あらすじ
■消費行動を変え幸福度を上げる【お金の新概念】
「お金では買えない価値がある」という言葉には納得するものの、
やはりお金が欲しい、できれば贅沢な暮らしがしたい、というのが人情です
これは決して恥ずべき感情ではなく、動物としてのヒトのDNAに刻み込まれた
ホットシステムというべきごく自然な欲求です
しかし格差が開いた社会、中でも中間所得層においては、
本書ではこうした欲求が不幸をもたらす可能性があると警鐘を鳴らし、
次のようなお金の新概念を提唱します
・地位財=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの。幸福の持続性[低]
(例:所得、社会的地位、教育費、車や家などの物的財)
・非地位財=他人が何を持っているかどうかとは関係なく、
それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの。幸福の持続性[高]
(例:休暇、愛情、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、良質な環境など)
シンプルながら、今まで経済学ではほとんどテーマとされなかった
この「地位財」「非地位財」という概念は、
あなたを不要な競争的消費から解放し、幸福度を上げる力があります
■目次
監訳者まえがき/金森重樹
Ⅰ 収入が増えない時代の幸せとお金の研究序説
Ⅱ 「普通の生活」でもどんどんお金が減っていく理由
Ⅲ 地位財・非地位財でわかる幸せのコスパ
Ⅳ 「平均以下」が私たちを幸せにする?
Ⅴ 今、問われている納税者としての金銭感覚
最後に、日本語版読者へ寄せて/ロバート・H・フランク
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Posted by ブクログ
地位財=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの。 (例:所得、社会的地位、車、家など)
非地位財=他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの(例:休暇、愛情、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、良質な環境)
性淘汰の過程で、序列を意識することは人間のDNAに刷り込まれたものですので、これ自体を否定することはできません。
そのうえで、中間所得層が限られた収入を地位財の競争に振り向けるのではなく、非地位財を意識してそちらにお金を振り向けるほうが、人間の本能に反するけれども結局は良い結果になり幸福度が増加するのではないかということです。
命題①
人には相対的な消費が重要だと感じる領域がある。
命題②
相対的な消費への関心は「地位獲得競争」、つまり地位財に的を絞った支出競争につながる。
命題③
「地位獲得競争」に陥ると、資金が非地位財に回らなくなって幸福度が下がる。
命題④
中間所得層の家庭では、格差の拡大によって「地位獲得競争」から生じる損失がさらに悪化した
絶対的な所得よりも相対的な所得のほうが、幸福度の指標として信頼できるという考えと一致します。
実際のところ、先進国では、絶対的な所得が幸福度を大きく左右することはありません。
ところが、最貧国においては、全員の所得が増えれば幸福度も増します。
しかし、さしあたり重要なのは、絶対的な所得が一定の値を超えると、全員の所得が同じ割合で増えても、幸福度はほとんど変化しなくなるという点です。
私たちにとっては、こうした現実的な点──相対的な所得が大きく増えると、主観的幸福度も大幅に上がること──こそが重要なのです。
非地位財の消費が重視されている社会のほうが、主観的な満足度は高いことがわかっています
Posted by ブクログ
地位財と非地位財。地位財にお金をつぎ込む結果、満足が得られない。
20211104再読
限られた収入を非地位財に振り向けたほうが、本能には反するが、幸福度が増す。
