【感想・ネタバレ】二木先生のレビュー

あらすじ

どうしたら普通に見えるんだろう。どうしたら普通に話せるんだろう――。いつもまわりから「変」と言われ続けてきた高校生の田井中は、自分を異星人のように感じていた。友だちが欲しいなんて贅沢なことは言わない。クラスのなかで普通に息さえできたなら。そのためならば、とむかしから好きでもない流行りの歌を覚え、「子供らしくない」と言われれば見よう見まねで「子供らしく」振舞ってもみた。でも、ダメだった。何をやっても浮き上がり、笑われてしまう。そんな田井中にとって唯一の希望は、担任の美術教師・二木の存在だった。生徒から好かれる人気教師の二木だったが、田井中はこの教師の重大な秘密を知っていたのだ。生きづらさに苦しむ田井中は二木に近づき、崖っぷちの「取引」を持ち掛ける――。社会から白眼視される「性質」をもった人間は、どう生きればよいのか。その倫理とは何か。現代の抜き差しならぬテーマと向き合いつつ予想外の結末へと突き抜けていく、驚愕のエンタテインメント。2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。

...続きを読む

第9回ポプラ社小説新人賞、堂々の満場一致で受賞!
「変」と言われ続けてきた高校2年生の田井中。自分の気持ちに素直に行動すればするほど、自分が異質であることを思い知らされてきた。流行りのポップスより、昔のアーティストが好きだった。でも、そのアーティストについて語ったら「変な子ども」の烙印を押された。だから、「普通」になろうと努めてみたけど、どれも上手くはいかなかった。
そんなとき、爽やかそうな美術教師・二木先生の抱える"大きな秘密"を知ってしまった。二木も田井中と同様、ある性質によって、社会からはじき出される苦しみを知っている人間だった。
──許されない欲望を抱えた人間もいる
「普通」とは何か。そして、それは誰が決めるのか。「普通」であることが正義なのか。では、自分が「普通」とは違うと気付いてしまったとき、どう生きていけばいいのだろうか。社会から逃れて生きることなど、出来やしないのに。
無理に認められようとしなくていい。「普通」に変わろうとしなくてもいい。ただ、認められない感情を嘘で包み隠して生きていけばいい。
社会での生きづらさを苛烈に正面から描き切った、確実に存在する現実の物語。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。先生と生徒の単なる秘密の共有ではなく、相手を陥れる秘密を持ってしての口止め関係から始まる危険な物語かと思えば、そんな関係であるとは思えないほど熱心に主人公の小説を添削してくれる二木先生、二人の関係は危ういが、なぜか安心するところがある。

人に認められること、誰かのために自己を犠牲にすること、普通でいるための努力を惜しまなかった主人公が、二木先生との関わりの中で変容していく姿が面白かった。

委員長はいいやつや

0
2025年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〜1周目〜
2023.03.17
人間の奥深いところの考え方や、外面と内面が垣間見えてとても面白かった。
人は誰しも人に言えないような秘密があるということを体現したようなものだと思う。

0
2025年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ラノベ的な、調子にのった主人公と秘密を握られて可哀想に振り回される先生のお話だと思ってたので、テーマが重くてちょっとびっくりした。
ただ、前半は意外と先生の性癖自体の重さをそこまで重く感じることはなくて、それはなぜかと言うと先生が一枚上手で、主人公と先生のやりとりがサクサクすすんで面白いから。
しかし後半になるとやっぱり先生の秘密である性癖が問題になってしまい、ちゃんと隠していても、犯罪を起こさないと心に誓っていても、その性癖がある、というだけで今までいた世界が自分を拒絶してくる様子が描かれていて、マイノリティに生まれただけで、なんとも生きづらくて大変だと思った。
正欲とよく似たテーマを扱っているけど、
こちらの性癖のほうがわかりやすかった。
このお話を読んで面白いと感じるかどうかというよりは、普段から「多様性」について自分がどう感じているのか、それがどう当事者=マイノリティな人たちに影響するのか、考えていかなければいけないと思うことが重要なのではないかな、と思った。

