あらすじ
本書の副題名「卑劣なやつを叩きつぶせ」は、ご存知の方が多いと思うが、カラス事件を多くの人々に訴えたヴォルテールが、書簡の末尾につけたスローガンのようなものである。彼は若い頃から優れた詩人として認められたが、貴族が下僕を使って彼を棒打ちにしてから、貴族に寄生して生きる文学者の道をきっぱりと捨て、自主独立の生き方を選んだ。……最後の二十年以上は、ジュネーヴの郊外で「自分の庭を耕し」ながら、世の偏見と無知を批判し、虐げられた無実な人々のために戦った。そして最後は、パリに帰って大いに歓迎されて死ぬ。このようなヴォルテールの生涯と、そのときどきの彼の作品を見てくると、彼はその八十四年の生涯を精一杯、思う存分に生き抜いた人だといえるであろう。近代世界はこういう人たちによって創られたのである。だから彼らの生涯は波乱万丈で、伝記は読んで面白い。しかし本書では、細かい逸話にまで及べないのが残念である。
(本書「はじめに」より)
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Posted by ブクログ
ヴォルテールに関する前知識はほとんど無い状態で読んだ。
まず印象に残るのはルソーとの対立。
2人とも対面したら殴り合いしかねないほどの手紙のやり取りで、神格化されがちな哲学者の人間くささを感じることができた。
ヴォルテールの生い立ちから晩年までが書かれており、どんな人生をたどったのかダイジェストで分かる。
貴族とやりあって下僕に棒打ちされたり、当時は過激とされる思想の本を出版して国を追放されたり逃げたりと波乱万丈の人生を送っている。
カラス事件のエピソードでは、当時の宗教で「自殺」をすることはその一家の財産が没収されるほどの大罪であり、それを隠すために父親が子供殺しの冤罪で死刑にされるというおぞましい事件があったことを知れた。
そのカラス事件に対して世論に訴え、最終的に子供殺しの汚名を返上させたヴォルテールの行動力は尊敬できる。
ヴォルテールのことが好きになれる本だった。
「カンディード」読んでみよう。