あらすじ
壮絶人生から見る社会。寄稿すればバズる。20代論客、初のエッセイ。
“まだ子どもだった頃、私にとって育った村は逃げられない檻だった。絶え間のない暴力と、際限のない貧困を閉じ込める檻"
隣で楽しそうに笑っている子、じつは困っているのに、言えないだけかもしれない――家賃を払い、学費を払い、病気になれば治療費を払う。安心できる居場所がある。そんな当たり前の日常を送る者の視界からは、こぼれ落ちる人たちがいる。しかし、そうした存在は意外と目に付かない。生まれながらに持たざる者は、経験が限定され、将来の選択肢を失いがちだ。たとえば、
◎高校の制服が買えない
◎お金がかかるから部活に入れない
◎中古1円の参考書で受験勉強
◎大学ではひとり、紙の辞書
◎レポートを書くPCが買えない
◎夏の底辺シェアハウスはベランダで寝る
◎友人からのプレゼントにプレッシャーを感じる
◎医療費が不安で自主退院
◎コロナ禍でも外で働かざるを得ない etc.
あの子はほんとに、なまけもの? 貧困は自己責任なのか? 塾も習いごともあきらめて、独学で国公立大学に進学した著者は言う。「それでもまだ、スタート地点に立てたわけではなかった」と。みなが自分の“強者性"を自覚する。そして、今より5ミリずつ思いやりの手を伸ばす。その総和が社会を優しく、生きやすくするのではないか?
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人間の底力を見た気がした。簡単に辞めたり諦めたりできるのは自分の環境の基盤が整っているからだということを実感した。後ろ向きな気持ちでいても現実は変わらない。だったらがむしゃらに突き進んでみよう、と思える作品だった。
Posted by ブクログ
ご自身の生い立ちや大人になってからの出来事を淡々と語っていらっしゃいます。100%の理解はできなくても、ほんの少しだけ想像力を伸ばしてみることで、世の中は優しくなれるかもしれない、という問いかけが心に刺さります。
Posted by ブクログ
以前から彼女の名前は聞いていて、Twitterはフォローしていました。柚木麻子さんがこの本を推していたから、ブックファーストで購入しました。買ってよかった本の一つです。
「ないものにされる痛み」という言葉をヒオカさんはよく使われます。胸を刺す言葉であり、これに刺された痛みは、これから何度でも思い出したいです。私はどちらかというと特権を持っている側だから、そのことを自覚し、全てが理解できることはないのだけど、できる限り理解したいし、自分が無知であることは常に肝に銘じていたいといつも思います。
想像力と思いやり。
Posted by ブクログ
中島義道(『差別感情の哲学』、『哲学の教科書』)を読んでいる感覚。
猛烈に反省させられるが、同時に社会に対して何ができるだろうかと次のアクションまで考えさせられる。
同世代のヒオカさん。同世代の人間として連帯できるよう、自分も武器を手に入れたい。
Posted by ブクログ
新刊で買って早三年。
積読状態だったけれどやっと読めました。
虚弱体質と働かない(働けない?)父と見切りをつけられない母という貧困家庭のダブルパンチ。
そんな中でなかなか上には這い上がれないですよね。唇を海面にあげるだけで精一杯なのに。
言葉が端的でわかりやすかったです。
Posted by ブクログ
「貧困」は今まで教科書やニュースでたまに目にするくらいで、具体的な実態がここまで悲惨なものだとは思わなかった。
綺麗なランドセルや服を身にまとえること、友達を家に招いてお菓子を食べたりゲームをしたりできること、DV がないこと。
これらがいかに幸せで恵まれていることなのか思い知らされた。
参考書を買ってもらえず、習い事 もさせてもらえず、暑さや 寒さと戦いながら独学で大学へ進んだ著者の努力や苦労は計り知れない。
貧困の実態を考えるきっかけになった。
Posted by ブクログ
子どもの時は貧困で助けてもらえても、大人になると自助努力が足りないと言われる
確かにその通りだと思った。
貧困問題をどう考えるか…新しい視点だった。
Posted by ブクログ
日本の貧困をメディアで取り沙汰されることはあっても、どこかそれは自分にとっては遠い国の話で、周りにもいなかった。もしかしたら、いたけど気づけなかったのかもしれない。
まさにそんな人たちの現状を想像することすらできない状態の自分にとって、本書はその一面を知る良い機会になったように思う。世の中には知らないと損をすることって溢れてて、福祉の手が十分には行き届かない。現状を知ることができる、という点だけでも他の人たちにおすすめしたい一冊になった。
Posted by ブクログ
メディアは極端な特殊例を好んで取り上げたがる。でも本来は、"半端に壮絶"な人だって、いや、誰だって、声をあげてもいい。そういう事例に、私自身がなればいいな、なんて思っています。
ー本書あとがきより
著者は雪国の田舎の低所得世帯の団地で育ち、子どもの頃から中学、高校、大学、社会人になっても、貧困ゆえの世間の「普通」から外れている、自分の居場所はどこにもいないと感じながら生きている。