廻りの支出にあわさざるを得ない状況がある。家がだんだん大きくなる理由。平均並みの学校に通わせるには、周りと合わせた家の大きさが必要=廻りが大きくなれば、自分が買う家も大きくならざるを得ない=地位財にお金を使わざるを得なくなる。
地位財は、周りに合わせる必要がある。個人の消費支出は他人とは無関係ではない。相対的な関係で決まるため。
結婚記念日のディナーは相対的に豪華である必要がある=普段の食事にお金をかけていれば、もっとお金が必要になる。羨望や優越感からではなく、相対的欠乏のため。
家の大きさは、相対的に大きければ、小さくてもよい。休暇は、絶対的に長い方がいい。住宅は地位財で休暇は非地位財だから。
地位財にお金を使う結果、非地位財に使えなくなって幸福度が下がる。
中間層の所得が変わらない中で、トップの収入が増えると、相対的地位を保つ費用が高くなる。格差が中間層の富を奪う結果になる。
幸せな人ほど社交的。助けの求めに応じる傾向も高い。
収入と幸福度の関係は、時系列では収入とは無関係。しかし、同じ時期の収入と満足度には、正の相関関係がある。
相対的な格差の拡大は、幸福度を下げる。北欧が幸福度が高い理由。
格差が大きい地域では離婚率が高い。
高額な商品がカタログに載っているだけで、高額の基準が情報遷移する。
時代とともに普通が高級化高額化している。スミスの時代に出っ歯を気にすることはなかったが、現代は歯列矯正をしなければ恥ずかしい思いをする。
金持ちが大きい家を建てると庶民の家まで大きくなる。
車も服も同じ。軍拡競争と同じ。贈り物のワインの値段も同じ。
身近な仲間との関係が影響が大きい。局所的な地位を一番気にする。準拠する集団はごく近所の集団。
低所得者の貯蓄率が低いのは、他の人たちの支出に追いつこうとするから。
フリードマンの恒常所得仮説は所得と貯蓄率は関係ないと主張している。相対所得仮説は、低所得ほど貯蓄がないと主張している。
中間所得層は、共働き、貯蓄の低下、カード破産、長距離通勤、睡眠時間の減少、などで補う。
通勤時間の違いは気にならない。通勤時間が短いからと言って優越感には浸れない。その結果、目に見える家の大きさにお金を使うことになる。通勤時間の短さは非地位財。
鹿の角はメスの獲得のために大きくなる。たとえ森の中で身動きが取れなくなるとしても。=コモンズの悲劇。
軍拡競争、共有地の悲劇、漁場、全員がたちが上がる劇場
勝者総取りの構造。技術革新、情報革命。
自由競争が大リーガーの年俸を吊り上げた。移籍の自由が生まれたため。
CEOはかつて同じ企業に勤めていた。自由競争になってからは、同業だけでなく他社から経営者を引き抜いた。その結果、CEOの給料が上昇。
海外との競争がない歯科医でも、美容歯科では人気投票で格差が広がっている。
格差が広がることで、贅沢のレベルが上昇。
全員で地位財への消費を減らすことが必要。
ぜいたく税や禁止令は、抜け穴を探すだけ。
累進消費税=収入と貯蓄額で消費税率が変わる税。金持ちが節税のために消費を減らせば、それで幸せになれるし、贅沢のレベルは上がらない。消費は抑えるが貯蓄が高まれば投資は増える。
貧しい国では一輪のバラでよいが、豊かな国ではバラの花束が必要。
シンプルライフの探求。しかしすでに簡単に支出を減らせるものはない世帯もある。
富裕層でも、競争的支出のために無駄な地位財の消費をしている。
すべては、相対的なもの。
Posted by ブクログ
この本は経済を正常化するための1つの提言です。
内容の大部分は、消費には地位財(他人との比較優位によって価値を感じるもの)と非地位財(絶対的な価値を感じるもの)の2種類があり、非地位財にお金を使ったほうが幸福になる、といったもので、丁寧すぎるほどのエビデンスや比喩を提供してくれます。これがちょっと食傷気味で中だるみします。作者の提言は、社会格差が広がることが地位財消費を増長させ、中間層は必要以上に非消費財にお金を使い不幸に陥る現状は、累進課税導入により富裕層の地位財への消費を抑える事で、それそれの立場での身の丈での消費で幸せになるとの問いかけで、ある程度説得力があると感じました。
個人としては非地位財に対してお金を使うよう努めたいところです。
人間の本能に抗うことではあるが、シンプルライフにより幸せな気分で過ごしたいです。