【感想・ネタバレ】二木先生のレビュー

第9回ポプラ社小説新人賞、堂々の満場一致で受賞!
「変」と言われ続けてきた高校2年生の田井中。自分の気持ちに素直に行動すればするほど、自分が異質であることを思い知らされてきた。流行りのポップスより、昔のアーティストが好きだった。でも、そのアーティストについて語ったら「変な子ども」の烙印を押された。だから、「普通」になろうと努めてみたけど、どれも上手くはいかなかった。
そんなとき、爽やかそうな美術教師・二木先生の抱える"大きな秘密"を知ってしまった。二木も田井中と同様、ある性質によって、社会からはじき出される苦しみを知っている人間だった。
──許されない欲望を抱えた人間もいる
「普通」とは何か。そして、それは誰が決めるのか。「普通」であることが正義なのか。では、自分が「普通」とは違うと気付いてしまったとき、どう生きていけばいいのだろうか。社会から逃れて生きることなど、出来やしないのに。
無理に認められようとしなくていい。「普通」に変わろうとしなくてもいい。ただ、認められない感情を嘘で包み隠して生きていけばいい。
社会での生きづらさを苛烈に正面から描き切った、確実に存在する現実の物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

大きなボリュームでしたが、学ぶことが多く物語全体としてとても面白かったです。

物語の序盤では、主人公である田井中の行動(幼少期に友人の父親を叩いたり、本屋で万引きをしたり等)に対しヒヤッとすることがありました。

その後、二木の秘密を知った田井中は、万引きがバレた時にその秘密を弱みとして利用しようとしたところから、物語は加速し思わぬ展開に進んでいったと思います。
終盤の二木とクラスの緊張感は凄いものでした。

田井中と口論になった時の二木のセリフには、人々の生き方について色々と考えさせられました。

特に印象的だったのは、本当の自分を押入れの中にしまって生きるという選択肢について。その考えは誰にも迷惑をかけなければ良いと思っています。
しかし他人がその事実を知ってしまった時、それをどう感じるかは受け手に委ねられます。
二木の趣味がどうとかは置いておいて、押入れの中に本当の自分を隠すという生き方は、無理のない範囲なら良いのではないかと思いました。

僕の場合だと自分も周りの友達には読書が趣味とは言わず、ゲームやエンタメの話で周りと話を合わせているみたいな感じかと思いました。

また、度々出てくる吉田を始めとするいじめっ子集団による田井中へのいじめシーンは、リアルな描写で生々しい緊張感が伝わって来ます。
正直読んでいて不快な気分になることもありました。
集団に馴染めないと世の中生きづらいのも事実なのかも知れませんね。。

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2024年05月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『ロリコン』と聞いただけで拒否反応が起こる。反射のようなもので、深く考えるまでもなくタブーという認識だ。
ただ、二木の話を聞いているうちに「確かに冷静に考えれば何も悪いことではないのかもしれない」とも思った。
多様性が叫ばれる世の中で、小児性愛はその対象に入っていないだろう。その願いが成就して行き着く先にあるものが犯罪だからだ。
ただ、そちら側に立ってみると本当に辛い。
僕自身は性自認が男、恋愛対象は女性で、女性しか好きにならない、年齢幅はざっくり20〜30歳くらいだろうか。それと同じように、小児性愛者は恋愛対象が幼い子供で、それはもうどうしようもない。自分には変えようのない自分を、世界のルールが許さない。絶望だと思う。
それを踏まえると許すべきなのではないか、というか許すってどの立場から言ってんだよ、という感じだ。
もちろん、実際に行動にうつす人間はもってのほか、それは小児性愛に限ったことではない。でも誰にも迷惑をかけていないのなら…。

あと個人的に、主人公・広一が自分と似過ぎてて読むのが辛くなりました。気付いてはいるけど、それを直視すると自分が嫌いになり過ぎるから見て見ぬ振りしている部分を、広一がつらつらと語るもんだから個人的にキツい部分が多々……。
あまりにもリアルだったから、作者の人もきっと自分と同じ人間なのではないかと想像して、そこは少し気持ちが楽になった。
自分は、自分の嫌いなところとどうやって共存していけばいいのか、ということに未だ正解が出せずに生きています。だからこそ、この物語がどんな結末にたどり着くのか気になって、ページを捲る手が止まらなかった。

そういえば高校の時にロリコンを自称する友人がいたことを思い出した。作中に『LOL』というロリコン向け雑誌が出てきた時、そのモチーフとなっているであろう雑誌と、それを見せてきた友人・Mの顔が浮かんだ。
正直、その雑誌の内容を見たときは引いた。「これはひどい…」と思った。
でもその友人に対する印象は変わらなかった。
Mは実際に幼い子供に手を出すことなんてもちろんしないし、一緒にいて楽しい奴だったから。
作中に『ロリコン』という言葉が出てきてもMのことはすぐに思い出さなかった。『LOL』という単語が出てきてやっと「あ、そういえば」となったのは、自分にとってMがロリコン云々の前にひとりの友人であるからだと思う。それはMの一部でしかなくて、それだけでその人の人間性を判断するようなものではない。

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2024年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

広一視点だったからか、だんだん二木の印象が良くなっていったのが不思議だった。
最後の授業でクラスメイト対広一・二木の構図になった時、広一が二木をカバーし、息があったように茶番をする二人に思わず笑ってしまった。
周囲から理解されないからこそ、自分を好きでいるために周りを気にしない、そんなテーマが一番現れている箇所だったと思う。
夕日に向かって走れあたりの、周りを完全にバカにしている表現が見事で、最高だった。
続きを読みたくなった。

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2024年06月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 読んでいくにつれて、続きが読みたい!ってなった本。
 周りに合わせることができないユニークな感性を持った広一と小児性愛者の二木先生。
 広一の生きていくヒントを自然と与えている二木先生とそれを受けて、反抗しながらも進歩をしていこうとしている広一がとてもよかった。
 これから教師になるにつれて、誰にも言えない複雑なコンプレックスを持った子、感性が一般とはかけ離れている子と出会うかもしれないけれど、それは間違いじゃなく堂々たしてればいい。「自分を好きになる」ということが1番大事ということを伝えてあげたい。

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2024年06月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分が極端なマイノリティであることを認められているからこそマジョリティを演じるのがうまいんだな

ロリコンが危険なんじゃなくて、自分の欲求を満たすために行動に移してしまうことが危険とは
欲求や性癖も持つだけなら問題ないだろう
ただその人間が自律できる保証はどこにもないので難しいところ
先天的にロリコンである人はどうしたらよいのか

万引きの伏線が最後に回収されるのは笑った

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

マイノリティの生き方について考える。隠したいことがアウティングされた時のことを考えると怖すぎる。そして、マイノリティを認めない社会の怖さ。これが現実なんだろうか。優しい社会になるといいのに

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2024年04月15日

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