あらすじ
高原の保養施設「風神館」に集まった十人の男女。彼らの目的は、自分たちを不幸に陥れた企業の幹部三名に、死を以って償わせること。計画どおり一人目を殺害したあとに、彼らが目にしたのは、仲間の一人の変わり果てた姿だった。誰かが裏切ったのか!? 仲間の死を警察に通報すれば、復讐計画が頓挫してしまう。外部との連絡が遮断された館で、皆が疑心暗鬼にかられる中、さらに仲間が殺されて……。猜疑と信頼が交錯する密室ミステリの秀作。『崖の上で踊る』を改題。
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Posted by ブクログ
敵味方の概念がコロコロ変わり、敵と認識する理由が人それぞれでそれによりすぐに復讐者に変わる恐怖。最後はターゲットを殺すかどうかも悩んでいる。それは殺した後絶対的な味方が敵に変わるかもしれないから。今までにない館シリーズだった
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館×クローズドサークルという王道の設定でありつつ、復讐殺人の途中で次々に仲間が殺されていき、その犯人は仲間の誰かでなければあり得ないという『そして誰もいなくなった』のようなサスペンスの要素もあり、最後までどんな結末になるのかドキドキしながら読み終えた。賛否両論あるかもしれないが、『復讐』を逆手に取った犯人当てと動機がこの作品の持ち味だとも思った。
Posted by ブクログ
碓氷優佳シリーズの石持さんの新作。
復讐という目的で繋がっていた男女10人が仲間の死(しかも殺人)という出来事からその繋がりが崩壊していくという物語。
今回もやっぱり面白かった!
石持作品の特徴として、クローズドサークルの中での連続殺人でトリックなどのたぐいを殆ど出さずにその人の言動からロジックを積み重ねて真相に辿り着くので、その分ワイダニットに集中できるというものがある。今回もトリックという物はあまり使われず発言などから矛盾を見つけていくというスタイルであるため、非常にスッキリとまとまっている作品だと思いました。
復讐という一種の異常心理な状態だと、集団でやるとこんなにも簡単に崩壊してしまうのだなと感じた。実は素性を隠している人がいたり、ある人の印象が人によって違っていたりなど、その人の持つ秘密によってそのチームワークがドミノのように崩壊していく所がとてもリアルで恐ろしかった。
そしてラストのどうなるのかわからない感じが石持さんらしいなぁと、復讐が達成されたかどうか想像になる所が引きとして素晴らしかったです。これがあるから石持作品は辞められない。次も読みます。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
高原絵麻:古賀葵
雨森勇大:下野紘
江角孝人:三木眞一郎
諏訪沙月:ファイルーズあい
花田千里:戸松遥
菊野時夫:畠中祐
奥本瞳:水樹奈々
吉崎修平:杉田智和
福王亜佳音:石見舞菜香
一橋創太:細谷佳正
笛木雅也:三宅健太
Posted by ブクログ
爆発的ヒットになった家庭用風力発電機が低周波ノイズが出て偏頭痛で悩まされたり、自殺者まででた世界。企業は罪を認めないので、被害者遺族など10名が、企業の開発者や幹部を暗殺する計画を立てる。
物語冒頭で速攻開発者が死んでるところからスタート。その館の中で10名が1人づつ死んでいく、連続殺人が発生する。
1人目は開発者だったので、仲間に思えず殺した女。暗殺を成功させるために、開発者はそもそも会社側だから死んで当然という主張をするメンバーもでた。別の女はこっそりその開発者と付き合っており、その主張をするメンバーと開発者を殺した殺人犯を殺す。
Posted by ブクログ
〇 総合評価 ★★★☆☆
〇 サプライズ ★☆☆☆☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★☆☆☆☆
〇 キャラクター★★☆☆☆
〇 読後感 ★★☆☆☆
いわゆる「そして誰もいなくなった」タイプのミステリだが、その設定は特殊。フウジンブレードという企業の経営者達3人を、「復讐」として殺害するために集まった10人の男女。1人目の復讐を終えたその後、復讐者の中で連続殺人が発生する。
