あらすじ
女とは肉体の歓び以外のものではない。友とは取引の相手でしかない……退屈で窮屈な既成の価値や倫理にのびやかに反逆し、若き戦後世代の肉体と性を真正面から描いた「太陽の季節」。最年少で芥川賞を受賞したデビュー作は戦後社会に新鮮な衝撃を与えた。人生の真相を虚無の底に見つめた「灰色の教室」、死に隣接する限界状況を捉えた「処刑の部屋」他、挑戦し挑発する全5編。(解説・奥野健男)
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芥川賞選定に際して井上靖が、こんな青年現代に沢山いるに違いない、と述べたらしいが、内面に爆発的な負の感情を秘めた青年はそれこそ数え切れないほどいるだろう。そのエネルギーを拳闘に注ぐことは出来なかったのか。男運に恵まれない英子と出逢ってしまったがために、その捌け口を誤った方向にもっていかれたのかもしれない。
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社会現象まきおこした。ブーム。ブーム。太陽族。上からひんしゅく。下から喝采。50年経って。都知事。慎太郎節。ニッポン石原家一色。「芥川賞?現代作家?」「あんなのブンガクじゃない。」ビルの上から今でも吠えてる。どうしてそういう言い方なの?どうしてすぐそうなの?アナタほんとはどんな方?これ読めばわかる。これ読まないとわからない。これ読んでもわからない。そのどれか。ビルの窓から東京はヒドイねえって感性がナイっていいながら吠えている。今の。このたった今も。
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出版当時は相当に話題となり、太陽族なる人々が現れるほどだったようだが、もしここ数年でこれが出版されていたらと考えると、おそらく相当な批判に晒されることだろうと思う。
本書後半部の主人公の行動、言動は特に気持ち悪く感じ、到底受け入れられるものではなかった。
だがその一方で肉体的、精神的に抑圧されいつか奔放さの極地を試してみたいと密かに思う人々にとって、本書は美しい小説となり得るようにも思った。
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元東京都知事・石原慎太郎氏の、作家時代の代表的短編が収録されています。
石原慎太郎氏は、昭和生まれとして初めての芥川賞受賞作家です。
この頃、文筆に載せるべき共通した思想が無いが、相次いで現れた作家陣を『第三の新人』と呼称していました。
石原慎太郎氏は世代としては『第三の新人』と被るのですが、そのメンバーとして数えられることはないです。
石原慎太郎氏の作品はおよそ文学と呼ぶには俗っぽ過ぎており、文学史としてポジションは示しますが、個人的には文学ではないと思います。
戦後世代の若者の風俗、行動、倫理が赤裸々に語れれていて、それまでの文学小説の有様に全く準じない内容となっています。
各作品の感想は以下です。
・太陽の季節...
第34回 芥川賞受賞作にして、石原慎太郎氏の代表作です。
映画化しており、その脇役として弟の石原裕次郎氏が出演しています。
芥川賞受賞時にも賛否があり、出版後も多くの文学者が「傑作である」とか、「認めない」とか、声があがりました。
批判が起きて納得の内容であり、下劣で軽く、だがその頃の若者たちの間に確かにあった世界を、真正面から描いたものとなっています。
主人公の高校生「津川竜哉」はバスケット部を辞めて、ボクシングに熱中します。
酒とタバコ、ケンカに明け暮れる彼は、銀座でナンパした英子という女性と付き合い始めますが、次第に興味を失ってゆきます。
ぞんざいにあしらっていた竜哉だが、ある日、英子から、妊娠したことを告げらるというストーリーです。
文脈がバラバラで、元の原稿には誤字も多く散見されていたと言います。
書いたのは20を少し過ぎたくらいの青年で、文学以のところがあることは、今日読んでも感じることができます。
ただ、当時の選考員が本作品に芥川賞を与えようと考えたのもうなずけるところがあり、ただのアウトロー小説、娯楽小説と切るにはそれだけではない何かを感じました。
・灰色の教室...
石原慎太郎氏のデビュー作。
大学の同人誌に発表した作品で、本作が文芸評論家に称賛され、『太陽の季節』執筆につながりました。
太陽の季節と同じような世界観が描かれています。
主人公はその時代の高校生で、ケンカやセックスに明け暮れた日々を送っています。
太陽の季節より前に書かれた作品ですが、構成など、本作の方が比較的読みやすいと感じました。
ただ、文章の粗さは変わらずなので、そういう意味で読みにくさは感じます。
大きく、本能のまま遊び回る「石井義久」と、自殺を繰り返す友人「嘉津彦」の2人の話が主題となっています。
本作も遊び相手を妊娠させてしまうという展開が描かれますが、太陽の季節とはその後の行動は異なっていて、本作では無念、苦悩、そして生きることに対する問いかけを感じました。
一般的な評価としては太陽の季節の方が高いですが、個人的には本作の方が興味深く読めました。
・処刑の部屋...
