【感想・ネタバレ】15歳の寺子屋 ひとりのレビュー

あらすじ

豊かな未来のためには、なにが大切で、どう生きるべきか? 大人の世界へ踏み出していく少年少女たちへ、第一線で活躍する人生の先輩が贈る書き下ろしシリーズ「15歳の寺子屋」

「さあ、どうぞ。もっとお楽に。お行儀悪くなさってください。どんな質問にも、正直にお答えします」15歳の男女4人を相手に1年にわたって行われた、小さな寺子屋授業。今では「戦後思想界の巨人」と呼ばれる吉本隆明さんも、子どもの頃、人と話すのは苦手でした。でも、届かなかった言葉こそが、自分にいろんなことを教えてくれたといいます。自分や誰かの言葉の根っこに思いをめぐらせることは、人が孤独をしのぐ時の力に、きっとなる。進路、文学、恋愛……、考え抜かれた言葉の数々に、心が鍛えられる授業です。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

 司書の姉から、いい本があるらしいよ、と教えてもらった一冊。パラパラと数ページ流し読みしただけで、これはすごい本だぞと直ぐにわかった。

 著書をほぼ読んだことがなかった。この方の考え方を知らないなんて、勿体なさ過ぎた。全ての15歳に、国からプレゼントしたらいいのにと思うほどの一冊。自分に余裕があれば、関わっている全ての子達にプレゼントしたいところだ。鬱陶しがられるとは思うが、そんなことどうでも良いほど、価値ある一冊だった。
大人が読んでも、親の立場の人が読んでも、もちろん良いと思う。早く読みたかったとは思うと思うが…

特に好きだったところ…
◯誰にわかってもらわなくてもいいから、自分がなぜそう感じるのか、自分の考えを自分で知っておく。書く事はそういうときの手助けになるはずです。自分と向き合うための方法でもあるし、そうやって、自分自身の実感を繰り返し探っていくことが心が鍛えられるというのかな。

◯才能なんてものは問題にならない。問題になるのはせいぜい最初の2 、3年位のもので10年経ったらそんな事は全然問題じゃなくなる。結局は手の問題なんですよ。手が知ってる。手を動かしていると、2.3年は同じでも、10年経つとその人らしさというのかな。その人にしかできない表現というものが必ず出てくるものなんです。28

◯人は自分が自分を思うほど、君のことを気にかけてるわけじゃないんだぜ。36
人がその人が1番重要だと思うことを大事にして生きてる。それが人間てものなんだ。

◯「こうしたから、こうなった」なんて、何かを学んだ気になってると、人生まちがっちゃう。そんなふうに原因と結果が安直に結びつくことは、現実にはまずないんだって思ってた方がいい。45

◯優劣があるわけじゃなくて、〈段階〉が違うだけ。63

 夏目漱石の恋愛においての失敗のエピソードが紹介されていたが、普通なら今の時代だと、何かしらの発達障害だと一言で終わらせてしまうような漱石の言動も、吉本隆明は、
「漱石って人はきっと頭が良すぎたんでしょう。当人の中では、ちゃんと脈絡がついているんだろうけど、どうにも飛躍しすぎるところがある。それで副次的な考えが先走って、そのせいでことごとく失敗している」と分析している。なんて思索が細かいんだと、驚いた。

 寺子屋の講義を受けた子供の感想が紹介されていた。その中で、
「吉本さんは経験の活かし方が違うのかもしれません。いずれにしても、経験を表現する時、他の大人とは違う表現をする、そんな大人に思えます。」
という言葉があった。吉本隆明さんの、ちゃんと平易な表現にして伝えようとしてくれる言葉が、確かに子供達にも届いたんだなと感じさせてくれた。



以下、備忘録…


[話し言葉]が相手に何かを伝えるための道具なら、[書き言葉]は自分の心の中に降りていくための道具だと言ってもいい12
思春期と言うのは、[1人]から[2人]にスイッチが入る時期なんですね14

なんかよくわかんないなって思ったら、わかったふりをしないで、わかんねぇなって思ってる。そこでいいことを言おうとすると、大抵間違いだぞっていうのがある。21
今の若い人は、自分が本当に思っていることも、周りに遠慮していえないじゃないですか。若い人たちが謙虚になったといえばいえますけど、変にものわかり良くしないで、もう少し本当のことハッキリさせたほうがいいですよ。誰にわかってもらわなくてもいいから、自分がなぜそう感じるのか、自分の考えを自分で知っておく。書く事はそういうときの手助けになるはずです。自分と向き合うための方法でもあるし、そうやって、自分自身の実感を繰り返し探っていくことで心が鍛えられる。22

何になるにせよ、手をたくさん使えば誰でもなりたいものにちゃんとなれます。25

才能なんてものは問題にならない。問題になるのはせいぜい最初の2 、3年位のもので10年経ったらそんな事は全然問題じゃなくなる。結局は手の問題なんですよ。手が知ってる。手を動かしていると、2.3年は同じでも、10年経つとその人らしさというのかな。その人にしかできない表現というものが必ず出てくるものなんです。28

世界の信用するのはどこかに所属している人間なんです。自分では良いことをしたんだと思っていようが、組織を離れた人間が信用してもらうのは難しい。36
人は自分が自分を思うほど、君のことを気にかけてるわけじゃないんだぜ。36人がその人が1番重要だと思うことを大事にして生きてる。それが人間てものなんだ。

「こうするよりほかなかったんだ」とでもいうような消極性だけが唯一、自分の人生を決定づけてきた気がするんですよ39

「こうしたから、こうなった」なんて、何かを学んだ気になってると、人生まちがっちゃう。そんなふうに原因と結果が安直に結びつくことは、現実にはまずないんだって思ってた方がいい。45

子供の頃から「これを習わせておけば、こうなるだろう」みたいなことは、あんまりやらせない方がいいんじゃないかなぁ。それよりも、もう少し時間の隙間をあけてやったほうがいい。43
自分で、「自分はこうだ」とあんまりせっかちに決めないで、親の脛をかじれるうちは齧って、いろんなことを経験しながら成長するのが一番いいと思いますよ43

親鸞について調べる46

宮沢賢治春の修羅の一巻。速さ時間の戦い方っていうのがすごい。60
宮沢賢治は自分が文学者と言うより宗教家だと思っていた。あの人は「ほんとうのほんとう」にたどり着きたいと思って生きた人。61

優劣があるわけじゃなくて、〈段階〉が違うだけ。63

大人になるとはどういうことか75
問題は歴然としてあるんだけれど、それに対して、誰にも言わないでも、わからないでもいいから、自分はこういうやり方で緩和しているんだという、自分なりのやり方を編み出すようにするのが1番いいんじゃないか。やり方はそれぞれに違っていいと思うので、考えて考え抜いて、自分で確立できたら、それはもう、立派に大人になったと言えるんじゃないでしょうか。 76

0
2025年02月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

16日に亡くなられた吉本隆明さんの本です。
児童(中、高校生)向けの哲学書です。
この本の言葉は優しくて分かりやすく、そして子どもにも大人にも届く言葉で語りかけてくる。
生き方、考え方、人生、恋愛。それらについて語っています。私は思いついた様に時折この本を読みます。
目に見える事、瞬発力が重視されがちな昨今にこの本を読むと「そうでなくても良いのでは?」と思えたりします。
"人は誰でも、誰にもいわない言葉を持ってる。
沈黙も言葉なんです。
沈黙に対する想像力が身についたら、本当の意味で立派な大人になるきっかけをちゃんと持ってるといっていい" ー本文よりー

0
2012年03月17日

「児童書」ランキング