あらすじ
近代日本の最初の公害、足尾鉱毒問題を鋭く糾弾した田中正造の伝記的物語。正造の闘いに、人間の生き方を深く考えさせられます。
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Posted by ブクログ
とても児童書とは思えない重厚なテーマとストーリー。
(出版されたのが30、40年前ということもあり、
児童が読むにはハードルが少々高い気がする。)
教科書には登場するが、あまり脚光の当たらない
イメージのある田中正造先生(以下、敬称略)の
一生を大まかに知ることができる本。
自分や身内の利益を度外視して、国民の生活の
ために最後の最後まで国家権力に立ち向かう姿は、
現代には見当たらない本物の政治家だと感じた。
もっと現代で日の目をあび、大河ドラマなどで
多くの人に親しみをもってもらい、
今以上に評価されるべき人物ではないかと感じた。
*****以下、ネタバレ要素あり*****
良かった点
国会での政府への質問や批判、演説シーンは
鬼気迫るものがあり、心を揺さぶられた。
政府への請願に来た非武装な農民に、
警察や憲兵が暴力をもって鎮圧するシーンは、
本当に胸糞悪くイライラした。
個人的に合わなかった点
鉱山側(市兵衛)視点と田中正造視点で章立てされて
いるが、前知識がない状態ではどちらの人物の話をしているか分からないことがあり、後になって市兵衛の話だったのかということがあって読みづらさを感じた。
はじめに簡単な人物説明をプロローグ的に差し込んでも良かったのではないかと思われる。
また、最終盤の正造の死のシーンがナレ死的に
あっさり書かれてしまっていたことが残念。
これほどの人がどのような最後を迎えたのか詳細に知りたかった。
(資料不足かもしれないが、正造が何を思い
死んでいったのか、自分の一生をどう感じたのか
取材した筆者の意見を交えながら補えなかっただろうか。)