あらすじ
人間の寿命は38歳です。現在は、医療の発達や栄養状態が良くなったために人間の寿命が延びるようになったのです。生物学的に考えると40歳以上になったなら、人間は自分なりの規範を掲げ、上手に楽しく生きるようにした方が良いのです。
本書ではなぜ人間に生と死があるのかという初発的な疑問から、人間の進化の歴史、ファーブルのダーウィン批判など進化論論争から読む「生命の本質」まで、「人間の生と死」を幅広く考察します。
そして中高年齢期になったなら、人間は自らを解放し、自由に恋愛をし、社会システムの変革を心掛けることを提案します。自分の生き方は自分で決める他はないのです。それが「かけがえのないあなた」を承認することになるのです。
個人の規範は大事であり、繰り返しと循環に基づく生活リズムを大切にします。そして試行錯誤を繰り返し自分に最も良く合った生活習慣を身に付けることが重要です。
人生に目的や目標をもつことを生物学的に考えることが本書の狙いです。金沢城のヒキガエルが最高の生き方(必要な餌を求める時間以外はほぼ大体寝ている)かもしれませんが、悲しいかな大部分の人間は目標を立てて頑張らないと善く生きられない生物なのです。
では他人との関係はどうするか。たとえ妻や夫であっても、基本的に他人です。他人との関係も自分が最も気持ちよくなれる規範を持つことが大切です。
長寿になってしまった人間としての日々を生きる読者の「生きる価値」とは何か。この問題を「人間の生と死」の生物学的視点から考察する本書は40歳以上の読者のみならず若い方にも読んで頂きたい必読書です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
自分の規範を作る
基本は我慢し、時に我慢を解放してエクスタシーを得ることが大事である
社会の規範を疑う
利他主義、努力という2大ペテン語は要注意
がん検診は受けない
40歳位の人生はオマケである
新しい事には興味を持ち若々しくする
他人との距離感を持つ
日本のように人口減少は自然作用である
短いスパンで小さな目標を作り日々こなして達成感を得る生き方をする
何かをして行くことが心の安定に繋がる
極度の健康志向は逆効果である
Posted by ブクログ
生物学ネタか人生訓か?どっちも楽しめた私は満足
明石家さんま出演のテレビ番組『ホンマでっか!?TV』でおなじみの生物学者、池田清彦先生の著作です。
ゲノム解析した結果、人間のDNAに刻まれた本来の自然な寿命は38歳なのだそう。だから人間それを過ぎたらあとは余りものの人生なんだし、他人や社会に押し付けられたルールではなく自分で規範を設けて(時には規範を破る快感も味わいながら)好きに生きていこうというメッセージがこめられています。
人生訓と生物学トピックを、やや力技でからめているような、ただ単にたがい違いに繋ぎ合わせただけにも思える構成ですが、中年の生き方と生物学どちらにも興味がある私は楽しめました。
地球でいちばん初めの生命である単細胞生物についての話から、遺伝子・ゲノム、はては人間固有の変態的セックス、社会運動、現在の日本の政治経済まで、著者のやりたい放題・言いたい放題のごった煮状態です。
提言の中には突飛な主張も多く見られるけど、凝り固まった日本人の頭には突飛なぐらいの意見のほうが良い刺激になるかも!というのは読者として良心的すぎですかね?でも読んでいて、けして嫌な思いはなく、楽しかったです。
日本を多様性のカケラもない国だと一刀両断する著者の姿勢は気持ちの良いものでしたし、規範なくしては人は生きられないが、その規範は自分でつくることができるというメッセージは、この生きづらい今の日本社会で生きる私たちには大事は考えだと思います。
にしても読む人を選びそうな本で、純粋に生物学的な読み物を期待する人には、著者の説教が煙たいだろうし、中年以降のライフスタイルを模索している人には生物学ネタは時間のムダかもしれない。そして何しろカバー帯には開襟シャツにサングラスをかけたニッコニコのクセ強なおじいさん(失礼)の写真がデカデカと!いや、私みたいな物好きは思わず手に取りましたけども笑
Posted by ブクログ
なかなかにファンキーなオヤジである。「健康診断なんて受けるな」「40過ぎたら不倫せよ」「地球温暖化なんて放っておけ」「固有名詞が出てこないのは豊かな人生の証」…。一見無茶な言説に見えるが、(「自然選択の影©︎メダワー」に入る)40代からは生物としての「おまけ」なのだから好きに生きるべし、という著者の主張に説得力を与えているのは著者の生物学者としての豊かな自然科学の知識だ。しかしこんなに自由に生きている人の家族構成というのはどのようになっているのだろう、と下衆な勘繰りも入れてみたくなってしまう。