あらすじ
逆光を浴びステージに登場したボーカルは、突如悲痛な叫び声をあげるとその場に頽れた。彼の胸には千枚通しが突き刺さっていた。衆人環視の中での不可解な変死により、ロックバンド〈赤い青〉は活動休止に追い込まれる。事件直前、カリスマ的なギタリストが演奏中に犯した、彼に似つかわしくない凡ミスは事件と何か関係があるのか? ライブハウスのスタッフである梨佳は、あの日なにが起こったのかを考え始める。やがて起きた第二の悲劇――ロックは、人を殺すのか? 無冠の大型新人による、感動の第一長編。/解説=有栖川有栖
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Posted by ブクログ
ロックとは何か!?
主人公の児玉梨佳は全編にわたり登場人物全員に犯人探しの傍ら問いかける!
言葉で現したらロックじゃない!
音楽家の魂!
ライブの会場に時たま降臨するもの!!
なんて、曖昧陳腐な物ではなく、登場人物達は理路整然と自分達の持つロック像を述べてくる!
学生運動の時代からラブ&ピースの時代を経てヨーロッパから日本へ流入する音楽の一つのジャンル、80年代から90年代にかけて和製ロックが確立されて、ブルーハーツやブランキージェットシティが生まれ、2000年頃に大輪を咲かす!
そんな平成の前半期を思い出させてくれるグルーブを持つ作品!
物語に登場する人物達のその後を読んでみたい!
と思うほどの読後感!
超絶な人気を持つインディーズロックバンド【赤い青】のボーカル【ヨースケ】がライブ中に千枚通しを胸に刺されステージ上で殺されてしまう!?
ライブハウス【ラディッシュハウス】で働く児玉梨佳は、ヨースケがライブ前に放った言葉『ロックって何なんだろうな』の意味と、ヨースケの死の直前カリスマギタリスト【クスミトオル】のピッキングミスに疑問を持ち事件を追い始める・・・
Posted by ブクログ
あらすじを読むだけで、衆人環視の殺人!と心惹かれ読み出したものの、当初は地味な感じがしていた。主人公がいまいちはっきりせず、好感を得られなかったからかもしれない。
みんなのロック論を聴いて回るのはなかなかおもしろく、もともとライブ通いをしていた私はそれに気を取られてミステリということを半分忘れかけていた。しかし当たり前だがそれもちゃんと伏線になっていて、ロジカルな解き方をされる。探偵役もまさかの人物で、途中までは登場人物一人ひとりなんだかぱっとしない気がしていたものの(濃いキャラだらけなのになんでだろうか)たったひとり放り込んだだけで流れが唐突に変化する。この小説こそ、ロックみたいだ。
天才ギタリストがピッキングミスをした理由も、意外性があって。
空中分解したバンドをこの先どうやって着地させるのか、詳しくはネタバレになるので伏せるが、探偵役が出て来た時に少し予感はあった。その時はそんな終わりは嫌だと思っていたのだが、なんとも収まり良く描かれていた。初めてギターを触った時の、あの純粋な、混じり気なしの「ただただ楽しい」という感覚を思い出させてくれる。
人の数だけロックがあり、人の数だけミステリがある。とても掘り下げて書かれていたので、著者が今度は何を描くのかとても興味が沸いた。