【感想・ネタバレ】ロシア発 世界恐慌が始まる日 新たな戦勝国と敗戦国が決まるのレビュー

あらすじ

ロシアによるウクライナ侵攻に対する強力な経済制裁が行われている。国際金融とのアクセスを断たれたロシア経済が沈没する一方で、ロシアからの資源輸出は遮断され西側世界も返り血を浴びることになった。この影響で金融市場のボラティリティは急拡大。ロシアン・ショックが資源ゼロの国である日本の経済を揺らす。危機の正体を金融や外交、エネルギー安全保障、経済安全保障など多方面から経済評論家・渡邉哲也氏が徹底解説。発生するクライシスを完全シミュレート!

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Posted by ブクログ

今年(2024)のGWの大掃除で発掘された本のレビューは大方終わりましたが、その前に娘夫婦が宿泊した時に大慌てでスースケースにしまい込んだ本があり、それらの本のレビュー書きを終了させたく思っています。

記録によれば、日本ではコロナ緊急体制が出された2年程前(2022.5)に読み終えた本です。ウクライナ侵攻がその年の2月末に始まっているので、それを踏まえた内容になっていたと思います。レビューを書きながら中身を振り返りたく思います。

以下は気になったポイントです。

・ドルが基軸通貨になってから、石油・穀物といった戦略物質から、武器・麻薬に至るまで決済はドルが支配している。各国の通貨の価値が保有するドル資産で裏付けられる側面もある。表の社会も裏の社会「金本位制」から「ドル本位制」になっている。企業が対ロシアビジネスを続ければ、金融機関からの融資が行われなくなる。さらに、貿易決済やサービス市場は、ロンドンの「シティ」に集中している。再保険の最大手がイギリスのロイズ保険組合である、この他にも金地金市場、両替市場についてもシティが最大の市場を持っている。ロシアに進出している企業は再保険になることから、多くの民間企業には撤退という選択肢しか残されなくなった。つまり、ロシアに対してアメリカが「ドル」を遮断し、イギリスが「サービス」を遮断した(p11)(p68)

・貧しい国が豊かになれば世界は平和になる、というのは幻想であり嘘である。貧しい国が豊かになれば戦争が発生し、豊かな国が貧しくなれば内乱やクーデターによる政権交代が起きる、これが世界の現実である。(p28)石油の可採年数は1950年代に20年、60年代で35年、70年代で38年、80年代で31年、90年代で40年、現在は53年となった(p29)

・債務国と債権国の間に入るのが「パリクラブ」で債権者会合である、国家と民間銀行の間で債務が返済できない場合には「ロンドンクラブ」で協議される(p33)

・中国人民元がSDR構成通貨に採用された時、中国が西側と約束したのは、為替の自由化と資本移動の自由化であったが、その約束は守られていない。すなわち中国は片方でグローバリズムの恩恵を受けながら、一方で、自由貿易・為替の自由化・資本移動の自由化、というルールを守らず、ナショナリズムに走り続けた(p41)

・2022年2月20日に北京五輪が閉幕した翌日21日、プーチン大統領はロシア編入を求める分離独立派が実効支配する、ウクライナ東部のドネツク州、ルハーンシク州を、ドネツ人民共和国、ルガンスク人民共和国を国家として承認する大統領令に署名した、まさにクリミア危機が繰り返された(p49)

・2020年8月28日、安倍首相が辞任表明をした時、世界各国のトップが御礼や感謝のメッセージを発信した、この返信は、アメリカ(トランプ大統領)、インド(モディ首相)、オーストラリア(モリソン首相)、台湾(蔡英文相当)、イギリス(ジョンソン首相)である、この人選と順序には極めて重要な意味がある。安倍氏のインド太平洋戦略の構図そのものである(p63)

・イラクの大統領フセインは、1991年に湾岸戦争を起こしたにもかかわらず処刑を逃れた、ところがフセインはフランスの働きかけで、99年に導入さればかりのユーロに石油取引の通貨を変更しようと画策した、ジョージブッシュ政権は、ありもしない大量破壊兵器の存在を理由にイラク戦争に踏み切ったのは、ドル支配の維持にあるとされている。2003年に米軍特殊部隊によってフセインは拘束、2006年に処刑された。石油などの戦略物資取引のドル支配を破壊しようとするものには「死」をという強烈なメッセージである(p83)

