あらすじ
この異常が、私たちの日常。
未知の細菌がもたらした毒素が猛威をふるい続け数百年。世界の人口は激減し、人類の平均寿命は25歳にまで低下した。人口減を食い止め都市機能を維持するため、就労と結婚の自由は政府により大きく制限されるようになった。そうして国民は政府が決めた相手と結婚し、一人でも多く子供を作ることを求められるようになり――。
結婚が強制される社会で離婚した夫婦のその後を描く「別れても嫌な人」。子供を産むことが全ての世の中で“子供を作らない”選択をした夫婦の葛藤を描く「カナンの初恋」など、異常が日常となった世界に生きる6人の女性たちの物語。
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Posted by ブクログ
大変面白かったです。
平均寿命が25歳であらゆることが管理されている世界に生きる若い男女同士の(例外の話もあるが)感情を主に女性の視点から描いています。6つの短編から成りますが、最後の「カナンの初恋」まで読むと、全体が一つの物語を成しているんだなという思いに至りました。
平均寿命が25歳というのはすごく特殊な世界ですが、各物語の登場人物が直面する課題や抱える心理的な葛藤などは、リアルな日本の社会で我々が直面するものと本質的には同じであり、それらが平均寿命が25歳という状況下では、より凝縮されているように思いました。最初はこの特殊な状況下で定められたルールを人々がすべて受け入れて生きているのかなと思って読み進めると、実はそうではないということが各物語を読み進めていくにつれて徐々に描かれて、どんどん話にひき漏れていくのはまさに作者の凄い力量ですね。
また読み進んでいくうちにふと気が付いたのは、寿命が短かったり、職業選択や結婚相手を選択する事由がない、という状況は決して本の中の絵空事ではなく、日本でも自分の親の世代までは、(平均寿命が25歳というほどではないにしても)割とそれに近い状況の社会だったようですし、広く世界に目を向ければ、それこそ今の時代でもそういう過酷な状況の国や地域は多く存在するということです。
それらを考えると、自分は本書を最初は軽い気持ちで本書を読み始めましたが、世の中のありよう、男女それぞれの個人の生き方など深く考えさせられる内容だったと思います。
同じ世界で、今度は男性の視点や、長命種の人間の視点での物語が描かれると良いなと思いました。(長命種の人間の感情については、カンナの初恋で語られていますが)
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった。タイトルの通り、未知の細菌の毒で平均寿命が二十五歳になってしまった世界。就労と生殖が管理されてる時点で結構なディストピアだと思うんですけど、文体がやわらかいからかそこまで悲壮感は感じない。
こういう世界に産まれたら、これが当たり前だって思ってしまうかなっていうのはある。それに少しずつ疑問を覚えていくところが成長譚としておもしろい。個人的には「カナンの初恋」がすき。
Posted by ブクログ
25歳は短すぎる。
設定に少し物足りなさを感じるが、全体的に好きな構成。もう少し深掘りすると重くなるから、これぐらいのライトさで良かったのかな。
「花嫁たち」に出てくるタモツが男前すぎる。
Posted by ブクログ
短編集で6話収録されていますが、後味は良かったり悪かったり‥。
良くも悪くも、ほぼ強制的にお見合い結婚(離婚もできる)があったりルールで厳しく縛られている世界て「人間としての使命を果たす」ことを強要されているように思いました。それで生きやすいかは人それぞれだと思いますが、見てみて辛い描写も複数ありました。
登場人物の気持ちには共感できたりできなかったりでした。実世界と近いような遠いような、そんな世界観に浸りたい時に読むのが良いかなと思いました。
個人的には、2つ目の話の主人公が自分を客観的に見ているよう思ったので特に印象に残っています。
相手の優しさに気づこうとしていたか、利用しようとしていなかったか、自分のことばかりで相手を見ていなかったのではないかなど‥。
「素敵な思い出のままでいたい。嫌いになりたくないから、戻りたくない」っていうのも、相手を愛したいと思う気持ちの一部なのかなと思ったり。。
私は沢山気づきが得られたので、読んで良かったと思っています。
非現実的な物語が好きな方や考えることが好きな方、従順な生き方に疑問を持っている方などにおすすめです