「そして誰もいなくなった」タイプのミステリであり、サスペンス感は秀逸。復讐者という立場では味方だが、その中に殺人者が紛れ込んでいる。それを解き明かしていく。
10人の中で、殺害されたのは「フウジンブレード」の元社員だった一橋創太。この復讐は、一橋の協力なしでは成しえなかった。しかし、今回の復讐の原因となった高効率風力発電機「フウジンWP1」を実際に作った一橋創太を許せない。そう考えた諏訪沙月が一橋を殺害した。
一橋の後、吉崎と菊野が殺害される。続いて奥山瞳(西山瞳)が殺害される。そして、誰もいなくなったタイプのミステリであるが、登場人物の中で、細かな手掛かりから、論理的な推理が進められる。
誰なら殺せると思ったか。部屋割りと隣の部屋に音漏れがある危険性から、諏訪沙月は、犯人を江角と推理する。その推理を聞き、亜佳音が、吉崎の「復讐」のために江角を殺害する。亜佳里は拘束される。
しかし、江角は煙草を吸う。江角が煙草の匂いを気にしていたとすると、犯行には及ばないのではないか。ここから、雨森が推理を進める。
一橋殺害の容疑者は?一橋を恨むのは、企業としてのフウジンブレードを恨んでいる復讐者ではなく、フウジンWP1の被害者であるはず。フウジンWP1の被害者は、雨森、江角、絵麻、沙月の4人。そして、一橋の死体が発見された後、「犯人捜しの必要はない。」との吉崎の提案に反対したのは、雨森と絵麻。さらに、次の死体が見つかった後、容疑者の中から、一橋殺しを再度洗い直す必要があると主張した江角は犯人でない。こういった、地道な推理、論理展開から、一橋殺害の犯人は沙月だと推理する。
一橋以外の3人はどうか。殺害された4人は犯人ではなく、容疑者は雨森、絵角、絵麻、沙月、千里、亜佳里の6人。亜佳里に殺害された江角は煙草の推理から除外。江角を殺害し、拘束されている亜佳里は、吉崎と一緒にいたというアリバイがあるし、その際に他の2人も殺害した方がよいという理由もあって、犯人とは思い難い。
残る4人の中から、沙月と絵麻は、一緒に酒を飲んでいたという理由で消去。雨森は、自らの推理と行動で、裏切り者に仕立てあげた方が自分にとって得となる瞳について裏切り者でないことを証明したことにより、消去法により千里が残る。一橋の死体が見つかったとき、「創太」と口走った千里は、一橋と付き合っていた。3人の殺害は、殺害された一橋の復讐として殺害していた。
復讐、復讐。このミステリは、復讐に支配されている。復讐者は何でも敵と味方に分けたがる。千里は、沙月を殺害
最後に残った、雨森、絵麻、千里の3人は、二手に分かれて最後の復讐に向かう。雨森と絵麻にとって、千里は他の仲間の仇、敵になり得る。そして、最後の復讐に向かうシーンで終わる。
一橋殺害の犯人が沙月であること、一橋殺害の復讐として連続殺人を行った千里はやや論理的には弱いが消去法による推理で解き明かしている。この点は論理的とも言え、この推理合戦が一つの魅力でもある。とは言え、意外性は弱く、亜佳里が江角を殺害する場面等、ご都合主義的展開もある。
全体を通じ、石持浅海らしい、地味ながら読み応えがあるミステリだが、風神館という館である意味も薄く、本格ミステリ感は薄い。
★3程度、55点
● 風神館の殺人(メモ)
「裏切り者は誰なのか、そしてその目的は?互いを信じ、疑え。」
前代未聞の「復讐計画」と殺人鬼探しの同時進行。惨劇の幕がいま開く。
● 登場人物
・笛木雅也
フウジンブレード開発部長
・中道武史
フウジンブレード代表取締役社長
・西山和則
フウジンブレード取締役専務
・一橋創太
復讐者。フウジンブレード元社員
・高原絵麻
復讐者。フウジンWP1の被害者
・雨森勇太
復讐者。フウジンWP1の被害者
・江角孝人
復讐者。フウジンWP1の被害者
・諏訪沙月
復讐者。フウジンWP1の被害者
・花田千里
復讐者。フウジンブレード社員の弟が自殺
・菊野時夫
復讐者。父親の会社がフウジンブレードにより倒産
・奥本瞳(西山瞳)
復讐者。夫がフウジンブレードにより殺される、といっていたが実際は夫である西山を殺害したがっていた。
・吉崎修平
復讐者。消費者団体主宰
