あらすじ
蘭方医と妖狐が大奥の怪異に挑む!
武家の蘭方医・武居多聞が出会った不思議な薬売り。その正体は、九尾の狐の九本目の尾……千年を生きる妖狐であった。かつて愛し、そして同胞に殺された人間の娘のために、長い時をずっと妖怪を狩りつづけながら生きているという妖狐――青から、あやかしを斬ることができる銀の小太刀を預かった多聞は、ともに江戸を騒がせる事件にかかわっていくことに。そして、事件の裏に隠された“綾”を追うなかで、多聞は人の心の闇の深さを知っていく。
ある日、以前解決した事件で知り合った歌舞伎役者の鹿の輔が、多聞の診療所にやってきた。鹿の輔と繋がりのある大奥の中年寄を紹介され、大奥で自害した女の幽霊が祟りを起こし、被害を受けた者が続出しているという話を聞く多聞。中年寄の依頼を受けた多聞は、事態を調べるために青の幻術を使って大奥に潜入することになるが――!?
人の恨みや悲しみが生みだすあやかし事件と、妖狐が抱く千年の想い。綾解き和風ファンタジー、第二弾!
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Posted by ブクログ
多聞と青、厚仁の三人がわいわい言い合っている光景は微笑ましいし安心できる。
一方で安心できない事件が。
特に大奥のいじめの事件怖すぎる。
いつの時代も女性たちのいじめは陰湿なのは共通しているのかもしれない。
おまきの事件も、母子の愛を思うと哀しい。
犯人については「おまえかい!」と突っ込んでしまったが。
ぽっと出に近かったので(存在は分かっていたけど、それまで重要視されていなかったキャラだったから)
哀しいと言えば、最後の話も。
青と同じ「尾」が出てくるが、彼の二律背反な想いが哀しくて。
青を見守ろうとする想いも、大切な「尾」を殺されて憎む想いも、どちらも彼の中にはあって。
静かに生きたいとする願いも、青を殺そうとした意志も、どちらも本当だったのではないかなと。
弱弱しい態度や願いは、多聞をだますための方便だったのかもしれない。
狐だけに。
でも、それだけじゃない。
ちゃんとそこには本音もあったと信じたい。
そして、本音があったからこそ、もしかして彼は青に殺されたかったのかもしれないなとも思った。
じゃないと、もっと抗った気がするのだ。
深読みすればするほど、何とも心苦しくなる展開だった。
狐は化かすから、果たしてどこまで本心だったのか……難しい存在である。