【感想・ネタバレ】明恵 夢を生きるのレビュー

あらすじ

夢で生き方が変わる! 夢で人の心のあり方を知る!!――生涯にわたって自分の夢を記録しつづけた名僧・明恵の『夢記』を手がかりに、夢の読み方、夢と自己実現の関係、ひいては人間がいまを生きるうえで大切なことなどをユング心理学の第一人者、夢分析の大家が実証的に説く。第1回新潮学芸賞を受賞した、人間の深層に迫る名著。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

キリスト教(カトリック)の世界の本にしばらく立ち寄ったのち、河合隼雄のユング心理学に戻ってきた。人の霊性とその表現ということを考える時には、私にはやはりこの分野が一番わかりやすい。
先に読んだ若松英輔・山本芳久『危機の神学』に、「私たちにとって重要なのはイデオロギーではなくコスモロジーなのではないか(註)(第二章)」とし、「コスモロジー」を説くものとしてこの本を引用されていたので、読んでみることにした。

著者は、「イデオロギーよりコスモロジーへの変換が現代において生じつつあると思われるので、明恵に対する評価は(高いほうへ)急激に変化するのではないか」(第二章)としている。明恵は、法然や親鸞のようにイデオロギーを説くことはなく、生きざまそのものが思想であったと言う。

まだ十分な理解には至っていないが、コスモロジー的な生き方とは、「出会うできごと全てが、自分と意味のある関係がある」と受け入れる人生態度のことだと、私は受け取った。もちろん人が受け取ることである以上、意識するしないに軽重があり、それも含めての「コスモロジー」なのであろう。

第四章では、霊性の高みに登る夢を、仏教者明恵と現代人ユングで比較している。
明恵は、塔を登り日月を超え、塔頂の九輪の上にたち、眼下に世界や太陽や月や星を見た。
ユングは、宇宙の高みに登り、はるか下青い光の中に地球を見た。
魂が至る「高み」の本質は同じ(宇宙的・全体的な視点を得る)であっても、鎌倉時代の仏教者には「華厳の塔と日月星宿」として現れ、科学を知る現代人には「青い地球」として現れる。
拠って立つものが異なれば、似たような体験に対して、描かれるイメージはこれほど異なるという事例として分かりやすい。
宗教の表現の違いなども、案外このようなことに端を発しているのかもしれないと考えさせられた。

(註)
イデオロギー:政治、社会、道徳、宗教などにおける、人々の行動や考え方の根底にある価値観や思想の体系
コスモロジー(宇宙論・世界観):自分をも含めた世界をどのようにイメージし、生きる意味を見出すかという関係性・秩序の枠組み

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2026年07月05日

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