あらすじ
医者である英雄と一見、幸せな結婚生活を送る絵里。しかし彼女は本当の名前を咲花子といい、英雄が元夫を殺した証拠を探していた。一年半前、咲花子は刑事から当時の夫が転落死したこと、何件もの詐欺を働いていたことを知らされる。詐欺師の妻として彼女自身もマスコミに叩かれる中、夫殺しの容疑者だった英雄の不起訴が確定。希望を失った彼女は、自殺サイトで知り合った絵里という女性と自殺を試みるが、咲花子だけが生き残ってしまう。咲花子は絵里の個人情報を使って身分を変え、英雄に復讐することを決意するが……復讐に生きる女性の情念を描いた愛憎のミステリー!
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Posted by ブクログ
「わたしも自分の過去が大っ嫌い。だから今、必死で過去とかけ離れた自分に変わろうとしてる。そうじゃないと、また不幸になってしまいそうで怖いから。これ以上不幸になったら、きっともう二度と這い上がりたいと思わなくなる。そのまま世界からこぼれ落ちて、死んでしまってもいいやって。だから今、わたしは必死なの。変わることで前を向こうとしてるのー。」(P.52)
「じゃあな」
ぶっきらぼうに片手を上げ、彼はバイクを発進させた。
スピードが上がるにつれて高まる音と共鳴するかのように、わたしの体に残る振動の余韻が疼き、息苦しくなる。
闇の中に溶けていくテールランプを見送りながら、わたしは彼を好きになってしまったことに気づいた。(P.56)
自分のために立てられる包丁の音は、こんなにも心を穏やかにするものだったのか。(P.141)
わたしの言動で、彼は一喜一憂する。くるくると表情を変える。自分の存在が常に誰かの中心にあることは、なんて嬉しいことだろう。(P.155)
なんだかくすぐったい。くすぐったくて、甘やかな気持ちに胸が満たされる。
もう認めないわけには行いかなかった。
ああ。
わたし。この人に惹かれ始めているー。(P.165)
きれいなもの。真っ黒なもの。透き通ったもの。どろどろに濁ったもの。甘いもの。酸っぱいもの。辛いものーこれらは、わたしの感情の瓶詰めなのかもしれない。(P.188)
愛する夫の死の真相に近づくため、夫を殺した疑いのある人物に、整形をして探りをかける絵里こと咲花子。しかし、一緒に生活をしていく中で彼に恋愛感情を抱くようになる。夫を殺したはずの憎むべき人なのに、周囲の人の評価や、住んでみて、この人に人が殺せるのだろうか…という疑問も出てくる。この人が好きだ、愛しいと思うほどに、自分が苦しくなり、咲花子の心の葛藤や迷いが細かく描かれ、切なく、悲しかった。そして、結婚生活が終わりに近づいた時、衝撃の真実が明らかになる。咲花子の救われなさには見ていて辛くなるものがある。これから、亜希子と二人で生きていくのだろうか。すれ違った運命が再び交わることがないところが救われなく、ただただ悲しい。
Posted by ブクログ
復讐のために、顔を変え、名前を変え、
「夫を殺した男」の妻になった女の話。
帯で抱いた「夫を殺した男」のイメージと、作中の男がどうしても結びつかず、読み進めるにつれ、違和感が大きくなっていく。
そして、復讐に燃える女の暴走と空回りが、ストレートに描かれている。
シンプルな構成なので、とても読みやすく、スイスイ読んだ先の、ラストの展開にゾクっとした。
そう来たか〜!!これは面白い!!
秋吉理香子さんは何作か読んでいるが、今回は単なる復讐ミステリーではなく、女達の情念がうまく絡んでいるのが見どころ。
いくつも岐路はあっただろうに・・・
ラスト一頁の締め方が儚くも美しかった。
Posted by ブクログ
『イヤミスの旗手』等と言われる秋吉理香子さんの作品でしたが…少しいつもと違う感じの作品でイヤミスではなかった…から逆に自分的には読みやすくあっという間に読み終わりました!
Posted by ブクログ
殺された旦那の復讐として加害者だと見込んだ男性に近づき咄嗟に惚れているとの、言葉を出す
一生懸命愛し続けていた旦那への愛と
憎悪、復讐などがリアルに描かれていました
心はやはり言葉や表情に現れる
騙すことなど難しく暴かれていた
それでも本当の愛だったものが
すれ違う瞬間を描いているのもまた素晴らしかったです
最後の章では感動し涙でした
ありがとうございました!
