あらすじ
母親が望む父親と同じ道に進んだ女性医師は、刑務所のお医者さんになって「天職」を見出した。〈文身〉〈傷痕〉〈玉入れ〉など、受刑者カルテには独特の項目はあるけれど、そこには切実に治療を必要とする人たちがおり、純粋に医療と向き合える環境があったからだ。薬物依存症だった母との関係に思いを馳せ、医師人生を振り返りつつ、受刑者たちの健康と矯正教育の改善のために奮闘する日々を綴る。
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Posted by ブクログ
本屋でジャケ買いした次の日に読み終わってしまった。
とにかくとても読みやすかった。内容は、まあ、とても重いが… 著者の人もそれを分かっているからか、全体的に軽い書き方をしてくれていたのかと思う。
刑務所で働くお医者さんは、矯正医官と呼ばれる。ムショの人たちの矯正をサポートする存在だから。
でも外の医者とは結構やること、できることが違う。まずはお金とスペースの問題で医療器具も薬も圧倒的に少なく、ボールペンなどの小物も少ない。後者がないのはお金ではなく、ボールペン、タオル、傘、なんでも凶器もしくは自傷の道具になりうるから。
また、お礼参りを避けるためにも、個人情報はほとんどなく、医者もナースも刑務官も、名前では呼ばれない。先生とか部長とか。
刑務所には暖房冷房がない。薬も医療器具もない。カネがない。
でも健康に刑務についてもらわなきゃいけないので医者がいる。でも金はない。しかもまあ、刑務所での勤務という響きの悪さから人が来なくていつも人不足になっているらしい。
ただ、よく考えると、刑務所での勤務は普通の病院よりよっぽど安全。
武器は持ち込めないし、刑務官が四六時中見守ってくれてるし。訴訟とかモンスターカスタマーもいない。
でも給料は安い。なので、普通の医療業務に疲れてしまった人や、病院における人間関係やパワハラが嫌になった人、当直システムがないところを希望する人など、普通の医者ではあまり見ない業務をしたい、要は変わった人が多くなるらしい。
でも、なんか医者として職業として普通のことを求めてるように思えるけどなぁ…
少年刑務所や少年院に入る子供たちの例が何件か描かれるが、どれももうとにかく救えないものばかりで切なさ乱れ打ちになる。興味深いけども、それよりなによりつらい。
コロナの間は受刑者たちもマスク必須になり(これまでタオルも湿布も、首吊りなどに使えてしまう布製品は厳禁だったにも関わらず)、刑務作業も全部できなくなってしまった。これまでは炊事も自分たちでやってたのがそれもできなくなったため、仕出し弁当を食べるようになり、一気に塩分や糖尿問題が再発したらしい。これも、塩分控えめとか健康的な弁当を買えたら良かったものの、金がなくて激安弁当しか買えなかったんだろうな…
そして(格安の作業量というのもあり)刑務所で防護服を作ることになり、生きがい復活。
結局、矯正医官のやることは病気を治すことというより、受刑者を健康に保つこと、そして刑務所での矯正の効率を上げること。
ただ、結局出所するとそれまでの健康的な生活はほとんどの場合崩れるし、知能的、倫理的など色々な問題があった者は社会に戻ってしまうと途端に誰にもフォローされなくなり、最悪すぐ戻ってきてしまう。
いや、実際はフォローする仕組み自体はあるが、その申請をできる能力や余裕がないため助けを受けられないという、かなり本末転倒な状態になっているらしい。まあ、確かに言われればそうだなと思わざるを得ない。仮釈放者の保護観察のように、助けが必要な人は出所前からヘルプの準備をしておき、一定期間は面倒を見る、という仕組みが必要なんだろうなぁ。実際そういうのも存在してそうだけど、結局自然発生はせず、本人が申請したりする必要があって結局何も起きてない、とかもありそう… 実際、そこまで手をかけられないだろうし、難しいだろうな…
なので、刑務所内で治療をするだけではなく、出所したあとに本人の努力以外にも周りのサポートがどれだけ与えられるかというのが医者そのものよりも肝心なのかもしれない。
