あらすじ
選考会で異例の満場一致!
第127回文學界新人賞受賞作
松井まどか、高校2年生。
うみちゃんと付き合って3か月。
体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。
――「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。
優しさと気遣いの定型句に苛立ち、
肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。
★★★
文學界新人賞・全選考委員激賞!!
ここには誰のおすみつきももらえない、肉体から絞り出した言葉の生々しい手触りがある。――青山七恵
安易なマイノリティ表現への違和感の表明であり、同時にそのような表明の安易さへの批判でもあるという点で、まさにいま求められる文学なのではないか。――東浩紀
本作には紛うことなき現代を生きる人間が、そして現代がぶち当たっている壁が克明に描かれている。――金原ひとみ
世界が傷つくとみなす事項に対する、最初からの「傷ついてなさ」が、ぐっとくるのだ。――長嶋有
満場一致の受賞となり、今後の活躍を楽しみにしている。――中村文則
主人公にとって、また小説にとって、とても重要なもの、安易に言語化できないものたちが、物語の力によって、この小説の中に確かに存在している。――村田沙耶香
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
他人に判断された自分の属性が本当の自分の属性と違う時、見当違いな慰め・哀れみの言葉に腹が立つ。それと同時に、多様性を認めましょうと謳われている現在の社会において、マイノリティであると判断された自分がその属性から出ようとするならば、既に完成してしまった共生の輪を壊してしまうからこそ逃げ出せない状況、演じることを選択する自分が嫌になる気持ちが痛いほど理解できた。
それでいて、自分が他者の属性を判断した際には、どんなに選んでもその属性に振られた人に対してかける言葉しか出てこない。本気で向き合うための、他者との会話の難易度が高すぎるからこそ、まどかがうみちゃんに対して行ったように、脊椎反射に近く、言葉の海面に漂うような軽い言葉で会話することが楽なのだと思う。
「Z世代」という属性に配属される私たちは、自分たちの仲間を見つけるとすぐに新たな「界隈」を創り出し、似たような境遇の人々を閉じ込める。
一度配属されてしまえば、他者からはその界隈の人と認識される。
そんな時代である今だからこそ本作をもっと多くの人に触れて欲しい。
Posted by ブクログ
いろんな想いが溢れすぎて、今文章にするのが難しい(後から書き加えるかも)。でも、本当に読んで良かったしこれから何度も何度も読み返すだろうと思う。
Posted by ブクログ
主人公の高校2年生 松井まどかは、高身長であるものの体重計の目盛りは40を超えていない。うみちゃん、というパートナーもいるが、今の生活に違和感を感じている。
100頁ちょっとの短く、すぐに読める作品ですが取り扱っているテーマは非常に興味深かったです。N/Aというタイトルから連想されるように、マイノリティなんだけどどこにも「該当しない」、そんな感覚を味わえます。
舞台は中高一貫の女子学校という閉鎖された環境で、登場人物たちの考えもバイアスがかかったものですが、そこにバイアスがあることには気づいてなさそう。大人がほとんど登場せず、かつ、少ない大人もろくでもない描かれ方をしているのは、そういう風にみられているってことなのでしょうか。
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あまりにも鋭かった。自分が言語化しきれていない、なんとなくふわっと感じていたことを、綺麗に文章として目の前に並べられていて、心が揺さぶられた。
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高校生のまどかは、生理の血をひどく嫌悪している。その熱量は生理を止めてしまうほど烈しいものだったが、彼女はいわゆる拒食症ではない。まどかには同性の恋人がいるがレズビアンではない。世間から少女は「かくあるべし」というレッテルに対して、まどかと一緒に怒りを覚えた。
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言葉の持つ力。限定してしまう危うさ。
読んで感じたことをうまく言語化できないから、言葉を探し続けよう。だからわたしも今は「黙って既読だけつけとく」のだ。
Posted by ブクログ
私おじさんなんですけど。
これ読むと2020年の女子高生を疑似体験できます。
スマホのVRアプリより凄いです。
長嶋有さんが共感できない主人公とラジオで言っていたが、共感できないから読んでいると他人の心にダイブするような感覚になるのか?