Posted by ブクログ
根っからの悪人はどこにもいなかった…たぶん。
最初は絵里こと咲花子の言動に感情移入できず…なんだこの女、嫌いなタイプ!みたいな気分で読み進めましたが。
徐々に彼女の境遇やバックグラウンドが明らかになってくると、単に「嫌いなタイプ!」で終わらせられなくなってくる。
思い込み激しいなとかは、浅慮な言動だな、とかはあるけど「(彼女の復讐が)うまくいって欲しい」みたいな気持ちになってくる。
…からの、彼女の気持ちの変遷。そして、最後のどんでん返し。
そう着地するのかぁ!!と。
過去のことが積み重なって、それも少しずつ少しずつズレてて積み重なっての、最後の結末。
別な方向にズレて積み重なれば、全く違う結末にもなり得たのでは??とか思うと余計にやるせない感じ。
偶然ではなく、全ては登場人物達の意思をもった行動の結果……みたいなストーリー展開はすごく好みでした
Posted by ブクログ
登場人物が少なかったのでこんがらがることなくスムーズに読めた。
復讐のために英雄に近づき結婚した咲花子。
途中から英雄のことを愛するようになっていき、信じたいのに疑ってしまうという葛藤が切なかった。
亜希子がただただ自分勝手に見えてしまった。
病気だから我儘を言うのも仕方ないのかもしれないけれど、それで英雄の自首に猛反対したり、兄が殺人犯になると1人では生きていけないからという理由で今度は咲花子を殺そうとしたり。
亜希子が咲花子を殺そうとしなければ、やり直して幸せな未来が待っていたかもしれないだけに、咲花子と英雄のすれ違いがとても悲しかった。
Posted by ブクログ
秋吉理香子『灼熱』PHP文芸文庫。
前代未聞の復讐ミステリー。
複雑なサブストーリーは殆んど無く、メインストーリを中心に展開するのですらすらと読めるところが良い。と油断しているところに、終盤のまさかの展開に驚愕。そして、一瞬ゾッとさせられるラスト。面白かった。
両親を亡くし、働きながら通う定時制高校で知り合った忠時と結婚した川崎咲花子は1年半前にその夫を失う。大手の製薬会社でMRの仕事をしていた夫が咲花子の知らない賃貸マンションから転落死したのだ。咲花子は刑事から夫が製薬会社を早期退職し、何件もの詐欺事件を首謀していたことを知らされ、愕然とする。
詐欺師の妻として咲花子がマスコミに叩かれる中、詐欺事件の被害者で夫を殺害した容疑者と見られていた医者の久保河内英雄の不起訴が決定する。
最愛の夫を失い、生きる希望を失った彼女は自殺サイトで知り合った佐藤絵里という女性と自殺を試みるが、咲花子だけが生き残ってしまう。
咲花子は絵里の個人情報を利用して身分も顔も変え、英雄が元夫を殺した証拠を掴むために英雄と結婚し、復讐を果たそうとする。
本体価格780円
★★★★
Posted by ブクログ
帯の「一気読み必至」はホント。同著者の作品の中ではあまり好きだと思えなかったにもかかわらず、どうなるのかが読めなくて途中で止まれませんでした。
自分の夫を殺したとおぼしき男に復讐するために、顔を変えてまで近づいて結婚する。でも相手の男はどうやらそれに気づいているらしい。怖っ。
しかしその後は意外な展開。意外すぎてしばし目が点になりました。「ほおっ」というよりは「そんなん、あり!?」の気持ちのほうが本作に関しては強い。いつもの、かなりどんよりさせられる嫌ミスのほうが好きかもしれません。って、性格が悪いか(笑)。
Posted by ブクログ
帯にあった復讐のために、女は整形し、身分を変え、憎い男の妻となった…というのに惹かれました。
こういう重そうなやつにしては、読みやすかったです。
最後も予想外でした。
意外に幸せになるのではないか…と途中思ったのですが。
幸せになってほしかったです。
Posted by ブクログ
序盤の闇っぷり、おー秋吉理香子だ、と思って読み進めると何か平和になっていくが、不穏な空気が流れた後の展開はやっぱり秋吉理香子。もうちょい捻くれたオチが来るかと思ったけど、予想はしてなかった展開。終盤は一気読みしてしまった。
※電子書籍を登録してしまったので、紙の方を登録し直しました
Posted by ブクログ
予想した結末とは違い、少しびっくりした。が、とても読みやすい作品だった。
ひとときでも、相手を好きだと思え幸せだと感じたのはすくいだったのかなと。