『太陽の季節』に並び、石原慎太郎作品の中では著名な作品です。
ただ、賛否あった『太陽の季節』に比較すると、本作は文壇上の評価が良く、好意的に受け入れられた小説です。
大学生の若者グループの話で、前2作品同様、いわゆる半グレの少年たちが描かれています。
主人公の「克己」は、友人の「良治」のノリが悪くなったことが気になり、良治主催のパーティーの収益金を運ぶ車を、対立グループの「竹島」に教えます。
竹島をふっかけて、良治と乱闘することを期待していたのですが、良治が竹島にあっさりお金を渡したと聞き落胆します。
竹島グループからリンチを受けたり、睡眠薬を用いて強姦したりと、ショッキングな内容が書かれていますが、彼らのリアルな息遣いを感じられる良作です。
・ヨットと少年...
"太陽の季節"受賞翌年に発表された短編小説。
こちらも氏の初期の短編だからか、文章に荒削りな感じが残っていますが、大分読みやすくなっていると感じました。
ヒギンス夫妻の船に同乗して参加した伊豆大島周回レースの経験から、少年は自分のヨットを持つことを夢見ます。
ヨットを買う資金を貯めるため、少年はギリギリの悪事や恐喝を行ってお金を貯めるのですが、そんな折、高校の友人に誘われて買いに行った娼婦「春子」に心奪われてしまいます。
娼婦である春子は、当然少年以外の男とも金をもらって寝るのですが、それが少年の中でうまく解消できずにいます。
また、女性を連れて新品の船に乗った若者を見ると歯ぎしりをして悔しがりますが、そんな折、賭博で勝った金の集金トラブルから、ヨットを買うためお金をためていることがヒギンス夫妻にバレてしまいます。
少年は悪事を繰り返しますが、少年にプラス方向にストーリーが進むので、どこかで罰が当たると、ハラハラしながら読んでいました。
それはまさにラストで霹靂のように直撃します。
過去作品同様、素行不良の少年が主人公ですが、小説としておもしろく読める作品です。
・黒い水...
こちらもヨットの話です。
"ヨットと少年"と同時期頃に書かれた作品で、"ヨットと少年"同様、読みやすく、おもしろかったです。
登場人物は主人公「河井」と、妹の「恭子」、友人でラグビー選手の「松崎」です。
元々ラグビーにはまっていた松崎は、河井の誘いでヨットにのめり込み、三人で外洋レースに参加することになります。
海は風がなく穏やかで、船の進みが遅くヤキモキしていましたが、次第に空が陰り、嵐になります。
一寸先も見えない闇の中、轟音を上げる雷鳴の中、激しく揺れる船内の三人の描写が見事で、引き込まれる文章でした。
舞台がほとんど海の上ということもあってか、過去作と違い主人公たちの素行が悪いような描写はなく、いわゆる若者言葉も出てきません。
本作以外の作品はすべて犯罪を自慢気に書いているところがあって、読む人によっては胸糞悪さを感じる可能性がありますが、本作はそういう意味でも読みやすい作品だと思います。
Posted by ブクログ
今月の文藝春秋に載っていた名作。評者も未完成ながら形破りの大作と評しており、社会への衝撃が実感できる。ボクサーの龍哉が湘南で英子を弄ぶ非倫理的な構成だが、愛をどう扱っていいかわからない初々しさ故の粗暴さや、非日常の開放感に溢れた舞台としての新鮮さは悲劇的かつ後味の悪い結末をも引っくり返す青年期特有の眩しさを感じさせるには十分である。特に、現代でも行き過ぎとも言える主人公らの道徳心は当時の保守的な社会からすれば衝撃的なものであっただろう。
賛否両論巻き起こったことは承知しているが、読んだ感想としては正直これくらいの表現は許容範囲ではないかと思った。石原の出世作であると共に太陽族として社会現象になるに相応しい破壊作だった。
2022/3/21
Posted by ブクログ
昭和を生きた青年たちの恋愛小説
中二病全開の竜哉は、三島作品の「春の雪」に登場する清顕になんとなく重なる。そして、英子の心情と薄幸さ聡子にも重なる。男は女性にいたずらに母性を求めるのは世の常か。
Posted by ブクログ
昭和32年8月発行。他の方々の評価は比較的低いものが多いようであるも、その時代背景に照らして想像するに当時としてはかなり刺激的な内容であろうと思う。
当時作者が置かれていた環境というのは、一般人とはかけ離れた金銭的、物質的に恵まれた環境であったことが容易に想像できる。だからこそこのような小説の世界感が表現出来るんだろう。
そういうスタンスで読み進めるのが正解だろうと思う。
フィクションに求められるもの。非現実的な世界観の方が好まれるのかもしれない。
Posted by ブクログ
昭和30年代の文学作品に新風を巻き起こした作品。
実は戦後60年の歴史を勉強するまで、漠然としか知らなかった太陽族と
その言葉が生み出されるきっかけとなった「太陽の季節」
僕は当然ながらあの時代を生きてはいない。
でも戦後10年経った日本で、
石原慎太郎の処女作「太陽の季節」で描かれた主人公たちは
特に若者の心をつかんだようだ。
個人的にはこの手の本は苦手だ。
