがこのシリーズが長く続く理由。
伊勢貞衡の不眠はそれだけではなく、別の霊が影響していたし、更には霊を操る者の存在も明らかになってきた。
江戸で不眠を訴える人が増えているという事態は、泰山の周囲だけでなく、花枝・大輔姉弟の両親が営む旅籠の客にも起こっている。
そして竜晴が気を吹き込んだ獏の札の絵も変えてしまうという強い力を持っている。
勿論竜晴も天海大僧正の助力も得て伊勢貞衡とおくみを救うことは出来たが、ラスボスについては正体すら掴めていない。
ここは次回以降のお楽しみということだろうか。
小烏丸の物語については彼の夢で徐々に明らかになってきたが、彼が記憶を取り戻すのはまだ先のよう。彼の本体である刀が見つからないからだろうが、このこととラスボスと関りがあるのかどうかも気になるところ。
陰陽道の力がある代わりに人間らしさの薄かった竜晴だが少しずつ周囲に気を配るようになってきた。また4話目から仲間に加わった狐の玉水が調子はずれなようでドキッとするようなことを言うこともあり、面白い。
〈小烏神社奇譚シリーズ一覧〉全てレビュー登録あり
①弟切草
②梅雨葵
③蛇含草
④狐の眉刷毛
⑤猫戯らし
⑥吾亦紅(本作)