0
2025年09月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

感想を書き連ねるだけ
主人公の高校生は、自身が人と比べ明らかにおかしくて変わっていることを自覚している。普通の人間に擬態しようとしたこともあるが、おかしいが故に具体的にどこがおかしいのかまでは自覚出来ず、結局普通になることを諦め、人と『変わっている』ことを人より『特別である』という認識に置き換えることで自尊心を保つという生き方をしていた。他を見下すことでしか、自分を肯定できない。しかし、そんなプライドの高さは、自分のことを認めて好きだと思える自己肯定感の高さには繋がっていないようで、そんな矛盾であり正論のようなものが、数々の葛藤や生きづらさを生んでいることに、主人公自身は気がついていない。自分は『特別である』と思っても、心は孤独だ。
無意識下では自分のことを認められていないので、自分が『特別である』ことを誰かに認めてほしいと思うが、特別になるためにはおかしさを貫いて沢山努力しなければならないらしい。自分の城を築かなければならないようだ。もしくは、社会から弾かれるようなそのおかしさを遠くの方にしまって、普通の人間に擬態する努力をしないといけない。どちらの努力も大変だ。とにかく、ただ他を見下してその場でグチグチと文句を言っているだけでは、特別にはなれない。この理論を突きつけてくるのは、主人公よりさらにおかしいと言われても仕方のないほどの秘密を抱えている二木先生。先生は、これらの努力をどちらもしてきた人だといえる。それをわかっている主人公は、二木先生の言葉に反論できず、同時に、自分なんかよりずっとおかしいはずの二木先生が、こそこそと隠れて生きているどころかむしろ自信を持って上手く生きているように見えることにも、無意識に腹が立っていた。そんな先生に痛いとこを突かれなんとも言えない不快感に襲われることが多々あった主人公だが、正直私の心の輪郭がなぞられる瞬間もあり、そのときはとにかく嫌だった。私の醜さを見抜かれているようだった。自尊心を逆撫でされるような気持ち悪さと同時に、言い当てられたことによる感動に近いのかも分からない鳥肌が立った。この小説はこの2人が軸に進むが、2人の人間物語というよりは、おかしく変わってると言われる人達が社会から弾かれないためには、この世界でどのように生きるべきなのか、最適解を説いている小説なのかなと思った。主人公は二木先生に煽られながらも『特別である』ために必要な努力をするうちに、向き合うまでは見ずに済んでいた、自分は特別になれないかもしれないという不安と隣り合わせになる。その結果自分の欠落している、つまり『変わっている』と思われる部分を減らそうと普通の人たちの反応をよく見るようになって、色々ありながらも最後の方は『普通』になることを求めているような気もした。他の人物は、自分が持つ正論、自分を納得させ形作っている意見を持って、安全な場所から主人公や二木先生などの『変わっている』人を攻撃してくる、諭してくる。自分自身のおかしさに疑いをかけていない。自分は弾かれない多数派だから。その点主人公は二木先生の言葉を受けて行動したこと、プライドが高いとはいえかなり柔軟かもしれないと思った。誰よりも周りの目を気にしていて、芯が弱いともいえるのか、?思ったことを書き連ねたこの文章、なんだか一貫性が無いし筋も通って無さすぎる。。読解力が足りないんだ、、もう一度読みたい

0
2025年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

二木先生の秘密を巡って田井中と先生がどう立ち回っていくのか・・・と思いながら読んでいたら予想外の方向に話が進み面白かった。結局、田井中には人と違った才能がある(と思われる)し、二木先生の性癖は性癖だしで、普通ではない者同士の話ではある。ただ、自分を好きになる、というメッセージは普通の人・普通でない人の双方に向けたもので、私のような普通の読者も置いてきぼりにされない結末となっていて読んでいて気持ちが良かった。

0
2025年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

正直、全登場人物あんまり好きになれなかった笑委員長もめんどくさい。二木論理的な攻め方なんか嫌だ、広一自分のこと正当化しすぎ、吉田最低。
なんかすっきりしなかった。もちろん、伝えたいことはすごくわかったけれど。考察力が乏しい私からすると、吉田痛い目にあって欲しかったなぁと思ったのが一番の感想。

というか広一の思いつく小説一つ一つが普通におもしろくてすごい。全部読んでみたいと思った。
吉田のイジメは吐き気がするほど胸糞悪かった。そして、こういう小説って絶対先生助けてくれないのね。ストーリー本当に面白かったけど、私にはいじめ描写がどうも腹立って見てられない。

二木、広一の悩みの描写はものすごく分かりやすかった。2人が幸せに生きられるといいな。

0
2025年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

"いつだって数の多い方が「普通」になる"って本当にその通りで…

普通になりたい広一と普通に見える二木先生
二木先生の秘密は1ミリも理解できないし、きっついなと感じるけど…
彼らの応酬を見ていると、どうか安全なところにいて…と願ってしまう
世間の言う「普通」から外れるってすごく怖いことで、そんなときの立ち回りを考えさせられた

0
2025年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 普通じゃない主人公の男子高生と、普通じゃない担任教師の男の、「普通」の人たちの前で隠している事実を巡った攻防と思い通りにいかない人生の話。
 正直私もあまり普通じゃないかもしれなくて、主人公広一と二木先生は自意識過剰で面倒臭い人だなと思いながらも好きでも嫌いでもなかった。若いしな。逆に、「普通」の側のクラスメイト達やおっさんにはイライラしどおしで、虐めの場面には本気で憎しみを覚えたし、お前らの方がよっぽど異常で頭おかしい、傍観するおまえらもだよ、と思って、その場にいる私を頭の中で思い描いて、椅子引っ掴んで振り回す衝動に何度も駆られ、何度も本を投げ出しこれ以上読めないと思う程だった。
 でも、作者は優しかった。私よりずっと冷静で、欠陥だらけの人間というものを愛していた。状況はかわせただけで別に何もすっきり良くは変わっていないけど、そんな気がした。頭おかしいのは私だ。でもそんな私も含めて、作者は、二木は、全員を人間の一員に数えてくれるのだろうと思う。大人だなと思って、私は初めて二木先生に同情した。

0
2025年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

きっとある種の才能を持った人物が感じる「人とは違う」葛藤を、幼い子にしか興味が持てない二木先生にぶつけていく。気持ちはわかるけど、どうにも不愉快な展開が続き読み難かった。

0
2025年10月10日

「小説」ランキング