・福王亜佳音
復讐者。消費者団体メンバー
一橋創太 フウジンブレード元社員
● メモ
新規のベンチャー企業、フウジンブレードは、家庭用の高効率風力発電機、「フウジンWP1」を開発、販売。この製品はヒットするが、一方で、低周波音が周辺住民に被害を与えるおそれがあるという噂が流れた。
「風神館の殺人」は、この「フウジンブレード」に恨みを持つ8人が、社会正義を掲げる怪しげな消費者団体のメンバー2人と、フウジンブレードの経営者ら3人への復讐を計画する…という話である。
その復讐は、「風神館」というフウジンブレードの保養施設で実行される。
最初の1人、笛木雅也の殺害には成功するものの、その後、次の殺人の計画を進める前に、風神館というクローズドサークルの中で、復讐者10人の中で、連続殺人が発生する。すなわち、「そして誰もいなくなった」タイプの作品である。
復讐者となっている10人は、3つのカテゴリに分けられる。まず、フウジンWP1という製品の被害者である4人、高原絵麻は、隣家に設置されたフウジンWP1の低周波音により片頭痛となって、その特殊な能力を失い、香水の調剤師になる夢を絶たれた。
江角孝人は、受験生の息子がノイローゼとなり自殺、諏訪沙月は流産をし、家庭が崩壊した。雨森は、フウジンWP1の被害者である恋人を、駅のホームで通行人に押され、転落し、列車に轢かれるという事故で失った。
続いて、フウジンブレードという企業に恨みをもつ4人。花田千里は、フウジンブレードに努めていた弟が、過労のため自殺した。菊野時夫は、フウジンWP1の開発に協力した父の会社が倒産、奥本瞳は、素材メーカーの営業マンだった夫が、顧客のフウジンブレードの無茶な要求に耐えかねて失業。一橋創太は、フウジンWP1を開発した社員だったが、低周波音の健康被害の可能性に気付き、発売延期を進言するも、閑職に追いやられ、退職した。
最後の2人、吉崎修平と福王亜佳音は企業の横暴から社会を守るために戦うという消費者団体を主宰している。過激な活動をする環境保護団体のような存在であり、これまでも殺人をしていた。2人は社会正義のために殺人をすると性的に興奮するという同じ性癖を持っており、恋人同士でもあった。
元フウジンブレード社員の一橋の力も借り、笛木殺害に成功する。
スケジュールの関係で、中道と西山を殺害できるのは、翌々日。今日と明日は、風神館で過ごす必要がある。そんな中で、一橋の死体が発見される。
一橋を殺害できたのは、風神館にいる9人の内の誰か。犯人捜しをするのか。復讐は継続するのか。問題はあったが、復讐は継続することに決める。誰が、なぜ一橋を殺害したのか。9人は議論をする。その結果、吉崎は、一橋もフウジンブレード側の人間と考えた人物が殺害したと考え、そうであれば復讐の一環であり、中道、西山の殺害の妨害はしないはずであると主張。この考えに多くの者が賛成し、犯人捜しはペンディングとして、復讐を継続することになった。
吉崎と菊野の死により状況が変わるが、復讐は続ける。しかし、犯人を見つけないと、復讐が妨害される可能性がある。復讐を継続するには、結構までに犯人を見つける必要がある。
…ここで、奥村瞳の独白で、奥村瞳は、復讐の対象者であるフウジンブレードの専務、西村の妻であることが分かる。他社からフウジンブレードに移り、出世をして家庭を顧みなくなった夫。その夫を殺害するため…と偽り、復讐に参加していた。しかし、今、偽っていたことがばれるとフウジンブレード側のスパイとされ、殺人者とみなされるかもしれない。そんな中、瞳の正体を知っているという謎のメッセージがドアの隙間に挟まれ、菊野の部屋に呼び出される。
その後、瞳の死体が発見され、運転免許証から、フウジンブレードの専務である西山の妻であることが分かる。瞳がフウジンブレード側のスパイで、夫のライバルになり得る笛木の殺害までは協力し、その後の復讐を妨害するために殺人を行っていて、返り討ちにあった。そういうシナリオのように思われたが、雨森は、瞳が殺人犯であり、返り討ちにあったのであれば、狙われた人物は騒ぐはずであると指摘。そのような騒ぎがない以上、瞳は被害者であり、真犯人は別にいると推理する。