Posted by ブクログ
他の方の感想を読んでN/Aは該当なしという意味だということを知りました。なるほど。物語の理解がより深まりました。この本は世の中には色々な考え方の人がいてそれを尊重しようとかそのような意味ももちろんあると思いますが他にももっと色んな意味が込められているのかと思いました。自分の中では言語化できていないものをうまく文字で表していて作者尊敬!
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設定が興味深かったです
こうゆうグレーな芸能活動をしている子達もどこかにはいるんだろうなあと想像できた事だけで自分には結構価値がありました
出産を経験したので 親の目線でも読めて複雑な気持ちになりました
生きづらさはどんな人間でも抱えている時代なのかなあ などと考えたりしました
Posted by ブクログ
対人関係で感じてきたことを言語化してくれた。主人公にも言葉足らずな部分があるにしろ、ちょっとだけズレてるというか、気持ちを相手に伝えることができないところに共感した。リアルな女子高生の会話がテンポよく描かれてて面白かった。
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4.0/5.0
自分がどこかや何かに分類され、その枠の中に入れられることを拒み、恋人や友達とはまた違う「かけがえのない人」を求める主人公の、世界に馴染めない様やどこやふわふわと浮いているような儚さが印象的だった。
ただ、中盤から後半にかけてが、個人的にはあまり何かを感じ取ることが出来なかった。
特に現状に嫌悪感を抱くわけでも、何かを求めているような様子もなく、ふんわりと終わっていったような印象だった。
Posted by ブクログ
文學界新人賞。選考会で異例の満場一致。
表現があまりにも豊か。文学的表現にしようと捻り出したというより、自然に出てきているように感じた。そのくらい豊かさに溢れていた。
まるでベテラン芸人の会話にユーモアが散りばめられているかのように。
カテゴライズされた配慮はいらない、でもお墨付きがある。一方でその人宛に綴る自分独自の言葉には責任が伴う。
観察眼と叡智に富む作品だと感じた。
ラストはちょっと物足りなかったけど、かなり好き。もう一度読むと思う。
Posted by ブクログ
該当なし
それでいい それでいいのだが、生きづらい
わたしは誰かをカテゴライズせずにいたいしカテゴライズされたくもないが、不可能で泣き、それが社会
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なん、か、なんて、いうんだろう。
自分とはもちろん違う、他人。だから感じ方とか使う言葉とか行動とか、もちろん違う、けど、多分まどかちゃんが求めてる、なんの理由がなくても「わたし」を見てくれて優しくしてくれるものを求めている感覚はわかる気がする気がする。
かけがえのない他人か。うーん。
多分、生理のことも恋愛のことも、多分何のジャンルにも括られない「わたし」を見て欲しかったというか、うん、これは誰しもがわかることなのかな。
で、それに最後出会えたっていう感じなのかな。
うーん?
NAって「該当なし」ってことか!
うん!やっぱり!!
多様性が謳われる現代だからこそ、人と人とのコミュニケーションに苦手意識を感じて、マニュアル化していくっていう、矛盾が起こっている、そしてその苦しみの間にいる、主人公って感じ、、、かな。
おお、初めてレビューと同意見。
今だからこそって感じかな。推し燃ゆより共感、、、する、、、かも!
