あらすじ
絶縁して10年――。
私はまだ、父に囚われ続けている。
歌手にして作家、唯一無二の才能がはなつ渾身の私小説。
こんなふうに鮮やかに世界を描写する言葉があったのかと、ページを繰るたびに衝撃を受けました。
澄み切った劇薬のような、忘れ難い物語です。――小島慶子(エッセイスト)
挨拶もなく消えた父。「特別な子供」になりたかった十四歳の栞は、父への怒りを拠り所に青春期を過ごす。十年後、父がもう長くないとの連絡が入る。あれだけ囚われ、憎しみ続けた存在が死ぬ――。空虚な現実を前に、栞の胸に去来するものは。鋭利な筆致で心を抉る、歌手にして小説家の異才が放つ魂の私小説。
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Posted by ブクログ
レモンの木は見たことが無く、棘があるのも初めて知った。
主人公の少女はほとんど家にいない父親をずっと憎み続けながら成長する。
崩壊寸前の家族から逃げるため、全寮制の中学校へ行く。
しかし、大人になっても「父親」という存在にいつまでも囚われている。
離婚して出て行った父親を憎む記念として、
弟と一緒にホームセンターで見つけた、
枯れそうな弱いレモンの苗。
いつしか庭でしっかりと成長し、大人になるころには大きな実をたくさんつけるようになる。
Posted by ブクログ
黒木渚の自伝的小説。
もう読んでいてずっとチクチク痛かった。
父との確執。
父を敵とする中でギリギリ自分自身のメンタルを保ってはったんかな?
作中で父に対する決別のために、弟と一緒にレモンの木を買いに行って植えるシーンがあるが、普通の学生には思い浮かばない発想のように感じて、辛いシーンやけどなんか感心してしまった。