あらすじ
トヨタを3年で辞めた若手人事が、
「どうすれば日本の大企業の閉塞感をなくせるのか?」という問いを掲げ、
その回答を手紙形式でまとめた全524Pに及ぶ力作。
著者は、サイボウズ人事労務部所属。
noteに投稿した「僕はなぜトヨタの人事を3年で辞めたのか」が400000PVを獲得するなど話題となり、日経COMECOキーオピニオンリーダーに就任するなど、いま注目の若手人事。
●目次抜粋
【序章】ぼくはなぜ、トヨタの人事を3年で辞めたのか
【1章】会社を成り立たせている10のしくみ
ー「一律平等」と「多様な個性」のあいだで
【2章】なぜ「会社の平等」は重んじられるのか?
ー1930年代(戦前)~1950年代(戦後)「青空の見える労務管理」
【3章】なぜ「会社の成長」は続いたのか?
ー1960年代~1980年代(高度経済成長期)「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
【4章】なぜ「会社の変革」はむずかしいのか?
ー1990年代~現在「3つの社会問題」と、日本社会の「会社依存」
【5章】現地現物レポート
ーあたらしい競争力の獲得を目指す12企業
《採用》富士通
《契約》タニタ、ANA
《時間・場所》ユニリーバ・ジャパン、ヤフー、みずほ銀行
《配置/異動》ソニーグループ
《報酬/評価》 NTTデータ
《健康(安全配慮)》味の素
《コミュニケーション/風土》コンカー
《育成》ソフトバンク
《退職》良品計画
【6章】サイボウズ人事制度の変遷レポート
ー情報の民主化が、しくみと風土を変えていく
【7章】会社をインターネット的にする
ーデジタルネイティブからの提案
【終章】ぼくはなぜ、この手紙を書いたのか?
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Posted by ブクログ
自分と同じ年ごろ(いや、少し若い)人事マンが書いた書籍。後半は事例紹介がメインのため、少しダレる内容だが、題名に込めた思いが反映された中身となっている書籍だった。また、人事系の名著を一通り読破し、参考書籍として連ねているあたりは、信のおける内容だと感じるし、著者の努力・勤勉さが伝わり、背筋が伸びる思いをした。
Posted by ブクログ
導入部分は圧巻。会社に閉塞感を感じている若手社員必見。
みんながみんな頑張っており、残業もしながら日々の生活時間の大部分を会社に費やしているものの、閉塞感が漂っている。個人のベクトルと会社のベクトルの双方が、会社の成長や個人の幸せに向いていない。だれも悪くないのに悪い方向に向かってしまっている。
Posted by ブクログ
元々トヨタ自動車の人事で働いていた著者が、日本の雇用制度における疑問を抱えたまま、その後、サイボウズに転職して、その疑問を解き明かしていくという本。この疑問がまさに普遍的な内容で、例えば、就労時間や場所の自由、年功序列に対する膠着感の打破、望まない人事異動や転勤は許して良いのか、とかだが「そうは言っても難しいだろう」というトヨタ側への共感からスタートして、読みながら「何か答えがあるのかも」という期待に変わっていく面白さがある。
サイボウズとトヨタでは会社の仕組みが違い過ぎるのだが、単に業務の仕方として参考になる部分も多い。例えば、では、トヨタとサイボウズで違ったところはどこかという点で、著者が最初に驚いたのは、とにかく「社内の情報共有が徹底されている」ことだったという。サイボウズでは、プライバシーとインサイダー、第三者に権利が帰属する情報(顧客の情報など)を除く、ほぼすべてのコミュニケーションが公開されているらしい。
ただ、そもそも社内の情報共有をサポートするソフトウェアを開発している会社なので、さもありなん、という感じではある。一方で、こうした思想を著者が言語化している「インターネット的な会社」という目標については、とても共感できる。日常生活は、インターネット的、いわゆる検索に対しインスタントに答えが得られるにもかかわらず、多くの会社は、誰が何を担当しているか、過去に何があったかという点について、属人的に人に聞かないと分からないという事も多い。会議して審議して議論してのようなアナログな手続きも多い。
ー 終身雇用とは、無限の忠誠を誓うこと
これも響いた言葉。職が安定しているかのようで、この忠誠心の強弱により、夫婦共働きの家庭は、いずれかの負担を強いる事になる。
他にも、トヨタとサイボウズ以外の事例が後半に多数紹介される。一点だけ残念な事があるとすれば、やはり、会社は一気には変えられない、という所だろうか。それでも徐々に変わっていく期待を感じる一冊ではあった。
Posted by ブクログ
