【感想・ネタバレ】平清盛と平家政権 改革者の夢と挫折のレビュー

あらすじ

史上初の武家政権は、鎌倉幕府ではなかった! 平家の台頭から平家政権の誕生、日宋貿易、福原への遷都、清盛の挫折と死、その後の平家の最後、源氏政権との比較まで。歴史小説作家ならではの観察眼で、幕末まで700年続くことになる武家政権の礎を築いた平清盛の革新的な人物像と、清盛を取り巻く平家の人びと、公家・源氏のものたちを描く。

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Posted by ブクログ

歴史小説作家の書く歴史書。緻密に研究がまとめられると共に私見も書かれていて(そこから小説が生まれる)、だからこそあのような作品たちが書けるのだなと納得。

それにしても、清盛の壮年期は本当にキレッキレ✨頭の回転も早く、豪胆・果断な性格で、行動力に富んだ人だったんだろう。これだけ才能があると本人は良いかもしれないが、多くの周りの人々はどう感じていたんだろうと思ってしまう。

「平家にあらずんば人にあらず」という言葉は、清盛が言った言葉ではないんだねー。

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2022年08月28日

Posted by ブクログ

私は同氏の著書といえば「大鳥圭介」の本くらいしか読んだ事がないが、歴史小説作家の伊東潤によるものである。帯に「史上初の武家政権は、鎌倉幕府ではなかった!」のメッセージが躍る。平家の台頭から平家政権の誕生、日宋貿易、福原への遷都、清盛の挫折と死、その後の平家の最後、源氏政権との比較まで。歴史小説作家ならではの観察眼で、幕末まで700年続くことになる武家政権の礎を築いた平清盛の人物像を描く。

一言だけ、低俗な愚痴を。平家の人たちに限らず、この時代、登場人物の名前や家系図、関係性が分かりにくい。苗字は同じ、名前は一字違いなど。それに限らず、幼名と諱、出家して法名へ名前が変わる。苦労しながら読んだ。

ディテールの面白さを抜粋しながら、著者の筆力に頼り、引用しながらの書評としたい。

― 忠盛の出世は「人々耳目を驚かす」「未曽有」のもので、公家社会の反感を買った。それが「平家物語』における「殿上の闇討」というエピソードにつながっていく。詳述は避けるが、これは、新たに昇殿を許された者に必ず行われる通過儀礼で、公家たちが暗がりの中で黒力を振るうことらしい。何とも物騒だが、それを知る忠盛は大刀を帯びて威嚇し、常に郎党を庭に控えさせていたので、公家たちは闇討ちに及べなかったという逸話だ。今日の大学のクラブなどにもある手荒い歓迎式のようなものだったのだろう。

― ちなみに内昇殿というのは、天皇のプライベート・スペースと言える清涼殿の殿上の間への出入りを許可されるもので、俗に「殿上人」と呼ばれ、公職(太政大臣、左大臣、右大臣、大納言、中納言、参議)以下の公家にとっては、憧れの的だった。ちなみに、議場(朝議)は上記の公卿で行われたが、律令により、それぞれ定員が決まっており、何らかの要因で定員オーバーとなる場合は、新たに着任した者には「権」の字を付けて「権大納言」などと呼んだ。「権」とは「仮に」という意で、正官よりも権威の面で劣っていた。

― 当時の皇族や公家にとって、平安京は「穢れ」から守られた清浄な地だった。平安京から離れれば離れるだけ「化外の地」に遅づき、「穢れ」の危険性が高まると、彼らは本気で居じていた。それゆえ国司でさえ、「遥任」により現地に赴かなかった。皇族が平安京を離れるということは、「穢れ」を身にまとうことにつながり、この場合、たとえ後白河帝と守仁が死去しても、「穢れ」をまとった者として、崇徳院が帝位に返り咲くことはあり得ない。

ここまでは私が興味深いと思ったディテールの抜粋。最後、総括としての書き出し、著者の筆力は流石である。この文章で、全てを物語っているようにも見える。

― 清盛の人生を俯瞰すると、やはり「諸行無常」という言葉がしっくりくる。
王朝政治華やかなりし頃に生まれ、その栄華のほどを、まざまざと見てきたにもかかわらず、清盛は院政を否定し、天皇を思いのままに擁立し、政変を成功させ、遷都までしょうとした。さらに貿易立国を実現させようとした。それが一種の身勝手さや欲心から出たものだったにせよ、彼が開明的だったことは間違いない。こうした改革による利権構造の確立により、子々孫々までの一門の繁栄を願った清盛だったが、その死後、わずか五年にして、彼の血脈にかかわるほとんどの人々は、この世の者ではなくなっていた。あれだけ祝福されて生まれ、蝶よ花よと大切に育てられた安徳帝でさえ、幼い命を絶たれたのだ。かくして清盛が、その晩年の持てる力をすべて注いだ貿易立国の夢も雲散霧消した。
これこそ「諸行無常」としか喩えようがない未路だろう。

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2024年12月19日

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