【感想・ネタバレ】べらぼうくんのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

エッセイというより、青春記。
ままならないこの時期を、ユーモアたっぷりに書いているけど、フィクションだけど『バベル九朔』で書いたじゃん。
なんで今更?って思ったら、雑誌でエッセイを書けと言われ、出来ないと言うと、青春記でいいと言われたからだそうだ。
なるほど。

ユーモア小説でデビューしたけれど、『とっぴんぱらりの風太郎』あたりから作風が変わってきたと言われ、『バベル九朔』で離れていった読者も多かったように思う。
でも、多分彼が本当に書きたかったのは、こっちのほうなんだろうなあと読んだ当時思ったものだった。

”芥川龍之介が好きで、菊池寛が好きで、夏目漱石が好きで、中島敦が好きで、安部公房が好きで、彼らのような小説を書きたかった。”
『悟浄出立』なんて、中島敦への愛がダダ洩れだったもんねえ。

”「独りよがり」は自分のためにしか燃焼できない。他人の楽しみには決してなり得ない。他人の楽しみとなるものを書くのが小説家だ。”
飄々とした文章の中に、落としどころを探してもがく作家・万城目学の姿が見える。

国際政治を勉強したくて京大の法学部に入学したマキメ君は、毎年夏休みにはひと月ほど海外を旅してまわった。
最初の海外旅行で置き引きにあい、身ぐるみはがされても何とかなった。
結構大変な目に遭っても、なんとかなるものだと身に染みて知った。
この辺の姿勢もマキメ君らしいと言える。

”国と国が喧嘩すると、そこに属する国民同士も勝手に仲が悪くなる。相手の顔も知らないのに憎しみ合う。本来は人の集合が国を形成したはずなのに、立場は逆転し、国の都合が人の集合をコントロールしてしまう。最悪の場合、戦争を引き連れてきてしまう。”
彼の作品の登場人物たちが戦い合う時、少し悲しげなのはこういうことなのかもしれない。

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2022年12月21日

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