プリズン・ドクターそのものについても知らないことばかりで面白かったが、それに加え、刑務所とはなんなのか、何のためにあるのかというのがなんとなく伝わる良書だった。
Posted by ブクログ
法務省のホームページによると、日本国内には刑事施設が全国に77ヵ所存在する。刑事施設収容法に規定される刑事施設の内訳としては、裁判で刑が確定した人が、刑務作業や教育により社会復帰を目指すために収容される刑務所が55ヵ所、26歳未満の若年受刑者を収容し、年齢に合わせた教育や訓練を施す少年刑務所が7箇所、女性受刑者専用に配慮された設備を持つ女子刑務所が5ヵ所、起訴後の被告人や死刑確定者を収容する拘置所が8ヵ所、最後に医療刑務所が4ヵ所存在する。医療刑務所とは一般の刑務所で対応できない疾患、精神的な疾患、高齢などで専門的なケアが必要な被収容者を収容する施設である(前述した施設数は若干古い様で、最新の数値を改めて調べてみたところ、刑務所61箇所、少年刑務所6箇所、拘置所8箇所に加え、多数の支所が存在し、女子刑務所も11ヵ所となっていた)。何れにしても、悪事を犯した罪人を「閉じ込めておく」事を目的にしたものではなく、あくまで「更生させて社会復帰させる」事が主目的である(無期懲役は刑期が決まっていない「無期限」なだけで、更生度合いにより出所する可能性が否定されているわけではない)。なお一般の刑務所では受刑者は日々労働に従事しており、刑務作業と呼ばれる労働の対価(報酬)は1日あたり130円程度である。現在約32000人が就業中となっている。当然その中には前述した様な医療刑務所以外でも体調や精神面に不調を来すものがおり、本書「プリズン・ドクター」はその様な刑務所内の受刑者を診る医者のことを指す。
本書は2018年からプリズン・ドクターを勤める筆者、おおわた史絵氏が刑務所内の医療をしながら実際に体験した出来事や感じたことを記載したエッセイとなっている。医師の免許を持ちながら何故彼女が刑務医療の世界に従事するのか、また実際の受刑者たちを見て考えたことなど、我々が日常体験したり見ることのできない世界がそこには広がっている。寧ろ我々が普段描いているテレビや映画で見る様な世界とは若干異なるリアルな世界観に、驚きを覚えることの方が多いだろう。おおわた氏は自らも刑務医療に関わる以前に辛い体験をされており、それがある種きっかけとなってこの世界に入ったのかもしれないが、受刑者の立場に立った考え方や行動には非常に感銘を受ける。
日本の司法や本書の扱う刑務所をはじめとする刑務施設の環境、受刑者の構成方法など未だ未だ課題が山積かつ、今後も日々改善や進化が見られると思うが、本書のおおわた氏の様な医師が奮闘する様な現場が日本中には沢山あるものと思う。受刑者であっても人である。被害者視点で考えれば決して安易に許しを得られる様なものであってはならない。だが人である以上、(死刑を除き)生きる権利はあるのであって、それを(労働量維持の側面を持ちながらも)維持するために努力する人々が居ることを忘れてはならない。
Posted by ブクログ
刑務所内で医療を行う矯正医官と呼ばれる仕事に従事する筆者が、どうして矯正医官になったのか、刑務所内ではどのようなことが特徴的なことであるか、筆者の家庭環境…等々を語る。
罪や、その矯正とはなにか、。色んな不幸や環境、先天的な知能障害や病気により、社会の爪弾き者にされ、結果として不幸にも犯罪に手を染めてしまい、刑務所に入ることになった人々を、どう矯正していくか、どう救っていくか。単純に、あなたがしたことは悪いことなので、してはいけませんよ、はい分かりましたで終わらない、通じない人々がいる。そもそも、こうした彼ら彼女らが犯罪に手を染める前に、社会で、できることはなかったのか。
矯正(救済)の困難や、人間社会全体の問題も筆者が本書で述べるところであり、考えさせられるものがあった。
Posted by ブクログ