Posted by ブクログ
読みやすくて色々と考えさせられました。
親世代の私は自分の娘が主人公の女の子と同じ気持ちになった時、どうやって寄り添ってあげられるだろうと考えてしまった。
『生理』というものが嫌で痩せて生理がこないようにしてしまう主人公。
本にも書かれていたように定型文として声をかけるのではなく、本人の話をじっくり聞いて向き合っていければいいのだけど。。。そんな簡単にはいかないのかな。
人はどうしてもその人を理解するために自分の知っている型にはめてしまいがちだけど、悩んでる人にとってそれは余計なお世話でしかないんだろうな。
読書を通して自分の中の偏見も少しは認識出来るようになってきた気がする。
Posted by ブクログ
生理前、生理中は自分が女であることが普段以上に憎くなるし、男女平等なんて生理がある時点で終わってるだろとか、生理の煩わしさと辛さなんて男にわかるわけないんだから理解してるふりすんなとか思う、八つ当たりなのはわかってるんだけど。これこそ性別でカテゴライズして決めつけてる。現代はカテゴリーが多いし、そのどこかに自分があてはまることで安心できる。そして、他人をもどこかにあてはめようとする。どこかに該当するんじゃなくて、「自分」でいいのに。
Posted by ブクログ
一気に読んでしまった。
恋人とは違う「かけがえのない他人」わたしもほしいって思ったことあるし、生理止めたいって思ったことある。
今はいろんな言葉で分類できるけど、そうじゃなくてっていうのも、わかってあげれる気がする。
帯についてる村田さんの書いた「安易に言語化できないものたちが、物語の力によって、この小説の中に確かに存在している」
これに尽きる。
わたしはこれを読んでこれ以上の感想はうまく言語化できない。(あれ、、、バカなだけかも。)
Posted by ブクログ
何者でもない自分が誰かの違った型にはめたものの見方で見られることへの嫌悪。
そんな自分も誰かのために紡ごうとする言葉がマニュアル化してしまうことに苛立ちを感じる。本当にその人のためを思った言葉が出てこない。
かけがえのない他人を追い求めるがそもそもそんな人いるのかという寂しさ。
自分は一体何なのか。に行き着く。
私はなぜ生理が嫌い?もともと男性?なぜモテる?あまり腑に落ちない表現あり。
うみちゃんはまだ金木犀の香りがしてる→まだ吹っ切れてない?
Posted by ブクログ
マイノリティのカテゴリー化、コミュニケーションの軽薄化という現代的な主題と、性という普遍的な主題を組み合わせており、とてもいい。
文体も(たまに違和感を覚えてしまうこともあったが)現代的な比喩が多く面白い。
かけがえのない他人なんていない。それでも支え合って生きていこう。って思った。
103 自分の言葉で人の心を揺らしてしまうのが怖くて、自分の言葉の責任を担保してくれる何かが欲しくて、他人のお墨付きの言葉を借りたくて仕方がなかった。多くの人に使われてきた言葉を使用すれば、まどかがオジロとの今後の関係を安全に保っていられることは間違いなかった。
112 うみちゃんは、恋人ではないし、友だちでも、先輩でも、先生でも、家族でもなかった。
まどかにとって何者でもない人だった。
だけど、うみちゃんのことを好きかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
なんかJKの時の、「誰も本当の私なんか分からないでしょ?」、「勝手にわかった気になんないでよね」みたいな感覚。
よく話す友達はたくさんいるけど、親友みたいな人は1〜3人しかいないみたいな感覚。
そういうのを思い出した。
Posted by ブクログ
「嫌悪」または「拒絶」と,否定できない「共感」が同居している,でもその両方とも認めたくないのに認めてしまう…とてつもない居心地の悪さと,同じ質量の「はだか」のままでいることへの圧倒的な肯定感…
この「スッキリしない混沌」は,なんなのか?
でもこの「全部に意味がありそうで本当は空虚で,それなのに囚われている」世界こそ,我々の世界で,我々の世界をそのまま描いても全然面白くないはずなのに,読み始めたらページを捲る手が止まらない.
若い作家さんのようだけど,とんでもない書き手さんが出てきたなぁと.
題名のN/Aもニクい選択.全部のバランスが物凄い複雑さで均衡を保っている…ヤバい,クセになる作品.
この作品を推薦してきた中2の息子も,これを教材にした息子の学校の国語の先生も,なかなかの際物,と言わざるを得ない笑
ネタバレはしないけど一つだけ.