・日本からアメリカへ現金を送金するときは、通貨ごとに「コルレス(遠隔地の取引先の略)銀行」という中経銀行が指定されている、米ドルならシティバンクやモルガン・チェース銀行、ユーロならドイツ銀行である。日本はかつては東京銀行であったが、現在はそれを合併した、三菱UFJと三井住友銀行がコルレス銀行となっている、それ以外はドメスティック銀行と呼ばれている(p86)ロシアはSWIFTから排除されたが、ドル決済ができなくなりロシアが海外からモノを購入できなくなることを意味する(p94)

・バイデン政権が成立した2021年、欧州はアメリカ以上に脱化石燃料に動いていたが、それはコロナ禍とロックダウンによる経済停滞で成立していたに過ぎなかった、経済活動が再開したことで、欧州は急激なエネルギー不足に見舞われた。ウクライナ侵攻は、ドイツや欧州の偽善が生み出した側面が強い(p103)

・ウクライナ侵攻におけるロシア軍の1日当たりの戦費は、1兆2000億円とも言われている、ロシアは日本の4分の1の経済規模で、金融制裁・経済制裁で経済力は急速に衰えた、長期にわたり戦闘を継続するのは不可能な情勢である(p130)

・CIPS(人民元国際決済システム)もSWIFTも送金のメッセージサービスで、直接的な決済サービスではない。メッセージを受けた銀行がコルレス銀行を利用して現金の決済を行う必要がある、CIPSに加盟している銀行の8割はSWIFTとも提携している。その意味ではCIPSはSWIFTから完全に独立しているとは言えない。結局のところ、CIPSを使っても、制裁対象の金融機関の利用を見つけ出すことはできる、見つかれば経由した銀行どころか「CIPS」そのものも二次的制裁の対象になってしまう可能性が高い、ドル・ユーロ・円のコルレスがCIPSのサービスから離脱すれば、CIPSは中国国内と一部のテロ国家しか使えなくなってしまう。残り国際決済の方法は、外銀の本店とロシア支店間決済となる、これを揺るか否かはアメリカ次第である(p136)

・アメリカとの経済戦争になると判断したイギリスは、植民地支配が利いていた地域を「シティ」と同様の金融の自由都市にして対抗した、ガーンジー島、マン島などの王室属領、ケイマン、ジブラルタルなどの海外領土、シンガポール、キプロス、バヌアツのようなイギリス連邦加盟国、香港などの旧植民地、イギリスはシティを中心とした、タックスベイブンの重曹的なグローバルネットワークを作り上げた。基軸通貨はアメリカに奪われたが、ドル自体の取引量は、世界の貿易決済量で見ると、シティが4割、ウォールストリートは2割である。シティからロシアが排除されたことは、世界の貿易取引からロシアが排除されるということ(p139)

・イギリスのロンドンには世界最大級の再保険市場「ロイズ保険組合」がある、ここから締め出されることは、ロシアの航空、宇宙産業に対して世界中が保険を認めないということである、EUは2022年2月27日、航空機リース会社に対して、同年3月28日までにロシアでの現行契約を終了するように求めた。ロシアの航空機980機の約3分の2がリース運用で、リース契約解消のために返却する義務が生じる。しかしロシアは返却の動きはない。(p141)

・2022年3月23日のインタビューで、高市氏は国際社会における日本の問題を以下の3点にまとめた、1)国連で拒否権を持つものが「外交」を支配する、2)核兵器を持つものが「軍事」を支配する、3)資源を持つものが「経済」を支配する(p159)

・戦略核を搭載したアメリカの戦略原潜が、中国・北朝鮮・ロシアに対して作戦行動を行う際に必ず通過しなければならないのは、宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡東水道及び西水道、大隈海峡である(p176)

・アルミニウム、亜鉛などの工業用金属の国際価格を決めるのが、ロンドン金属取引所である。ウクライナ侵攻によってニッケルが暴騰したことで、2020年に取引停止をした。今後は多くの金属が不足することが予測されている(p187)

・明治期に関東がドイツ製、関西はアメリカ製の発電機を導入したため、現在でも関東以北は50ヘルツ、関西以南は60ヘルツである、静岡と長野に周波数を変換する特殊な施設を設置し、関西から関東への電力融通は可能になっているが、スムーズとはいかない(p202)

2022年5月9日読破
2024年8月1日作成

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2024年08月01日

Posted by ブクログ

ロシアのウクライナ侵攻に伴い、過去の経緯を解説した本が多く書店に並んでいるが、『戦争後』の予測本はこれが初めてではないかと思う。一読に値する。日本の備えは大丈夫か・・・?

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2022年04月24日

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