貧困世帯のリアルな声を、本書を通して伝えてくれる。私は幸い金銭的には超余裕があるわけではないけれど、健康(ではないけど)で文化的な最低限度の生活を送れている。
奨学金の返済を続けている友人も知っている。
貧困について知っているようで、全てを知っていたわけでは当たり前だがなかったのだと、本書に学んだ。
どんな立場の人でもお金で苦しむことがないように、生活が苦しくなることがないように。
自身の経験を交えながら冷静にそう主張する著者の意見に同意しながら、改めて様々なところに目を向けようと改めて思わされた。
ここで語っていいかわからないが、ユニセフなどがよくCMで発展途上国の恵まれない子どもたちに支援を、と呼びかけているが、そのたびに日本人の恵まれない子どもたちへの支援を呼びかけるCMはなぜないんだろうと長らく疑問に思っていた。モヤモヤしていた。まるで日本には貧困世帯がいないかのように言われているようで…
日本で根深い自己責任論についても著者の考えに共感した。
あまりまとまりのない感想となったが、最後に。
ぜひ本書を読んでみてほしい。
Posted by ブクログ
貧困家庭出身の著者のこれまでの人生エッセイ。
努力してもどうにもできないことって、こんなにもあるのか⋯と思いました。
と同時に、いろいろなヒト・モノ・コトを見聞きしているつもりでも、自分、めちゃめちゃ生存者バイアスあるな⋯と思い知らされました。
貧困の問題では特によく聞かれる自己責任論。
この本を読むと、どうにもならない貧困に置かれてしまっている人の背景を知り、救済をすることが必要と思います。
が、ここで難しいのが、そういった善意を利用しようとする人が少なからずいるということ。
そういう存在を摘み取りながらの救済⋯気が遠くなりそうです。
Posted by ブクログ
2023/10/21予約 16
貧困は連鎖すると知ってはいたが、学歴が連鎖することにより生涯賃金が異なる、だと思っていた。そうではなく、生きていくためのライフハックというか情報を収集して考えたり、お金の使い方や資産形成を親がしているのを見て、なんとなく身に付くものまでもが備わっていないために、うまく生きていけない、とのこと。
学校で学ばない金銭リテラシーが欠けている。
お金がないと(コロナの)感染リスクがあっても経済的損失が怖いので、出勤しないという選択肢を持つことができない、とも。
筆者は自分で書いているように学力はあり大学を卒業でき、文才もあったため、類稀な自分の経験を外に知らしめることができた。でも頑張ればできるという一部の成功体験を、みんなに当てはめるのは間違っている、とも。
今は彼女に手を差し伸べてくれる人がたくさんいるのだろう。
でも彼女の影に隠れて見えないところにも、同じように差し伸べられたい人がたくさんいるのだ。
そんな人のために、想像をあと5mm広げて考えてほしい、と伝えている。
必死で働いても隙間に落ちてしまう、福祉の対象にならない自分も他人事ではない…
Posted by ブクログ
貧困、ひとつひとつ挙げていくと、なんと辛いことか。
決して裕福ではなかった。いろんな我慢や理不尽を感じつつも普通に大人になった。
そんなレベルではない貧困家庭で育ち、その負のスパイラルから抜け出せないヒオカ。生きる力、学ぶ意欲はすごい。
裕福なことは罪ではないし、貧困が悪でもない。最低限の健康で文化的な生活を全ての人ができるようまずは知ること。
Posted by ブクログ
知っているようで知らないし、
元々備わった環境で過ごしている人は気が付けない。
貧困家庭で育ったヒオカさんが、見えない部分を可視化してくれた本。
住まいとか本当に壮絶だけど、なぜそんなところに住まなければいけないのか、周りは気が付かないんだよね。
救いを求められる世の中になればいいと思うし、住まいや健康が保障される世の中にならなければいけないと思う。
Posted by ブクログ
これまでの生い立ちを書くPart1と、それらの論点を整理して書かれたPart2で、文章の印象が、がらっと変わる。
著者が言うところの「エモ文体」に近い(著者本人が自覚的にやっているのかは不明だが)Part1と著者の知的さが際立つPart2。
ここでも、格差から抜け出すことの難しさを思う。
社会に音もなく浸透している「生存者バイアス」に気づくのは、よほど意識しない限り無理そうな気もする。
賛否はあるだろうが、ひとが生きづらさを感じるのは、突き詰めれば幼少期(小学校くらいまで)の家庭環境によるところが大きいのかもしれないと思う。
著者のその後の努力がストレートに報われないように見えるのは、もしかしたら虐待(面前DVを含む)に起因するのかもしれないと。
健康に不安があることや、パワハラを引き寄せてしまうこと、そういうものの根っこに、家庭環境があるとしたら。
「親ガチャ」という軽い言葉ではあらわしきれない、根深い問題がある。
遠回りではあるが、温かい手を差し伸べてくれる人たちとの出会いもあり、結果として「恵まれている人 恵まれていない人」の両方の視点を手に入れることかできた。
それはこの著者の何よりの財産になるだろう。