【感想・ネタバレ】フェイク ~ウソ、ニセに惑わされる人たちへ~(小学館新書)のレビュー

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Posted by ブクログ

■高学歴であったり有名な企業に勤めていたり役職についていると聞くと、よく知らない人でも信用してしまうということがある。これは「ハロー効果」と言われるもの。人は物事を判断するときに、見た目や肩書など、一つ目立ったよい特徴を持っていると、その人全体の評価に大きな影響を与えてしまうという心理。「ハロー(Halo)」とは、聖母マリア像やキリスト像などの後ろに描かれたりしている光の輪のこと。日本語では光背効果とも呼ばれる。
■自分に都合のよい方向に事実を歪めて認知することを「認知バイアス」という。ユーモア度を測るテストで成績が下位だった4分の1の人達に「自分の成績はどのレベルだったと思うか」と質問したところ、殆どの人が「平均以上である」と答えた。つまり「能力が低い人ほど自分のことを過大評価する傾向がある」ということが明らかとなった。この実験が示唆しているのは、「人は自分のことを正確には認知していない」ということであり、逆に言うと、自分のことを正しく認知しようとすると生きづらさを感じてしまうため、脳が適応し認知バイアスを起こして生きづらさを少しでも解消しようとしているとも考えらえる。
■妥協も必要なフェイク
 組織や集団の中で、違う戦略を持っている個体同士が上手に共存していくには妥協が必要となり、それを導く虚構が必要である。自分にとって首尾一貫している状態は嘘がなく正しい状態であると思う。しかし、双方がそこに固執していては、互いの線が交わることはない。
■人は褒められたり期待されたりすると、その期待に応えるために頑張りたいという気持ちになる。この「相手の期待に応えたい」という気持ちから生み出され行動が変わり、良い結果を生み出す現象を「ホーソン効果」という。
■「頭がいいね」と褒められた子供は委縮してしまい挑戦する意欲を失い、さらには失敗を隠そうと嘘をつく傾向が高くなる。
■たとえ嘘でも「効果がある」「役に立つ」と思い込むバイアスは精神だけでなく肉体にも良い方向に働く場合がある。まさに嘘の効用の最たるものと言えるのが「プラシーボ効果=偽薬効果」である。
■悪質な嘘であれば、それは棄却してもよい。しかし嘘だからと言って、思考停止してすべて棄却するよりも是々非々の立場で見ていくという姿勢が重要。それがリテラシー。
■参加者が周囲の多数意見を判断材料にしてしまう心理現象を「バンドワゴン効果」という。同調圧力によって集団の中で冷静な判断力を失わせ、(集団を)興奮状態にし、みんなが買うなら私もという意識を煽るもの。

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2022年08月04日

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ネタバレ

ウソをつくほうもつかれるほうも、知性が大事。
脳を楽なほうへ流さない事。
処理流暢性が低い情報に触れる事。

第二次世界大戦下で、イギリスはドイツに先駆けてレーダーを用いて暗闇でもドイツ軍機を捉えることに成功した。
しかしレーダーの存在がバレないよう、イギリス空軍がニンジンを食べて視力を上げている、とウソの情報を発信し、その後ブルーベリーが視力回復に効果的という風説が広まったというエピソードが面白かった。

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2023年09月22日

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嘘自体が悪いわけではない。ばか正直が相手のためにならないこともあれば、嘘が自分を鼓舞したり、相手のためになることもある。問題となるのは悪意のある嘘だ。古今東西の例をあげ、嘘との上手なつきあい方が紹介されている。著名人の言動を生物学的な観点から取り上げているのも面白いし、例の多様さから、著者の知識の広さが伝わってきて知的好奇心が刺激された。

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2022年11月12日

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フェイクニュース、マルチ商法、振り込め詐欺など、日常の嘘やニセモノに騙されないテクニックについて脳科学的に考察された一冊。人は何のために嘘をつくのかと、なぜ騙されるのか?といった根本的なことから詐欺師やSF商法、SNSのフェイクなど、悪意のある嘘についても鋭く分析される。ウソと本当の境界線は非常に微妙であり、良いウソと悪意のあるウソを見抜く力、いわゆる自分を客観的に見る「メタ認知」の能力を高めることが最も大事。ウソやニセに振り回されずに生き抜く技術を知りたい人にオススメの一冊。

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2022年06月24日

Posted by ブクログ

「脳は、酸素の消費量が人間の臓器で最も多い」ので「基本的にあまり働かないように、つまり思考しないようにして脳の活動を効率化し、酸素の消費を抑えようと」するとのこと。だから人からの命令に従うとか、多数派に流されるのが楽に感じられるのだ、と納得した。逆に、自分で考えて行動するのにはエネルギーが必要だ。
人間が共同体を形成してうまく折り合っていくには、ある程度のウソ(フェイク)も必要。しかしお互いに傷つかないためにも、一人一人が自分で考えて行動するということが大事なのだと思った。

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2023年11月17日

Posted by ブクログ

中野信子の別の本にも記載されている上ら心理学の基本的な知識が多いために、既視感がある内容。それでも繰り返し読んでも為になる。

最近、文藝春秋の動画で東浩紀や成田悠輔、先崎彰容らとの対話を見たが、中野信子の話の切り口がとりわけ興味深かった。イデオロギーや外交問題を行動科学、脳科学まで掘り下げて説明するから、他者の統計的な社会現象論や因果論の語り口に一線を画していたように見えたからだ。

本著はそうした基本的な内容において、人間社会の関係性に蔓延るウソについて、その役割に迫る。ウソが生存に不要ならば、嘘つきは絶滅していた筈。社会にウソが蔓延するのは、それが関係構築と種の存続に必要だったからだ。

ウソは基本的に自己欲求の充足の手段。事実との乖離を戦略的に用いる事による保身、承認、獲得、支配、歓心、妄想。その結果、対象がウソによって被害を被る場合とそうでは無い場合があるが、前者は詐欺、後者は方便という。仮説や想像が虚構ならば、我々は先にウソを描き、共有する事で現実に塗り替えているとも言える。そのトランスファーが他者との関係性において、何かしらの損得を齎す事になる。結果それは、自己充足なのか、共に満たされる虚構なのか。詐欺かお世辞か、とも言えるだろうか。ウソ=悪という二元論が如何に幼いことか、改めて感じる話であった。

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2023年01月13日

Posted by ブクログ

思っていた内容とは少し違ったけれどフェイク(嘘)というものが社会でどのような位置づけなのか、どのような役割を担ってきたのかなどがうっすら分かりました。
基本的には当然に思えるようなことばかり述べられているので退屈ですが最後の7章の「ウソとどう付き合い生きていくのか」は興味深く読めました。
・嘘に騙されにくくなるにはメタ認知能力が必要
・脳は処理流暢性の高い(簡単に理解できる)情報を好む
・子供の嘘を強引に暴いて罰してももっと上手な嘘をつくためのトレーニングになってしまう

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2022年11月07日

Posted by ブクログ

テレビ番組でよくお見かけする中野先生。
著作を読むのは初めてだったが……正直あまり面白くはなかった。
アタマの良さはお墨付き(MENSA会員ですのものね)だが、やはり「面白く」読ませるのは、それとは別の才能なのかなと。
たぶん著者的には、新書だし「フツーの」人向けに精一杯わかりやすく書いたつもりなんだろうけど……。
テレビでコメントしたり、対談形式のものの方が、中野先生の良さがより伝わるのではないかなぁ、とおこがましくも思ってしまいました。

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2022年10月10日

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