ここで諏訪沙月は、菊野、吉崎の部屋が江角の部屋の隣であるという間取りから、江角に物音が聞かれることを恐れず殺人ができた人物は…つまり、江角が犯人ではないかとの推理を披露する。瞳も菊野の部屋で殺害されているのも、この推理を裏付ける。
一定の説得力があるこの推理を聞き、福王は、吉崎の復讐のため江角を殺害する。福王は殺害を止めようとする雨森をも敵とみなし、殺害しようとするが押さえられ、テーブルで後頭部を打つ。即死とはならないが、その後、死亡。
しかし、この後で、雨森は、江角はタバコを吸い、タバコのにおいがすることを理由に、江角の犯行を否定。真相を推理する。雨森の推理によると、一橋はやはり復讐の一環として殺害されていた。吉崎を殺害したのは諏訪。諏訪はフウジンWP1という欠陥品を開発した一橋も復讐相手と考え、殺害した。ここで論理的な推理が示される。一橋をフウジンWP1の開発者として復讐相手と考える必要があるのは、フウジンブレードという企業に恨みを持つ4人ではなく、フウジンWP1という製品の被害者である雨森、高原、江角、諏訪の4人。このうち、雨森と高原は、吉崎が、「一橋殺害の犯人捜しはやめよう。」という、犯人にとって魅力的な提案に反対していたから犯人ではないと推理。江角も、吉崎、菊野の死体が発見された際は、一橋殺害も洗い直す必要があると主張したが、諏訪は沈黙していた。よって犯人は諏訪と推理。また、吉崎、菊野、瞳の3人は、一橋殺害の復讐として花田千里が殺害したと推理。花田は一橋と付き合っていた。一橋の死体が見つかったとき、花田は、「…創太」と下の名前を呼び捨てで言っていたことも決め手となった。
一橋殺害の犯人は諏訪、吉崎、菊野、瞳殺害の犯人は花田。その後、花田は、一橋の復讐として諏訪を殺害。残った雨森、高原、花田の3人で復讐を継続する。雨森と高原は中道殺害に、花田は西山殺害に向かう。
雨森と高原は、少なくとも中道と西山を殺害するまでは花田は味方とみなしている。一橋に関する立ち位置でも味方。しかし、吉崎、菊野、瞳に関する立ち位置では敵。雨森は、復讐が終わった後、花田を敵か味方か考え、敵と考えれば…証拠隠滅のために風神館に火を放つ。雨森と高原は、例えば、江角と諏訪が中道を殺害し、風神館に戻って花田に始末される。そういうストーリーを描き、雨森と高原は生き延びる。そういう道はないかと考えている。
中道殺害に向かいながら、雨森と高原は、たった一人の絶対的な味方として、「大丈夫。成功するよ。」というセリフを言い、物語は終わる。
Posted by ブクログ
フウジンブレードという会社が販売した家庭用小型風力発電機をめぐって被害を被った人たちが、会社上層部の人への復讐殺人のために集まった。
ところが、その仲間が次々と殺害されていく…。
という、心理的クローズドサークル(既に冒頭で開発者をひとり殺害しており、その先も復讐殺人を遂行するだに、仲間が死んでも警察や救急に通報することもできない)で起こる殺人ミステリー。
初めて読む作家さんだったけど、文章の表現が独特なところがあって、読んでて「ん?」とひっかかった。
特に、後頭部にアイスピックやナイフが刺さった状態の死体の描写がね。
「後頭部から木製の柄が生えていた」。
生えていたって…後頭部に刺さっていたではいけないのでしょうか…笑。
この表現3連続がツボで、思わず子どもにも「これ見てよ」と教えてしまった。
仲間の中に犯人がいる、犯人の目的は何なのか?という心理的サスペンス要素は薄めかな。
探偵役でもある雨森という男性は、あくまでも会社経営陣の殺人という目的を達成するために犯人をも利用しようという冷静さ。
犯人探しも「あの人があのときこう言ったから」という消去法的の口頭推理なのも、ミステリーとしてのドキドキ感が足りなく感じたなぁ。
映像化すればそれなりに良い感じになりそうだけど、小説として読んでいると誰がどんな言葉を述べたか?ということはあまり気にせず流し読みしてしまうんだよ。
特に、登場人物の個性が薄くて、雨森くんはよく覚えていたもんだな。
復讐とは、何に対する復讐なのか?誰に対する復讐なのか?敵と仲間は表裏一体。
そういうテーマは面白いと思った。
んー、最後の先はどうなったんだろう。
無事復讐を終えて、予定通り犯人に全ての責任を着せることができたのか?