著者の経験を発端に日本の人事制度について調べ、実際に積極的に働き方改革をしている企業にヒアリングした内容を体系的にまとめられています。
非常に勉強になりました。
自分の会社はどうだろう、自分の会社はどうやったら変えられるだろう、と考えさせられる本でした。
最後に著者からある企業の人事部長への提言が、その企業のカルチャーにあっているのかどうかについて、読み解けなかったので心に響かなかったのが残念です。(自分の読解力不足の可能性大)
Posted by ブクログ
本の内容は①人事の機能、役割、課題②各社の人事の新しい取り組み③サイボウズでの人事での取り組みの3つ。
特に①については、日本の歴史を通しながら今の人事制度ができた経緯や、欧米と日本の人事の違い、課題を分析していてとても興味深かった。
人事を1あつめる2きめる3はたらく4はなれると4つの機能に分けて説明しているところが、すごく分かりやすく勉強になった。作者の人事に対する熱い思いも感じられた。
Posted by ブクログ
海外と日本の文化や企業の違い、各会社の取組が紹介されてて面白かった。
「海外は学生の時に専門領域や働き方が確定する」
「日本の終身雇用=無限の忠誠」
等々、なるほどーと思うことばかり。
「自分じゃなくても仕事は回るんだなぁ」と日頃感じてる自分としては共感が多かった。解決策が情報の共有なのは、賛成なような半分反対なような。。。
Posted by ブクログ
2016年トヨタ自動車に入社して人事部に配属された筆者が、18年末に閉塞感に耐えられなくなってサイボウズに転職して書いた本。今の若い人達が何故閉塞感を感じるかを筆者なりに紐解く。曰く、多様な距離感、自立的な選択、徹底的な情報共有を認める風土がない旧来型会社では、デジタルネイティブの若い人たちは閉塞感を感じ、個人の幸せと会社の理想にギャップを感じてしまうらしい。
それに気づいた先進的会社(サイボウズやソニーやNTTデータ等のインタビュー記事)は新しい人事の仕組みを始めている。日本の会社の全てがデジタルネイティブの若者が閉塞感を感じない仕組み・風土を持った時、日本の逆襲が始まるかも。
昭和の世代は会社員は一律平等、終身雇用の安心感と職種の無限定雇用による会社への無限の忠誠が当たり前だったが、令和の若者には通じないようだ。会社への無限の忠誠心を搾取して企業は大きくなってきたが、しらけ世代が会社への忠誠心の搾取を拒み家庭を顧みるようになってから日本企業は衰退した。デジタル世代は家庭どころか個人を守るので、企業は従業員の会社に対する付加価値の搾取がますます難しくなってきている。デジタルツールを駆使した新たな搾取方法を考えついた企業が勝つ?
コミュニケーション方策の先頭を走るサイボウズやコンカー社がどこまで伸びるかが楽しみである。自由な選択肢は情報過多で迷うことになり、多様性のある人々との仕事は面倒くさい。多様性を認める会社での従業員育成はマネージャーの仕事なのか?我儘部下の相手で潰れるマネージャーが続出しないか心配である。
未来の会社は、マネージャーはプロジェクト推進に特化して、社内教育はOJTではなく会社の教育組織が行うようになるのではないか?情報ツールだけではわからない職場固有のOJTに相当する部分は、定年後再雇用のおじさんがするのもありなのでは?
Posted by ブクログ
できすぎた手紙、著者、という感じだが、日本の大手企業の状況、若手が感じる閉塞感を歴史から分かりやすく紐解いてくれていた。サイボウズの社内システムかすごい。情報共有がキーとなるというのはよく思う
Posted by ブクログ
日本企業における人材育成の仕組みは、無限の忠誠と、終身の保障が大前提!それが閉塞感の正体でもあり、「社員の幸せと会社の理想実現を両立」させる仕組みだった!
年功序列で昇給する仕組みは、高度成長期であれば問題ないが、会社の成長が止まってしまうと話は別になる。
日本は職能給!海外は職務給!
Posted by ブクログ
1.
まず、この本に書かれているような日本の労務課題について、どの大学の何学部で学べるのだろう、と考えました。
著者同様、ほとんどの人事社員は、まっさらなまま入社し、(希望でもないのに?)人事部門に配属され、会社の中で人事社員として育成される。
提言のように、会社の入口である採用段階からスキルとジョブをマッチングさせようと思ったら、この本がまとめてくれているような課題は、外部で学んでから入社する、という状態が、今後目指すカタチ、となるように思う。
この本に書かれていることは、トヨタの課題ではなく、サイボウズの課題でもなく、どこにも共通してそうな課題だもの。(特定の企業の問題ではなく、共通課題と認識しているからこそ、この本が書かれたのだと思う。)
そう考えると、大学等入社前教育機関で、人事課題に限らず、企業内の課題をもっと取扱う方向?と思う。
2.
