【感想・ネタバレ】人生はそれでも続く(新潮新書)のレビュー

あらすじ

かつて日本中が注目したニュースの「あの人」は、いまどうしているのか。赤ちゃんポストに預けられた男児、本名「王子様」から改名した十八歳、バックドロップをかけた対戦相手の死に直面したプロレスラー、日本人初の宇宙飛行士になれなかった二十六歳、万引きで逮捕された元マラソン女王……。二十二人を長期取材して分かった、意外な真実や感動のドラマとは。大反響の連載をついに新書化。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2022/09/17リクエスト 8
星の数があるなら、10個以上。

2、日本初の飛び入学で大学生になった17歳
飛び入学ができる程素晴らしい頭脳を持った彼。
そのまま研究を続け、大学院にまで進む。その後、研究機関に職を得たものの、生活に困窮するほど低賃金だった。
「世の中にはプロを目指してもなれない人はいる」
トレーラー運転手として現在は、家族での生活が成り立っている。

日本では研究者は生活に困ることも多いと聞いたことはあったが、これほどとは。素晴らしい宝である頭脳を、こんな形で失ってもいいものなのか…

8、3年B組イチの不良、加藤優になった17歳
役者デビューして、頑張って30歳前まで続けたがバイトの塗装工事のスケールの大きさに惹かれ、建設会社で中途採用される。他の人と違い専門に学んでいないことがコンプレックスで死にものぐるいで勉強。次々に現場を任されるようになった45歳の頃、上司からの打診により営業に転身。
武田鉄矢に言われた
「カッコつけずに一生懸命やれば伝わるんだ」
この言葉を支えに今がある。

努力できるか、人のアドバイスを聞き入れることができるか、が明暗を分けた人生のように感じた。
今の写真の素晴らしい笑顔がそれを証明している。

9、松井を5敬遠、罵声を浴びた17歳
野球のルールがよくわからないため、細かいことは理解できないが、同じような実力の持ち主同士なのに、立場がこのパターンだったことで、一人は大リーグ、一人はプロに入ろうと四苦八苦するが…
この人生を受け入れることのできる、受け入れるふたりはどちらも素晴らしいと思う。

15、日本人初の宇宙飛行士になれなかった26歳
48歳の男性と26歳の女性が最後まで候補に残る。
その中で最後に選ばれなかった。その事実を26歳で受け止め、その後の人生でも悩みながらも、なんと子どもの宇宙教育の講師になる。
挑戦しなければわからない世界が広がっていたから、とはなんと素晴らしい言葉だろうか。

16、火の中を通れ、貿易センタービル勤務の44歳
銀行員で支店長になったばかりで、911にあってしまう。しかも勤務場所は貿易センタービル90階。ハイジャック機が突っ込んだのは93-99階、生死を分けたギリギリのところ。支店長の素早い判断、マニュアルを無視して全員の安全を確保する、そのため全員の命があった。
そのようなとっさの判断をミスしない、それは彼個人が自分なりに考え、違うと思えばルールから外れても貫く、その経験に裏付けされたものだと感じた。

18、三沢光晴さんに最後のバックドロップをはなったプロレスラー
プロとしての試合中に、正当なやり方でミスなくかけた技で相手が亡くなってしまう。プロレスとは、それほど危険と背中合わせであると頭ではわかっていても、実際、技をかけた方としては、この状況はいたたまれないだろう…
彼の出した結論。
皆の気持ちを受け止める。でも実際には自分の容量を超えていて…筋肉と同様、破壊されたあとに休息を取ると以前より大きくなる。
そう自分に言い聞かせてきた。
天国で相手から、それて良かったんだよ、と認められるような胸を晴れるプロレスを続けたい。
男の中の漢だと本当に感動した。

21、熊谷6人殺害事件妻と娘を失った42歳
同時に妻、娘ふたりを殺害される。自分一人が残されてしまった。犯罪被害者の会に参加したとき、あなたには奥さんがいますよね、子どもが残っていますよね、と思ってしまう。家族全員を殺された自分とは違う。羨むような気持ちを拭いきれない。そう胸の内を語る姿に、この7年死なないように生きてきた。と語る言葉にこちらの胸もえぐられそうになる。

この本に出会えて、読むことができて、本当に良かった。感動などの言葉では軽すぎる、私の語彙では表せないような、まさに心が根底から揺さぶられ、ひっくり返るような感情になった。

誰にも辛いことはある。
そしてその後もある。
その当たり前に気付かされてくれた貴重な本。
新聞で現在も連載中とのこと。読んでみたい。
とてもおすすめの本です。
悩んでいる人に、手にとってほしい。
自分も、その一人ですが、それどころではない人がいることに、きっと気づくはず。
人生は続く…

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2022年12月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

事件の当事者として、マスコミで有名になってしまった人のその後の人生を取材した、読売新聞の特集記事を書籍化したもの。
国会議員、鈴木宗男氏の、アフリカ出身の秘書。
赤ちゃんポストに預けられた幼児。
プロレスの技で相手を死なせてしまったレスラー。
松井秀喜に5打席敬遠を投げた甲子園投手。
金八先生で一躍有名になったけど、その後は活躍できなかった俳優。
その後どうなったのかな?と読者が興味をそそられる。
あの人、一時は有名になったけど、その後は平凡な人生やねぇ!とか、ひどい事件に巻き込まれて、かわいそうだなぁ、それに比べれば、私の人生はまだまし、とか人間は人の不幸を見て安心するところがあるので、ゴシップ的な本で、こんな本に興味を持ってしまう私自身も、悪趣味よね、などと思いつつ読んだが、ただのゴシップではなかった。
その時の報道だけではわからない、その後の人生を追うことで、人生とは、生きることとはなんて難しいのだろう、それでも生きていくことは、なんて尊いのだろうと感じられる。
一生懸命に生きてきたのに、不幸にも事件に巻き込まれたり、思うようにならなかった方々の深い悲しみ。自分の過ちを認め、向き合いながらその後の人生を歩み続ける方々の勇気や謙虚さ。読んでいて涙が出ました。
「ただのゴシップではない」と私が感じたのは、自分の留守中に家族を全員殺害された、という方の記事。この特集で初めて実名を明かして取材に応じたとのことだった。
犯罪被害者は時に、事件後の過熱報道などで二重に苦しめられることになる。この方はあまりに凄惨な事件にあい、茫然自失状態でなんとか「死なないように生きてきた」そうだ。おそらく、多くの周囲の方が励ましたり、助けたりしようとはしただろう。しかしこんな目に遭った方に有効な励ましの言葉なんて、何一つないだろう。人生に前向きになるのは難しいだろう。でも事件後初めて取材に応じた、ということは、何かしら「話してみようかな」と心が動いたのかもしれない。それだけでも意味がある取材なのでは、と思った。

心に残ったのは、多くの方が、ちょっとしたきっかけや学生時代の出会いのせいで人生が狂ったり、事件や事故に巻き込まれたりするわけだが、その後の人生で誰も「あの人に会わなければこんなことにはならないのに」などと考えず、自分が選び取った道に自分でけりをつけようとしているところだ。(もちろんそのような方を選んで取材しているのだろう)。その姿から学ぶところは大いにある。

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2023年01月15日

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