元開業医、現刑務所のお医者さんのおおたわ史絵さんが法務省矯正医師になるまでの経過とその後の話が書かれています。
塀の外の病院と同じような設備で手厚くとはいかなくても最適な医療を受けられるように工夫する先生の姿に仕事に対する向き合い方が伝わってきます。
罪を犯した人に医療なんて贅沢すぎる!という声も聞かれるようですが、健康でいてもらうことでしっかり罪を償ってもらうという感情的にならずに仕事に徹していることも文章から読み取れました。
適切なケアを受けられずに刑務所に入るはめになってしまった人(なかには少年少女や90才の高齢者も)の問題も書かれています。
だからと言って極端に同情的というわけではなくただ現実が書かれていて、残酷な犯罪に対してはしっかり怒る、バランスの取れた読みやすい本でした。
Posted by ブクログ
テレビによく出ていた、おおたわさんの本です。
刑務所のお医者さんになっていたのですね。この本を手に取ったのは、お題にもあるように、刑務所のドクターは、どんなことを行っているのか、興味があったからです。ほとんどの人は、お世話にならないところですので、わたし達がいる世界では、体験出来ない状況を、興味深く読ませてもらいました。
Posted by ブクログ
一時沢山メディアに出てらした、おおたわさん。
今は刑務所でのお医者さんをされてると知って読んでみた。
おおたわさんの文章は読みやすくわかりやすい。
でもうっかり受刑者が、いい人そうに見えてしまって、
いやいや法を犯してる人達だと頭で再確認しながら読んでいた。
縁のない事、と思っていてもどこで引っ張り込まれるかわからない。
勉強させて頂きました。
Posted by ブクログ
刑務所等にいる受刑者も人間であり怪我や病気はするもの。その被収容者の診察に当たる医師は、法務省矯正局の医師となる。
悪い事した人をなぜ国の税金で助けるのか。と安直に考えていると、本書にて早々にその説明がある。
刑務所は罪人を閉じ込めて懲らしめる場所ではない。犯した罪に対して懲役という労働をさせ、社会復帰をさせる矯正施設だということ。被収容者が健康で元気に労働するために医療施設があり医師がいるのだということ。なるほど、ハッとする。
とはいえ、ぶっちゃけ待遇も環境も良い訳では無いようで
なり手は少なく、かと言って志高い医師達が任にあたっているかというとそうでもないらしい。
知られざる刑務所の中の出来事を、軽妙に、時には制度を含めた社会的課題についても鋭く切れ込む内容。
そして終章では明るい話題で締める内容。巧い。
Posted by ブクログ
獄窓記を思い出しながら読みました。やり方を変えれば、塀の中に戻る人はもっと減らせるのではないでしょうか。
笑いヨガは、費用もそんなにかからないのでぜひ取り入れてほしいです。
Posted by ブクログ
TVで活躍していた女医さんがプリズンドクターになった経緯から受刑者が犯罪に至る理由まで幅広く取り扱い読みやすかった反面、雑誌の連載エッセイのように問題を提起するほどの力が入った所はなかった。
知能指数が70以下の人たち、劣悪な家庭環境下で育った人たち、ホルモン異常などで暴力的になる人たち等懲役では改心させようもない人たちが紹介されています。
犯罪者を作らない社会システムの構築にはどうすべきかという課題については山本譲司さんの獄窓記や宮口幸治さんのケーキを切れない非行少年たちの方が切迫感を感じました。
Posted by ブクログ
プリズンドクターも気になったが、おおたわさんのお母様の話が怖かった。医療用の麻薬注射の中毒だったお母様。どんなに辛かったことか・・・
刑務所なんか入りたくないし、身近な人にも絶対はいってほしくない。と言うより入るようなことをしない、させない社会ってできないのか
Posted by ブクログ
星3.5
実母が薬物依存だったこともあり、矯正医官となった著者。更生を願う気持ちが伝わってくるが、他の方も言っている通り、著者の場合、顔も広く知られているし、いわゆるお礼参りなど、大丈夫なのだろうか。