あらすじ
伝説の番組、新しいラジオ、あの夜の瞬間……
電波では届かないラジオの魅力を原液のまま
ラジオブームが、ブームから定番のコンテンツとして定着してきた。
なぜ多くのタレントがラジオ番組を持ちたがり、大切な個人的ニュースをラジオで初出しするのか……。ニュースでもたびたび取り上げられるようになった。
なかでもオールナイトニッポンはラジオのブランド品といっていいはずだ。
そのオールナイトニッポンパーソナリティの姿を、真横で見て感じてきた放送作家たち。一緒に奮闘し、笑い、泣いて走りぬいてきた。
そこにはおそらく電波にのっていない物語が、ラジオ哲学が山のようにあるはずだ。
エンタメとラジオの今を解読するために今回、オールナイトニッポン、オールナイトニッポン0を担当する10人の売れっ子放送作家の方に協力してもらった。
まさにオールナイトニッポン公式裏本の完成です。
参加放送作家
藤井青銅(オードリーのオールナイトニッポン)
小西マサテル(ナインティナインのオールナイトニッポン)
高井均(SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル、緑黄色社会・長屋晴子のオールナイトニッポンX)
石川昭人(乃木坂46のオールナイトニッポン)
寺坂直毅(星野源のオールナイトニッポン、松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD)
飯塚大悟(オードリーのオールナイトニッポン)
大竹将義(JO1のオールナイトニッポンX)
福田卓也(Creepy Nutsのオールナイトニッポン、三四郎のオールナイトニッポン0、佐久間宣行のオールナイトニッポン0、マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0)
畠山健(霜降り明星のオールナイトニッポン、ぺこぱのオールナイトニッポン0、山田裕貴のオールナイトニッポンX)
高橋亘(フワちゃんのオールナイトニッポン0、SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル)
SPECIALインタビュー
ナインティナイン
佐久間宣行
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
テリー伊藤さんからも思考回路的な影響はメチャメチャ受けてます。メデイアに出始めた頃のテリーさんって、必ず世の中が思ってることの反対を言ってたんですよ。たとえば、まず「パパ活で問題になってる議員、いいですね!」って言ってみるんです。そこから、いろんな切り口を使って「いい」って肯定する方向のロジックを組み立てていく。「人と違う考え方をするってこうなんだな」って勉強になりました。テリーさんってどの番組でも、まったく無名のシロウトだったり、売れてる芸能人じゃなくて、あえてみんなが「あの人は終わったな」って思ってる人を使うんです。そのときパワーがない人に対して、あえて「いいですね」って肯定しちゃうことによって、輝かせる方法を考えていく思考法なんですよね。
『知ってる?24時。』はめちゃくちゃ作り込んだ番組でした。中高生がターゲットだって言われてたんで、スタッフがみんなで徹底的に学生の数字を取るにはどうしたらいいかを考えました。結局はラジオって口コミなんです。学生には「学校」っていうコミュニティがあるから、そこでの口コミはすぐに広がるんで、徹底的に学生に刺さる話題を取り上げました。
でも、無理に学生にウケそうなことをやっても、僕らはリアルタイムで学生じゃないから、向こうも大人がすり寄ってきてるってわかっちゃうんです。けど、世代を超えて共通の話題ってあるじゃないですか。「あの学校って、今も校門の前にあるの?」みたいな。だから、僕たちと学生の間で“共通の話題”になり得ることを探してました。
ラジオって五感のうちで聴覚以外を全て失った状態で始まるから、表現できる範囲が狭くて、誰も聴いたことないような新しい企画や演出って生まれにくいんです。そうなるとパクるしかないんですよ(笑)。でも“パクリ方”のモラルはあって、自分のすぐ“横にある棚”から万引きしちゃダメなんです。一時期みんながナイナイでやってるコーナーや演出をマネしたせいで、似たような番組が増えたことがあって、僕はそれを「ナイナイのオールナイト病」って呼んでました(笑)。あまりに人気があったから。マネをしたくなるのはわかりますけど、そうやって“横の棚”から商品を持ってきちゃうと、リスナーには万引きしたのがすぐにバレるんですよ。そうじゃなくて、パクるのは棚の“奥”の方から。横並びじゃなくて、歴史をひもといて過去の番組からパクるんです。古い刀でも研ぎ直せば十分斬れるんですよ。
若林さんは、青銅さんがよく言う「心が動いた瞬間を話す」というのを体現してますよね。日常で感じる妙な心のざわめきみたいなものを、話のスケールに関係なく、自分の感情をベースに話している。
放送作家の道を意識し始めてからは、ハガキの書き方も変えました。読まれたいというよりは、ウケなきゃいけないという意識。タレントをネタにする「悪い人の夢」というコーナーにおなじみのキャラではなく新キャラで送ったり、誰も書いていないパターンを探ったり、長文のネタを書いたりするようになりました。でも書き方を変えると、最初は全然読まれないんですよ。だから、人のネタを超分析しました。自分が面白いと思った過去のネタを聴き直したり、長文のネタを書き起こしたりして。
これは宗岡さんが言っていたんですけど、「非・芸人の番組がおもしろいってことは、スタッフがおもしろいってこと」だと。「こういうふうにやってください」と言ったら、ラジオ経験のない方たちは基本的にそのとおりにやってくださるので、スタッフの色が出やすいんです。それだけに、パーソナリティに合わないおもしろさを押し付けてしまわないように注意が必要で。だけど、自分がおもしろいと思っていることも反映させたい。僕もそうしたバランスには気をつけていますね。たとえば、おもしろそうなアイデアが出ても、ちょっと芸人ラジオっぽくて、その人に合わないようなら採用しません。
それで、若林さんが好きだと言ってたアーティストを聴いていくうちに、Creepy Nutsを知りました。ヒップホップって、J-POPなんかに比べて主語が小さいんですよね、あくまで「俺の話」っていうか。その個人的なストーリーが、自分の人生と近くても遠くても心に残るんですけど、Creepy Nutsの曲の「俺」は「めっちゃ自分と近い!」と感じて。ベタに「これは自分のことを歌ってるんじゃないか」と思って、すごく好きになったんです。