【感想・ネタバレ】人間ってなんだのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

これまで週刊誌で連載されてきた1,200本以上のエッセイから、人間とは、というテーマで30本までに絞り込み、厳選した、いわば「作品集」。
鴻上尚史さんの本は、コロナ前後からたくさん読むようになりました。
鴻上さんの文章のすごいところは、とっても「現実的」で、かつ「血が通っている」、でも「筋が通っている」ところです。
他人事のように、論文のように断定することがよしとされる風潮に疑問を持っている方には、すっと入ってくるんじゃないかなと思います。
個人的に印象的だったのは、
「色っぽくなるためにはどうすればいいのか」

「体と精神の不思議な結びつき」でした。
特に前者は、おおっぴらには言えないネタかもしれませんが、すごく納得しました。
想像や妄想って、思ってる以上に表に出るもんなんだなぁと。
そして逆に、体の状態も精神を左右する大きな要素なんだなぁと。
何度も読み返したい本でした。

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2022年07月24日

Posted by ブクログ

知り合いからもらった本を積んでたんだけど読んでみた!
作者のことをそんなに知らなくても、ユーモアセンス溢れる文章が面白い!

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2023年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 演劇の演出家は、人間とつきあうのが仕事です。つまりはずっと「人間ってなんだ」と考え続けているのです。
 全く理解できない行動を取る俳優やスタッフに対して、「どうしてあんなことをするんだろう」「何を考えているんだろう」と相手の立場に立って考える訓練をずっとしてきました。
 それは「道徳」とか「優しさ」の話ではなく、そうしないと仕事ができないからです。なんとか演劇という共同作業をするためには、相手を愛するとか好きになるとかではなく、相手の立場を理解することが必要だからです。
 僕は演出家として、ずっと「どんな人にも事情がある」と思って仕事をしています。同情するかどうかは別にして、その「事情」を知ることが、共に仕事をするためには必要不可欠なのです。
 それがようやく言葉になったのが「シンパシー(sympathy)」と「エンパシー(empathy)」の違いでした。
 シンパシーは「同情心」です。「シンデレラはずっと奴隷のように働かされて可哀そうだなあ」という同情する心です。思いやりとか慈しみの心ですね。
 エンパシーは「相手の立場に立てる能力」です。エンパシーは今、「共感力」なんて訳されたりしていますが、これだと誤解される可能性があると僕は思っています。
「シンデレラの継母は、どうしてあんなにひどいことをシンデレラにしたんだろう?」と考え「ひょっとしたら〜という理由だろうか」と考えられる能力が「エンパシー」です。つまり、シンデレラの継母に、一才、感情移入する必要はないのです。
「シンデレラの継母は、まったく好きになれない」という前提で、つまり共感はしないけれど、その理由を考えるのです。

 僕は、昔から「世間体」とか「世間様」などという壊れてしまって実体のないものに、判断の根拠を置こうとする一部日本人の思考停止状態に、激しい反発を覚えてきました。
 根拠を論理的に説明できない人ほど、「世間様がなんと言うか」とか「みんな言ってるよ」とか「ご近所に恥ずかし」などと言う回数が増えます。
 実際、このフレーズは、ものすごく便利で、自分のすべてを隠してくれます。

「構図(シェーマ)」とは、その人の持っている世界観、考え方、感じ方、のようなものです。
 つまりまあ、世の中とはこんなもんで、人間てのはこんなもんよと、その人が意図的にも無意識的にも思っているルールみたいなものですね。
 そこからズレたものを見たり経験した時、人は笑うと考えられるのです。
 この考え方で、ほとんどの笑いは説明がつくのです。なおかつ、だからこそ、「笑い」は、その人の世界観自体を揺さぶり、変容させる力を持つのです。

 最近は、いじめに苦しむ教師の方に、ワークショップに呼ばれるんですよ、と竹内さんは語られました。
 そこで、何を話されるんですかと伺えば、「教師のみなさんは、一生懸命なんですね。でも、一生懸命だと、何も見えないんですよ。よく見るためには、集中しないとだめなんです。一生懸命と集中は、違うんですよ」
 と、答えられました。
 シンポジウムでは、話題はそこから別な所に移ってしまったのですが、たぶん、集中するとは、リラックスすることなのでしょう。

