あらすじ
香港。この地には、観光客を標的に窃盗する『スリ』、その盗品を売りさばく『露店』、出回った盗品を探し出し、持ち主から手数料を得る『回収』とそれぞれグループが存在し、そこには三者共存の掟があった。ある日、回収側の人間である劉巨明が、何者かによって殺害された。仲間であった新田悟は、巨明の妻からあるメモを渡された。メモには巨明の文字で「任家英に気を付けろ」と謎のメッセージが残されていた。そして新田は、香港の闇社会に渦巻く悲しみの深淵に巻き込まれていく―─。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
池田久輝『晩夏光』ハルキ文庫。
第5回角川春樹小説賞受賞作。しかも全選考委員満場一致と鳴り物入りの受賞作で、香港を舞台にしたハードボイルド。雰囲気はそれなりにあるのだが、香港の闇社会を箱庭程度にしか見せてくれないスケールの小ささと思い切りの無いストーリー、描写に於ける強弱の甘さが作品全体を駄目にしているように思う。
香港で観光客の盗品を回収し、持ち主から手数料を得るグループで『足』の役割を勤める新田悟は仲間の殺害事件をきっかけに香港闇社会の深淵に足を踏み入れていく。
大体、観光客を標的にしたスリと盗品を扱う露店、盗品回収が香港闇社会というのが何ともみみっちい。事件の根幹も驚くほどでもないし、実質の主人公は陳小生であるのだから新田悟という日本人を登場させる意味も無い。新田悟の抱える過去も弱い。