そもそも女性は男性にとって愛の対象ではなく、
性欲の対象でしかみていないかのような、
そしてヤンキーが結局は若者のあこがれであり、
同時に女性もそういう男性に憧れていくというような話は僕には苦手だ。
また女性とSEXをしておいて、
子供が出来たら責任をとらないという
男のあり方が美化されているような気がして、少々憤りも感じた。
SEXは二人の自由だけれども、
その後起こることまで責任を持つ、これが男のケジメではないか。
でも戦後の時代に触れることができるという意味では良かった。
印象的なセリフ「灰色の教室」より
「男と女は互いに求め合うことが違うの、男が女に求めるのは欲情、
女が求めるのは愛情だって誰かがいってたわ。」
これを言われると、返す言葉がないんよね。
正しいともいえないけど、かといって反論もできない。
1950年代後半から今まで全く変わっていないんだと、
気付かされた瞬間でした。
石原慎太郎の本は、ヨットと女と暴力がよく描写されており、
僕の少し苦手な本だということはわかったので、とりあえずよしとするか。
Posted by ブクログ
こんな高校生、大学生が世代を代表しているとしたら、そんな世の中には住みたくない。
あまりにも暴力的で自分勝手。
価値観がドライとは言え、他人の評価を気にしたり、他人に影響を与えようとする部分もあり、人間的。
突然回想に入ることが多く、面喰らう
最後の一篇を除き、ほぼ80Pで、作られた感をこんなところに感じる
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表題の「太陽の季節」を含む短編集。
太陽の季節もそうだけど、図太くまっすぐな直線を猪突猛進で生きている主人公が、図太くまっすぐだけど、多くの人の道、道徳から外れているから、最終的には崖底に落ちていくんだけど、崖底に落ちる時も、崖があるのがわかっていても、そこにも猪突猛進で突っ込んでいき、案の定落ちていく。けっこう救いようのない話が多かった。
最後の2話「ヨットと少年」「黒い水」は他の話と少し違った。
Posted by ブクログ
友情と言うことにせよ、彼等は仲間同士で大層仲は良かったが、それは決して昔の高等学校の生徒たちに見られたあのお人好しの友情とはおよそかけ離れたものなのだ。彼等の示す友情はいかなる場合にも自分の犠牲を伴うことはなかった。その下には必ず、きっちり計算された貸借対照表がある筈だ。何時までたっても赤字の欄しか埋まらぬ仲間はやがては捨てられて行く。彼等の言動の裏には必ず、こうした冷徹で何気ない計算があった。
<33頁>
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著者のビッグマウスたるルーツを知ろうと読んでみました。
内容としては暴力とセックス。
当時、太陽族という語まで生んだほど社会現象を起こしたらしい。
正直、最初は、「暴力とセックス」にばかり意識が向いてしまって、女性としては多少不愉快な内容もあるので、面白くないという印象でした。
けれど、ここでレビューを書くにあたって、他の方の引用を読んで、その部分を再読してみると、なんだか不思議とすとんと落ちたかもしれない。
「暴力とセックス」はただの表層であって、子どもから大人への、または大人になってもなお抱える自分自身のもつ理想と現実のギャップへの葛藤とか、鬱屈した感情を、叩きつけているような印象を抱きました。
石原氏自身も若い頃があったのだなぁと(当然ですが)、なんだか不思議な気分になりました(笑)
ただ、石原氏が先日、「面白くないからやめる」と言って話題になりましたが、それは石原氏がこういう鬱憤を乗り越えた「オトナ」になって、共感しにくくなってしまったから、「面白ない」と感じるのでは?と思ってしまいました。
つまり、最近の受賞者の質が落ちたとか、面白くないのではなく、ただ単に石原氏自身が、最近の受賞者世代の書かれる「感情」やら「環境」やらに共感できないからではないかと。
そう思った所以を抜粋してみます。
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人々が彼等を非難する土台となす大人たちのモラルこそ、実は彼等が激しく嫌悪し、無意識に壊そうとしているものなのだ。彼等は徳と言うものの味気なさと退屈さをいやと言うほど知っている。大人達が拡げたと思った世界は、実際には逆に狭められているのだ。彼等はもっと開けっ拡げた生々しい世界を要求する。一体、人間の生のままの感情を、いちいち物に見たてて測るやり方を誰が最初にやりだしたのだ。
<34頁>
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大人たちのモラル
(=最近の若者は貧弱だから皆自衛隊に入って訓練しろと言う、若者が貧弱であるという論理の根拠って結局、勝手な価値観とかモラルだよね)
大人達が拡げたと思った世界
(=今の日本の経済的豊かさとか?)