これ,LGBT関係の話では,ないです.
何か「テーマ」的なものに意味付け出来る安易な作品だと思うと,火傷します
Posted by ブクログ
初年森瑛さん作品でした。
宇佐見りんさんに近い感じの作風を感じました。
恋人じゃなくてパートナーでもなくて、付き合ってる人というのがしっくりくる、というところに共感しました。
上手く言葉にできないし、簡単に他人に言葉にしてほしくないようなことが、誰にでもあるんだってことを改めて感じました。
Posted by ブクログ
分かったふりは してくれなくてもいい…
他人の悩みや事情を
勝手にジャッジしないでほしい…
でも その反面
本当は誰かに分かってもらいたくてたまらない!
主人公の魂の叫びに 圧倒されました!
__嫌なものは嫌だ。
それだけのことが伝わらない。
“私は何者でもないのに…”
恋愛や性別などへの違和感を 周りの人たちに
カテゴライズされていくことへの嫌悪感が
痛いくらいに伝わってきました…
終わり方がとても良かったな…
カテゴライズされないことを
求める主人公だったけど
カテゴライズされることで
安心感を得ることもあるのだと気づきます
その会話が 私はとても好きでした…
SNS 、LGBTQ、多様性、コロナなど…
さまざまな現代ワードが出てきます
いつかそのワードを
懐かしく思う時代がくるのかな…?!
歳を重ねて再読したい作品になりました
そして この作品がいつまでも
生きづらいと感じて立ちすくむ
誰かの支えにどうかなりますように…
Posted by ブクログ
薄い本なので、すぐに読み終わった。
複雑ない思いを持つ女子高生が主人公。
気難しい子の部類に入るタイプ。
生きるのって大変だよね、色んなことあるしね、
人間関係も大変だよね、って言ってあげたくなった。
Posted by ブクログ
女子校出身からすると、女子校の中でのやりとりとかとても共感できた。どこもあんな感じなのかな
「N/A」というのは「該当なし」という意味らしい
主人公のまどかはまどかであり、何にも当てはめられず該当しないという意味でぴったりのタイトルだと思う
性別や見た目や誰を好きかを関係なく、自分は自分でありたいということがどういうことなのか、葛藤が何なのか少しわかった気がする
自分の周りに悩んでる人や落ち込んでる人にどうやって声をかけるのかについて考え直すきっかけになった
形式だけの「大丈夫?」じゃ何にも響かないこともある
その人のためだけの言葉って難しいなあ
保健室?の手を繋いでいるポスターの表現がすごく心に残ったんだけど、メモするのを忘れてしまった
2023.03.02
Posted by ブクログ
女子校の生徒。生理を止めたくて体重を落とした。かけがえのない他人同士になりたくて、同性のうみちゃんと付き合っている。そんな「まどか」が主人公の小説。
まどか視点で語られ感情描写も多め。考え方にあまり共感はできない。生理のくだりもよくわからない。すぐには読めたが、とくにこれといって得たものはない。
Posted by ブクログ
生理なんてしんどいし、お金かかるし、妊娠したくなるまで不必要だと思っている。けれども、まどかみたいに生理が嫌だから、止めようと思ったことはなかった。生理を止めるのは体に悪いだろうからしないけれど、嫌なことを受け入れず、嫌だと思って行動するまどかの姿勢は少し憧れる。
Posted by ブクログ
読もうと思ったきっかけはタイトルと表紙。
その後ちらっと中を見て、LGBTQ+関連の話かな?と思っていたけど、実際に読んでみると(マイノリティについての話でもあるけれど)「誰かに言葉をかけること」の難しさについて描かれた作品だ、と思った。
先日、母親から届いたLINEの長文メッセージ(内容も激重)を受け止めきれず、そのことについて友人に話したところ「え、キモ!!!」と即答されて、何の配慮もないその言葉に、かなり心が救われたのを思い出した。