【感想・ネタバレ】自衛隊海外派遣 隠された「戦地」の現実のレビュー

あらすじ

自衛隊の海外派遣について定めた国際平和協力法(PKO法)が1992年に制定・施行されてから、2022年でちょうど30年が経つ。
この間、日本は40を超える海外任務に合計6万人以上の自衛隊員たちを派遣してきた。
しかしその活動の実態や危険さに関しては、十分な情報が公開されてきたとは言いがたい。
むしろ、政府は意図的な嘘や隠蔽を繰り返してきたのである。

本書は徹底した調査により今までの自衛隊海外派遣の「リアル」を総検証し、これまでの問題点を整理する。
そして今後の海外派遣のあり方をも提案した、渾身の一冊である。
内部文書や自衛官たちの証言から浮かび上がってきたのは、自衛隊は何度も銃弾が飛び交う「戦場」へと送り込まれ、死を覚悟してきたという衝撃の事実だった。
この国が隠してきた“不都合な真実”を暴き出した、驚きの告発!

《推薦》
国家にとって不都合な情報は隠され、国民には知らされない。
ウクライナの戦場で初めて真実を知った若いロシア兵の「悲劇」は、決して対岸の火事ではない。
――望月衣塑子氏(新聞記者)

憲法9条を、命を賭けて守ってきたのは、“戦場”に送られた自衛官である。
――伊勢崎賢治氏(東京外国語大学教授)

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Posted by ブクログ

 南スーダンPKO時の日報隠蔽問題を明らかにしたジャーナリストによる新著。カンボジアから始まる30年間の自衛隊PKO活動を振り返り、日本政府の「二枚舌」=国内向けの法解釈とPKOの現実が乖離しているさまを明らかにする。
 個人的な関心からすると、PKOに対する考え方が国連内部でも大きく変化してきたにもかかわらず、日本政府の法解釈・法の建て付けが基本的に変わっておらず、そのことが矛盾をより深刻にさせているという議論が興味深かった。これは一方で、ポスト冷戦期の自衛隊が「国際平和」のエージェントとして活動できるのではないか、という期待を担っていたこと、にもかかわらずそうしたあり方は実現せず、紛争当事者に対する中立性が担保された場面が存在しなかった、ということでもある。

 当然ながら、国連の戦争と平和にかかわるミッションも、1990年代以降の歴史的展開を踏まえて考える必要がある。当時の言説を振り返るうえでは、このような環境の変化も忘れるべきではないだろう。言い換えれば、「国際貢献」としての自衛隊派遣というスキーム自体がすぐれて歴史的だった、特定の時代の刻印を帯びたものとしてあったのだ。

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2024年09月22日

Posted by ブクログ

自衛隊の海外派遣について、とてもわかりやすく書かれていた。地道な資料請求、取材に一国民として感謝したい。肝心な資料を隠蔽したり、破棄したり、改竄したり、開示されても真っ黒だったり、そんなことは本当にやめて欲しい。
日報の保存期間が延長され(破棄できなくなった)公文書館に移管されることになったのは、著者の功績だろう。
今後の日本(自衛隊)ができるPKO活動の著者の提言もなるほどと思い、国としても考えてくれていると信じたいが、何も考えていないかも。アメリカの要請に従うことしかできないのかも。なんだか悲しいが、隠蔽や現地の戦況の過小説明で、肝心のPKO活動に参加された自衛隊の人への国民の評価が抑えられてしまうことも、酷いことだと思う。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

日報隠蔽問題が発覚し、当時の防衛大臣や、自衛隊幹部が辞任する事態にまで至った南スーダンPKO活動。その時に明らかになったのは、どう見ても戦場となっている地域に自衛隊を派遣しながら「停戦合意がある」、銃撃戦があっても「散発的な発砲がある」等の事実を捻じ曲げた政治家のロジックでした。自衛隊のPKO参加は、1991年の湾岸戦争後に掃海艇の派遣から始まって南スーダンに至るまで約25年間続きました。本書で明らかにされているのは、そのほとんどの現場で、自衛隊が現地の戦闘に巻き込まれていてもおかしくない状況に幾度となく遭遇していた事実です。
「武器の使用は正当防衛と緊急避難の時だけ認める(他者を守る目的のみでは武器使用が認められない以上、昨今のPKOで多く見られる文民警護任務では、自衛隊自身が相手の攻撃に身をさらし、あえて攻撃を受けてから武器を使用するしかない)」、「自衛隊は多国籍軍に入るが、同司令部の指揮下には入らず、戦闘に巻き込まれる可能性があれば撤退可能(実際には、現地司令部と一体化して活動するしかなく、現地で命令を受けながら武力行使を拒むのは事実上不可能)」などなど、PKO活動の実情と憲法9条の制限下で”出来ること”には非常に大きな矛盾を抱えながらの派遣であったことが明らかにされています。
本書後半で筆者も指摘していますが、建前は「国際貢献」でありながら、その実情は「自衛隊の海外活動の既成事実化」という構図では現場に派遣された自衛隊員にしわ寄せが及びます。「本来なら激しい戦闘の中でも、一人の犠牲者も出さずに任務を完遂したことは誇れることのはずなのに、(政府が戦闘を否定したことで)いてはならない所から帰ってきたようで、話す事が憚れるような空気がありました。これでは厳しい状況で任務を完遂した隊員に失礼です」との発言をされている派遣された自衛隊幹部の言葉は重く受け止めなければならいと思います。結局、自衛隊の派遣を決めるのは政治家ですし、その政治家を選ぶのは有権者の国民です。本書の結びでも上記の自衛隊幹部の言葉が引用されていますが「国民がどこまで自衛隊の負うリスクを許容できるのか、一人一人が考える必要がある」との発言には、非常に共感できました。

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2022年05月27日

Posted by ブクログ

国際平和協力法、PKO法による自衛隊の海外派遣が始まって30年が過ぎていた。自衛隊が派遣された場所は、それまで紛争地でまだ敵対する勢力が停戦に合意しているだけの戦地であったことを、情報公開された「活動」日報によって明らかにする地道な取材で明らかにしてくれる労作。今ウクライナで戦争が起こっている時に自衛隊に防衛以外の任務を付与する余裕はないようにも考えるものの、本書にいくつかの提案は考えていいのかと思えた。軍事監視要員派遣、重機などの操作訓練を行う派遣など、「一人も殺さないアクター」として国際平和に貢献する道を模索してほしいとの著者の願いは印象的だ。それにつけても自分の行った判断を記録して胸を張って世の検証を受ける公務員、政治家が多数派となってほしいものだ。

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2022年05月22日

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