石原氏が若かりし頃の「戦い方」と、今の若者の「戦い方」が違っているだけで、根本みたいなものは一緒だと思う。「日本はすき。すばらしい国だと思う。でも、日本が徴兵制になったら、いやだな。戦争になったら海外逃亡しよう」って思う。それは貧弱だからとかじゃない。時代の流れによるもので、ただその若者たちの感情を石原氏が理解できなくなっただけ。でも、それは石原氏だからとかではなく、当たり前のこと。それが世代の違いってやつで、それが時間の流れの中では自然なことだと思った一冊でした。
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最初はどこか今の時代にもありそうな恋愛をしていて、女のファッションとしての恋愛、過去の事象からの少し変わった男性観から男はリングに打ちのめされたような感覚から追いかける▶︎女が落ちたら自分がどれだけ好きで相手がどれだけ好きかを他の男や女を使って確かめる。その恋愛もとても幼稚で恥づかしながら自分の実体験と重ねてしまった。また、ラストのシーンでは英子の呪いのようなものを感じざるを得なかった。また、全く関係ないが拳闘と恋愛を対比、並立させて書いてあるのはかなり大学入試の現代文などで使えそうな内容であった。
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タツヤとエイコと、誰?な作者の解説が、最適なテンポで綴られる。
内容はあまり好きではないけど、文体を操る力がすごいと感じた。急なディズニー展開はロマンチックなはずなのに、セリフの雑さでちょっと笑える感じ。
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本作も追悼で。なので☆は1つ上乗せ。
いつかはと思い、手元にはずっとあったんだけど、全然手が伸びず今に至ったもの。”作家の値打ち”で絶賛されていて、先だってよんだ又吉作品が絶品だったこともあり、本作もひょっとして…と臨んだんだけど、全くダメでした。これも一つのネックは、やはり時代背景。当時ならきっと楽しめた…のか?登場人物も好きじゃないし、文章も好きじゃないし、正直、気に入りそうな要素が見出せん。表題作だけを何とか読み切ったけど、他4作には手を付けられず。すんません。
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この作品の映画は見たことないけど、映像のイメージで読んでしまったので、少し移入するのに時間がかかった。
昭和30年頃の時代感が掴めないのもあったとおもう。
登場人物は、若者の無邪気な残忍性を若気の至りとしての扱いを拒否する。それは、大人ぶるというより、大人と対等に距離を取ろうとする。
暴力や恋愛に耽溺するというよりは、ファッションとして着飾る軽薄さが、堕落論から10年後の時代の空気なんやろう。
自分勝手な軽はずみな行動が釣り合わない結果を伴う時に感じる、そら恐ろしさを蘇らせてくれる作品。
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どの短編もスッキリして終わるような話ではなかったが、表題の『太陽の季節』『ヨットと少年』は結末が非常に悲しいものだったが破天荒で無気力な若者感が溢れていてよかった。
昭和30年代を題材にした作品なので拳闘やヨットの話というのは令和の時代になって読むと古い感じがするが、それはそれで昭和を感じられて面白かった。
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ピカレスク小説の走り的なものなんだろうな。
太陽の季節以外はまあまあ面白かった。
深い文学的表現をしようとして、ただ単に読みにくくなっている部分が多く、そこが残念だった。
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女とは肉体の歓び以外のものではない。友とは取引の相手でしかない……。
退屈で窮屈な既成の価値や倫理にのびやかに反逆し、若き戦後世代の肉体と性を真正面から描いた「太陽の季節」。最年少で芥川賞を受賞したデビュー作は戦後社会に新鮮な衝撃を与えた。人生の真相を虚無の底に見つめた「灰色の教室」、死に隣接する限界状況を捉えた「処刑の部屋」他、挑戦し挑発する全5編。
【目次】
太陽の季節
灰色の教室
処刑の部屋
ヨットと少年
黒い水
