あらすじ
時代を読み、需要を先取りする動物的な勘。
多くの人を惹きつけ、統率する牽引力。
そして、強烈な自負心と強運。
日本を代表する有名企業をつくった「創業社長」には、どこか共通するカリスマ性がある。
しかし、創業社長のカリスマ性が大きければ大きいほど、その去り際、そして去ったあとには、巨大な陥穽が残されることになる。
セイコーの服部家、国際興業・小佐野賢治、ロッテ・重光武雄といった昭和を象徴する創業者の後継者たちは、いずれも大きな混沌を経験した。
ソニーを創業した盛田昭夫氏の長男・盛田英夫氏は、ソニー株をはじめ多額の資産を父から相続したが、それをスキー場開発やF1レースへの参戦などに膨大な資金をつぎ込み、ついにそのすべてを費消しつくした。盛田家の祖業である醸造業に取り組んだがそれもうまくいかず、それでも都心の高級ホテル住まいをつづけ、最後はその滞在費を払うこともできないところまで追い込まれた。
英夫氏は、「盛田昭夫」という巨大な存在から逃れ、克服するために自分だけの成功を追い求めたのかもしれないが、結局それは果たせなかった。
ユニバーサル・エンターテインメントの岡田家、大塚家具の大塚家、大戸屋の三森家、ゲオの遠藤家も、会社の経営権をめぐって、激しい内紛を展開している。
さらに、創業家の持つ巨額の資産には、「資本のハイエナ」と呼ばれるような地下金融の住人たちや、M資金という古典的な詐欺師たちが群がり、甘言を尽くしてカネを吸い取ろうとする。
目を覆うような悲喜劇は、そこに巨額の資産があるからこそ起こる。
リア王やマクベスを地で行く、裏切りと転落のドラマ。
経済事件取材のトップランナーである筆者が、その圧倒的な取材力と筆力によって構成する最上級の経済ノンフィクション。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
企業の栄枯盛衰は、何度もニュースや週刊誌のネタになってきたが、本作は創業家に起こった悲劇がピックアップされている。
大企業の世界は、庶民である私には遠い存在であるが、まさしく「魑魅魍魎が跋扈する」世界なのだと感じた。
Posted by ブクログ
一気読みした。
有名企業としての光の裏にある陰、現実の話しであるだけに、とても背筋が寒くなる読後感であった。各話とも登場人物、会社が複雑で入ってきにくいところがあるが、それはまさに複雑な亀裂であることを示すことの裏返しと感じた。
Posted by ブクログ
タイトル通りにおもしろかった。
日本を代表する八つの企業に起こった経営を巡るトラブルを、綿密な取材を元に描き出している。
後継者を巡る軋轢、人事の駆け引き、言葉巧みな闇の勢力に堕ちる者さえいる。
本当に、現実は小説より奇なり、である。
Posted by ブクログ
創業家一族の様々な亀裂を見ると、その過程にみな本業に関する話しが殆ど出てこない。マネーゲームや地位を獲得するのに躍起になり、本業に関する想いが全く感じられないものばかりだった。仕組みが複雑になり実態が分からないスキームばかりに心血を注いでいる暇があったら本業を磨くべきだと改めて思った。
面白い
創業者が道を外れて行くのは仕方ないと思うが、2代目3代目は、資産の奪い合いで道を外れて行くのが多いことを見て、家族には何も残さず、ビジネスのイロハや金の教育を施す方が大事なんじゃないかと思って読んだ。
しかし最後に村上ファンドの話で締めくくるとは。
何が正解なのかは、マジでわからないと言うのが読了後の感想です
Posted by ブクログ
亀裂はいつ生まれたのか。起業の火は一人の情熱から始まる。だが拡大とともに血縁は盾であり足かせにもなる。成功は親族の絆を強める一方で富と権限は疑心をも呼ぶ。やがて功労と嫉妬、理想と現実の継ぎ目に細いヒビが走る。転じて創業者の「志」が継承されず家族は争いへ引き込まれる。ドラマではなく簿記の行間で人は壊れるのだ。結局のところ企業を滅ぼすのは外の敵ではない。内に潜む見えぬ「裂け目」である。
Posted by ブクログ
感想
どの会社でも社員は汗水垂らして働いているのに経営者は権力争いに明け暮れて、会社のイメージを下げるなんて何やってるんだか。
途中から社員や客のことじゃなくて、自分しか見えないのは情けない。
あらすじ
創業家の骨肉の争いを書くドキュメント。
ユニバーサルエンターテイメント
ロッテ
大塚家具
大戸屋
セイコー
国際興業
ソニー
ゲオ
村上家
Posted by ブクログ
現大手オーナー企業で起こった家族内の内紛、つまり現代版の御家騒動の数々を取り上げたノンフィクション。最終章に出てくる、村上ファンドの村上家を含めると9つの家が取り上げられている。
ロッテの重光家や大塚家具の大塚家といった有名な事例から、ゲオホールディングスや国際興業の内紛など、あまり知られていない事例もある。
9つのケースが取り上げられているので、一つ一つの記述が、割と短い。そのため、やや余韻が感じられない。一つ一つの分量を増やせば、もっと面白くなった可能性があるので残念だ。
Posted by ブクログ
まず、イントロがいい。
戦前〜戦後の日本経済および日本企業の盛衰興亡を俯瞰し、そこに次々と本書で登場する企業がシンボリックに立ち現れていく。
テーマがいい。
あとがきでも触れてあるように、合理的なはずのビジネスにおける非合理の象徴としての、同族経営と醜い権力闘争。
ここに登場する人々はすべて生臭く、時に滑稽ですらある。だから、面白い。
ビジネス書として読むよりも、悲喜こもごもの人間ドラマとして捉えたほうが楽しめる。
ただ、ある種悲劇のパターンとしては類型化されているので、取り上げている企業への思い入れや知識、関係性がないと、フレッシュさは読みすすめるごとに失われていく。