あらすじ
僕が使者(ツナグ)だと打ち明けようか――。死者との面会を叶える役目を祖母から受け継いで七年目。渋谷歩美は会社員として働きながら、使者の務めも続けていた。「代理」で頼みに来た若手俳優、歴史の資料でしか接したことのない相手を指名する元教員、亡くした娘を思う二人の母親。切実な思いを抱える依頼人に応える歩美だったが、初めての迷いが訪れて……。心揺さぶるベストセラー、待望の続編!(解説・深木章子)
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Posted by ブクログ
・プロポーズの心得
俳優の紙谷ゆずるは想いを寄せる一人の女性がいる。その人は高校時代に親友が亡くなった悲しみを引きずっているという。その女性と亡き友人を引き合わせたいと、使者と連絡を取る。面会の日、眼の前に現れたのは小学生位の少女であった。
・歴史研究の心得
今回の依頼は少し変わっていた。郷土史を研究してきた教師が、歴史上の人物と面会したいというのだ。
・母の心得
二組の依頼が来る。一方は目を離したスキに事故で娘を亡くした夫婦。もう一方は若くして病で亡くした娘に会いたいと願う老婦人。満月の日が最も面会時間が長くなるため二組はそれぞれの想いを抱えながら同じ日に娘との面会をすることとなる。
・一人娘の心得
使者として活動する渋谷歩美はおもちゃの製造販売をする会社で働いている。歩美はその過程で亡き父とも付き合いのあった鶏野工房の大将とその家族と親しくなる。歩美の企画した木製玩具が完成した直後に工房主・鶏野が亡くなってしまう。工房主の一人娘・奈緒は悲しみに暮れており、使者として工房主との面会ができることを説明すべきか思い悩む。
・想い人の心得
桜の季節に馴染みの人から依頼が来る。料亭の主の男は祖母の代から何度も同じ人と面会を希望して依頼してくるが、毎度断られていた。面会相手は料亭での修行時代の店主の娘であった。憧れの人であり、幸せな人生を望んだものの、若くして亡くなってしまったのだった。
今回はバリエーションに富んでいた。歴史上の人物に面会を希望したら?依頼人が何度も断ってきたらなんども会えるのか?実際に会わずとも故人の意思は伝わるのではないか。使者のルールがストーリーにうまく組み込まれていて良かった。
個人的に好きだったのは想い人の心得だった。私がいなくとも皆幸せに過ごしたのねと言う死者に対して、依頼人が今の幸せが無くなろうともあなたに生きて欲しかったと語る部分が好きだった。どんな人にもこのように言ってくれる人が一人ぐらいはいるのだろう。自殺を考える人に届くと良いと感じた。
Posted by ブクログ
よかった。続編ものは当たり外れがある、そんな固定観念があったけど、今回はよかった。
どの話もとても心に残る。
歩美くんの想い人もこの人なら相応しいなと、親心的にみてしまった。きっと上手くいくと思う。
死者に会えるというファンタジー要素も、もしかしたら本当にどこかで起きているんじゃないか、起きていて欲しい、そんな気持ちから空々しさはなくすっと話に入ってしまう。さすがは辻村作品でした。
Posted by ブクログ
前作は”使者”見習いだった主人公が、その仕事を継いでしばらくたった後の話。。前作との繋がりを随所に感じ、楽しく読むことができた。
各話それぞれ切なくもさわやかな読後感を感じることができた。主人公が今後どのような人生を過ごしていくのかとても気になる終わり方だった。続編があるならぜひ読んでみたい。
最後の話から、印象的なフレーズの抜粋となるが、自分も、大事な人と同じ時間に存在できることを大事に思い、悔いのないように過ごしていきたいと感じた。
Posted by ブクログ
大好きだったツナグの続編なので読んでみました。
最初、歩美じゃない?!別の使者がいるのかな?!と思ったらそういうことかーと思いました。
幼いようですが、肝が据わっている感じが当主というだけあって(?)とても伝わってくる場面が多かったです。
奈緒さんに打ち明けるのかな?と思いましたが、使者に頼まなくても乗り越えられる方ももちろんいるよなぁと思い、奈緒さんの強さを感じました。
蜂谷さんの言葉で、「同じ時代に生きられるということはね、尊いです。」「想い人や、大事な人たちと、同じ時間に存在できるということは、どれくらい尊いことか」というところがとても心に残りました。
同じ時代に生きられる尊さを感じながら、家族や周りの人たちに感謝しながら、感謝の気持ちを伝えながら、やさしい気持ちで接したいです。
歩美さんと奈緒さんの今後が明るいものだとうれしいな。
心温まる素敵な物語でした。
Posted by ブクログ
前作の「ツナグ」を読んでからかなり経つのもあって、どう繋がってくるのかと思ってたけど、読み始めると感動したあの時の記憶が戻ってきた。前作では高校生だった歩美くんは社会人になり、働きながらもツナグとしても活動していた。今作も様々な人が会いたい人と出会うが、特に印象的だったのが娘さんと再会し、ドイツ語で会話した時子さんと蜂谷さん。時子さんの考え方は素敵で、蜂谷さんの温かさにもほっこりした。これまではツナグでの再会で話が広がってきたけど、例外だったのが奈緒で、この話も好き。奈緒の芯の強さには驚いたし、憧れる。
Posted by ブクログ
母の心得がとても素敵な話だった。
前作は死者と会うことで前向きになるというイメージが強かったけど、今回は色々あって面白かった。死者と会わずきっとあの人ならこう言うだろうと考えられるように人と向き合いたいと思った。
Posted by ブクログ
友人にすすめられて手に取った辻村深月さんの『ツナグ』。最初はファンタジーのような設定に戸惑いましたが、読み進めるうちに、この作品が描く人間関係の深さに引き込まれていきました。
もし亡くなった人に一度だけ会えるとしたら、私は誰を選ぶだろう。
『ツナグ』を読み終えたあと、自然とそんなことを考えてしまいました。
この物語は、“死者に一度だけ会える”という特別な機会を仲介する「使者(ツナグ)」をめぐる連作短編集です。一つひとつのエピソードが丁寧に描かれていて、どれも心を揺さぶられました。
「会いたい」という気持ちには、いろんな形があるんだと気づかされます。感謝を伝えたい人、謝りたい人、答えを求める人……それぞれの再会に込められた想いがまっすぐで、読んでいて何度も胸が締めつけられました。
中でも印象に残ったのは、「親友の心得」の章。友情というものがいかに繊細で、そして深いかを改めて感じました。信じていた人に裏切られたような気持ち、それでもなお向き合おうとする姿がリアルで、涙が出そうになりました。
そして、物語を通して少しずつ明かされていく“歩美”という主人公自身の過去もとても興味深かったです。ツナグとして他人の「再会」に寄り添う一方で、彼自身が抱えている想いにも静かに心を動かされました。
読む前は「死者と再会するなんて非現実的」と思っていたのに、読み終えた今は、「誰かにもう一度会えること」がどれほど尊くて重いことなのか、じんわりと実感しています。
静かだけど深くて、どこかやさしい。そんな物語でした。