5編収録。表題の太陽の季節より『ヨットと少年』『黒い水』が良かったと思いました。この本の影響は、なんと髪型にも影響を与えていた!?ようです。当時、石原慎太郎カットなるものが流行ったとのこと。サイドはスポーツ刈りで頭頂部は長め。ちなみにその前は震災カット(今でいうツーブロック)が流行っていたみたいです。
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石原慎太郎のデビュー作、芥川賞を受賞したものの、倫理性を巡って揉めたとあるが、そりゃそうだと思った。
人が持つ闇の部分がエスカレートしていき、行き着くところまで行ってしまう、そんな姿が描かれている。しかしそれは、気狂いというより、誰もが持ちうる闇だと思う。それがまた恐ろしい。
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時代錯誤といえばそれまで、この時代の青年がどれだけプライド高く、自分勝手で、欲に塗れているのかがズラズラと書き立てられる。この作品の文学性は、ギラギラとした衝動を、暴力的なまでに連々と、平静と書いていることだと思う。
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大学の課題として読んだ。読んだ時期が選挙前だったのでお母さんに変に勘ぐられてしまったが、著者の個人的な考え云々よりも、このような内容の小説が若者の間で流行していたことに驚いた。
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2012年現在東京都知事である石原慎太郎さん。
彼が芥川賞作家である事を知っていますか?
もしかしたら知らない方もいるかもしれません。
様々な問題を提起している彼の作品とはどんなものか。
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表題作のみ。感想は「ダサッ( ゚∀゚)・∵. 」。まあ、昭和32年だつうから、こんなもんなんかね。賢いったって、学生の考えるレベルだしなぁ。今の作家のイマジネーションや表現力と比較しちゃうと、まったくそのレベルでないと思うけど、まあ、ほら、戦後だったし。当時の大人の批評の斜め上をいこうとする、そのあまのじゃく気質は評価に値すると思いますが。
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【読書その60】久しぶりの小説。専門書やビジネス書だけではなく、小説を読むことで想像力や感性を育むことができるというアドバイスを受け、以前から読んでみたいと思っていた現東京都知事の石原慎太郎氏の著書を読む。石原氏は大学の先輩にあたるが、本書を在学中に発表したというのは知らなかった。内容が内容なだけに今のタイミングで読むべきではなかったような内容だったが、その表現力にはすごいものを感じた。発表当時も賛否両論だったそうだが、在学中にこれを書いたというのは本当に衝撃的。やはり昭和30年代当時の時代にこの内容を出したことは相当の反響があったのだろう。
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外観と内実が合わないことへの苛立ちがテーマとしてあるらしい。「先端的な学風」を押しつける学校とそれを装う学生達とか、理科の解剖の授業で「鰯」の代わりに「鯉」が配られるとか、あるいは「約束手形」の切り方とか、すべてがaccountの標準で裁かれる。それは人間関係においても同じで、だから「借りを返せよ、いや、俺の貸しを返してくれよ」というのが一つの「モラル」になり、そこから「抵抗される人間の喜び」というマゾ的な世界が広がる。障子にあれを突き立てるシーンだって、女が投げつけた本がペニスに当るところが重要なのであって、やっぱり貸借勘定なのである。西洋的なブルジョワ道徳の典型。
故落語家や某芥川賞作家へ発言を見てると、いまだに著者は抵抗されるのを待ってるんじゃないかと思う。「借りを返せよ。いや、俺の貸しを返してくれよ」
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言葉は時代と共に変わって行くものだけど、少し前の時代の人はみんなこんなしゃべり方してたんだろうか。耳で聞いたら聞きやすいんだろうけど、字面にしたらまぁ読みにくい。
内容については、みんながみんなこうではないだろうし、誇張もあるのだろうけど、こう言った作品を書かせるにはそれなりの時代背景があるわけで、そう思うとこの作品に出てくるような若者達が年齢を重ねて今の日本を支えてるのだとしたら、少し複雑。