 その当時、成功した社長の人生訓とか座右の銘とかを読むと、じつに平凡nなことが書かれていることに気づきました。「時間を絶対に守る」とか「嘘をつかない」とか「他人の噂話は、直接、本人に確認しない限り信じない」とか「感謝の言葉を忘れない」とか「積極的にあいさつをする」とか「感情に振り回されず、穏やかに微笑む」とかです。
 最初は、「なんだよ、成功した人間でも、こんなことしか言えないのかよ」と思っていたのですが、、ある日、「待てよ、こういう一番平凡で基本的なことさえできないのが人間で、こういうことができた人間はそれだけで成功するんじゃないか」と気づいたのです。
 結局は、経営手腕だの経営戦略だの言う前に、体力と人柄の勝負なんだと納得したのです。
 この年まで生きてきて、本当の才能勝負の時も、もちろんありますが、それは100回の勝負のうちのほんの数回で、それ以外は、体力と人柄なんだとようやくわかります。

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2022年11月05日

Posted by ブクログ

サブタイトルに強く惹かれた。
自分が心がけていることだったから。

知性だけじゃなく、視点や感性が好き。

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2023年02月12日

Posted by ブクログ

鴻上尚史(1958年~)氏は、早大法学部卒(在学中は早大演劇研究会に所属)の劇作家・演出家で、日本劇作家協会会長(代表理事)、日本劇団協議会・日本演出者協会理事、桐朋学園芸術短大演劇専攻特別招聘教授等。岸田國士戯曲賞(1995年)、読売文学賞(2009年)等を受賞。TV・ラジオ等への出演、幅広いテーマでの執筆活動等も行っている。
本書は、週刊「SPA!」で1994~2021年の27年間に亘り連載された「ドン・キホーテのピアス」の1,204篇のエッセイの中から、「人間ってなんだ」というテーマで書かれた32篇をまとめたものである。尚、続篇として、『人生ってなんだ』、『世間ってなんだ』の2冊が刊行される。(予定)
私は、これまで、著者の『「空気」と「世間」』、『不死身の特攻兵』を読んだことがあり、また、著者(と関根麻里)がMCを務めるNHK番組「COOL JAPAN」が好きでよく見るのだが、著者の見解・コメントにはバランス感覚があり、本書についても興味を持って手に取った。
本書に出てくるエピソードは、当然ながら著者の本職である舞台・演出に関わるものが多いのだが、一般の目線で見ても様々な示唆が得られる。例えば以下である。
◆「僕は演出家として、すっと「どんな人にも事情がある」と思って仕事をしています。同情するかどうかは別にして、その「事情」を知ることが、共に仕事をするためには必要不可欠なのです。・・・大切なことは、相手の「事情」を考えられることです。これがエンパシーの能力です。・・・シンパシーは、感受性の問題として語られがちです。感受性ですから、ある部分は天性のものだと思われています。育てても限界があると。でも、エンパシーは能力です。能力は育て上げることができるのです。」
◆「「笑い」は知性や感性と密接な関係があると思っています。・・・まず、ある一定の知性という構図があって、それからズレるから、笑いが起こるのです。・・・「構図(シェーマ)」とは、その人の持っている世界観、考え方、感じ方、のようなものです。つまりまあ、世の中とはこんなもんで、人間てのはこんなもんよと、その人が意図的にも無意識的にも思っているルールみたいなものですね。そこからズレたものを見たり経験した時、人は笑うと考えられるのです。」「「親しい友達」や「部活仲間」や「恋人」の間にいる時、僕達は、共同の価値観の中で安心し、この現実を生きるために身につけたさまざまな個人的な知恵=「構図」を手放し、結果的に、子供の「構図」の状態になっているのじゃないか。」
◆「どんなモノにも両面あるわけで、両面のどっちに焦点をあてるかというのは、もう、その人の人間性になったりするわけです。」
◆「僕たちは、自分の想像以上に、じつは自分の体の状態に影響されていると思っています。・・・僕は、「座った体」で考えたものは「座った体」に感動を与えることはできても、「動く体」には届きにくいだろうと思っているのです。「動く体」とは、つまりは「生活する体」です。手足を動かし、うろつき、試行錯誤する体です。それは、そういう体で思考しないかぎり、そういう体には届かないと思っているのです。」
マルチな能力を発揮する演出家ならではの、読み易く、数々の示唆の得られるエッセイ集である。
(2022年8月了)

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2022年08月25日

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