社会がインターネット化してるように、会社もインターネット化してくれたら働き易い、という提言について
なるほど、そうかもねー。
ただ、会社のインターネット化を進めるためには、もっと受信側の心得というか、マナー形成が必要かな、と思う。
情報は、絶対、ただ(無償)じゃない。
だからこそ、発信に対する(プライスレスの)敬意、受信者への(プライスレスの)信頼、なくては成り立たないと思う。
(有償にする、という方向は、私はチガウと思うので)
発信者と受信者双方の思いが噛み合ったときのインターネット世界は、ほんとに素晴らしいだろうと思う。
もっと仕事がやりやすくなっているだろう、と思う。
Posted by ブクログ
日本に漂う閉塞感について、日本企業の「そもそもの成り立ち」から紐解き、さまざまな企業の多様な制度についてヒアリングしつつ、未来の策を考える書。そもそも「一律平等」がなぜ発達したのかなどの解説もわかりやすい。国と企業が相互に関連し合っている、仕組みも含めて関連を考慮した施策が必要なのだとわかった。何とかならないものだろうか…そのための第一歩を踏み出している企業がたくさんあるのは心強いが、これをさらなるムーブメントにしていく必要があると感じる。
Posted by ブクログ
「閉塞感のない会社をつくりたい」
トヨタ自動車を3年で辞めてサイボウズに転職した著者。閉塞感=「1人の人間として重視されている感覚の薄さ」と「1人ではなにも変えられない無力感」を感じたという。
トヨタを辞める際に先輩から投げかけられた問い(※)に対して、日本の会社のしくみの歴史を学んだ上で考察しているのはわかりやすい。
(※)1.なぜ会社の平等は重んじられてきたか?
2.なぜ会社の成長が続いてきたか?
3.なぜ会社の変革は難しいのか?
特に1が、欧米と日本の違いから論じられてるのは目から鱗。日本は企業別なのに対して、欧米は職種別あるいは産業別の労働組合。故に平等であるべき軸が異なる(欧米は職務の平等、日本は会社の平等)。戦後の労使紛争を通して「会社の平等」は階級の天井を打ち壊し、「青空の見える労務管理」として完成する。
「無限の忠誠」と「終身の保障」が会社の成長を後押ししてきた。それを前提としたフルコミット・ヒエラルキー・クローズドな多くの日本企業の風土。
その風土から生まれた「企業封鎖性」と「ワークライフバランスの欠如」の問題。
この問題を解決するヒントを探るため、会社のしくみ改革にチャレンジしている12社にヒアリングしている点は、現地現物重視で好感。中でも、ユニリーバのWAA(働く場所と時間を選択できる制度)が印象に残った。夢見たいな働き方だけど、成立させるためにはマネジャーとメンバーの信頼関係が必要不可欠なんだろうな。
社会は「インターネット的」になっているのに、日本の会社はそうなっていない、という著者の主張。
会社が「インターネット的」になるには、デジタルネイティブなZ世代が、会社や政界で主軸として活躍する時代にならないと、難しいんじゃないかな。
Posted by ブクログ
トヨタ(大手製造)とサイボウズ(先進IT)という全く異なる企業で人事経験を積んだ著者が日本の労働史を紐解きながら、現代日本の人事慣行・制度の問題点を詳らかにし、新たな働き方の提言を行う書籍。
意識の高い筆運びから、好き嫌いはわかれそうだが、人事に携わる人間であれば教養として知っておきたい内容が多く、一読の価値はあった。
Posted by ブクログ
5章の事例紹介以降はビジネス書アレルギーが発動。読んでて鼻水が止まらなくなったので飛ばし読み。
トヨタ自動車で3年、サイボウズで3年人事の仕事を経験した著者がトヨタ自動車の人事部長宛てに手紙を書くというスタイル。ジョブ型礼賛本かと思いきやもう一歩踏み込んで歴史や教育からなる社会構造まで考察している。
昼は上司も部下も会社にフルコミット、夜は上司も部下も居酒屋で会社の悪口を言うような毎日がそれなりに楽しい。愛社精神が無く、楽してテキトーに生きていきたい自分のような社会人にはメンバーシップ型雇用が居心地良いので著者の熱い想いが眩しい。
Posted by ブクログ
日系企業に勤めてて、社風や慣習にもやもやしてる人におすすめ。
ただ結構ボリュームがあるので、経営や人事系の仕事をしていている人には読み応えあるかも。興味がないと途中で挫折しそう。
日本企業の閉塞感を感じさせる要素や人事制度は、紐解いてみれば当時の人が幸せになるためのものだった。
今の制度が出来上がった歴史背景や、他国との比較点などが分かりやすい。
何より、社内で違和感を感じた若手社員が、閉塞感に立ち向かおうとこれだけの調査をし、外部インタビューも行い、提言したという“働く姿勢”が素晴らしい。