【感想・ネタバレ】ポール・ヴァレリーの遺言 わたしたちはどんな時代を生きているのか?のレビュー

あらすじ

堀江敏幸さん推薦!《二度の戦乱を生き、精神の危機を見すえていた詩人の声に耳を傾けながら、著者はそこに諦念ではなく希望を上塗りして、二十一世紀に生きる人間への信頼を言葉で回復しようとつとめた。稀有なユマニストの思索の跡がここにある。》

「わたしはおよそ四十年ぶりにパリにもどって来た」。一生をパリに捧げたフランス文学の泰斗が邂逅する、さまざまな時代の、記憶のなかの人々。みずみずしい最後の随想集。
「わたしを東京にひきとめるどんな係累も、どんな仕事も、すでになかった。そのときわたしは、古来稀なり、といわれる年齢に近づいていたけれど、歳など問題でなかった。残りの人生を賭けるつもりで、半分は運命のめぐりあわせを受け入れて、もう半分は自分の意志で、力が衰えはじめたからだを、若さの盛りにあったわたしを見守ってくれたパリの懐にもういちどゆだねてみようと、こころを決めたのだった。ある年の四月、わたしはおよそ四十年ぶりにパリにもどって来た」(本文より)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ヴァレリーの講演と自身のパリでの生活や男爵夫人の家での下宿生活、ワーズワースの水仙に出会い文学を志したことなど個人の経験を織り交ぜながら、深く広い知識を持って近代フランスの科学、文化と伝統、国民性の成り立ちと世界大戦による荒廃という試練、現代フランス、現代社会・文明が置かれている機械化と物質による支配について綴る。

ヴォルテールが異端審問を糾弾し言論の自由、人権の意識が上流階級のみならず市民に萌し、革命の素地を育んだ。
ヴァレリーの講演から、ヨーロッパの科学と知識による優位が20世紀になり失われてゆき大戦により深刻なダメージを受けたという。また現代文明により物質と機械により人が支配され追い立てられている。芸術も人を驚かせること、新しいことを主眼に置いており言論の質も低下してきていること。ルネサンス絵画ののち風景画が流行し高度な技法が不要となり質の低下を招いているなど。

ヨーロッパの知識人がどのように世界を捉えていたか、その主張の底流を知ることができた。

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2023年05月19日

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