【感想・ネタバレ】すらすら読めるイエス伝のレビュー

あらすじ

生誕・闘争・裁判・十字架・復活など、イエスの生涯の重要なポイントをやさしく解説。キリスト教とは何か――。イエス・キリストの物語はよく知られています。『聖書』に関する評論などで著名な山本七平も「イエス伝」の執筆が望まれていましたが、生前に刊行することはかないませんでした。本書は、七平が雑誌・小冊子などに書き残したものの中から「生誕」「登場」「闘争」「最後の晩餐(ばんさん)」「裁判」「十字架」「復活」など、イエスの生涯で重要なポイントをまとめています。大部分はキリスト教系学校の父母向きに書かれているために、七平はやさしい解説を試みています。

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Posted by ブクログ

 よい意味で「看板に偽りあり」。すらすら読める、どころではない、一個の研究書として読める。
 冤罪を回避するためにユダヤの律法が設けた二重三重のフェイルセーフはこんにちの裁判制度に比肩、いや、ある意味 上だろう。選ばれし民、と自負するのもむべなるかな。
 驚いたのが、二次大戦中にドイツの収容所で十字架への磔刑を人体実験したという記事。
 これまで漠然と、イエスは出血多量で死んだものと思っていた。大間違い。まさか酸欠死だったとは。
 救世主を美化し、讃えるべき福音書でも、明らかにイエスが処刑を怖れている様子がうかがえる。後で復活すると確信があったところで、あれは怖いだろう。
 信仰の無い私だが、イエスへの敬服の念は禁じ得ない。

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2020年05月22日

Posted by ブクログ

まとまった「イエス伝」ではなく、著者の山本七平がこれまでイエスについて書いた文章を、彼の死後に夫人がまとめた本です。

サタンについて著者は、『旧約聖書』ではサタンは神に敵対する存在ではなく、神に従属し、人間の悪を神に報告する存在としてえがかれていると述べています。そのうえで、このサタン像を、ラインホルト・ニーバーの「われわれが遠慮なく真理を語っているときは、相手に憎しみをもっている時か、全然人間的な愛情をもっていない時だ」ということばに関係づけています。つまり「人が義を口にするとき、正義の側に立って告発するとき、それがじつは憎悪であって「愛」ではないという恐るべき事実」を教えているとしています。

またイエスの復活については、熱心党の指導者だったベン・ヤイールを引き合いに出して論じています。ヤイールは、自分たちの死が神の意向ならば、それをそのまま受け取ろうといいます。しかしここには「わが神、わが神、なんぞ我を見捨て賜いし」と述べたイエスの精神はないと著者はいい、ヤイール信じたのは、神の意志ではなく、むしろ彼自身の意志ではなかったかと問いかけています。これに対してイエスの復活を信じたパウロは、主の復活を信じ、死の勝利を信じたヤイールとは異なっていたと著者は主張しています。

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2019年09月01日

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