あらすじ
豪華絢爛な宮殿の舞台裏
フランス貴族社会の象徴、ヴェルサイユ宮殿。18世紀、ここには王を頂点に1000人以上がひしめきあって暮らしていた。豪華絢爛な外観、贅沢な食事、着飾った女性たち、舞踏会や音楽会……。華やかな宮廷生活が思い浮かぶが、本書のテーマはこうした表の顔ではなく、より人間くさい日々の営みのほうにある。著者は残された書簡や官僚機構の報告書などを精力的に読み込み、宮殿での暮らしの実態をひもといてゆく。
宮殿の内部は226の居室からなる巨大迷路の様相を呈していた。広さ・設備とも許容量を超える人数が暮らすなかで、個人のプライバシーは守られていたのか。1000人分の食事はどのように準備され、消費されていったのか。安全な飲料水は確保できていたのか。入浴や排泄はどのようにしていたのか。広大な建物をどのように掃除していたのか。大量の洗濯物はどこで洗い、どこに干していたのか。華やかなイメージとは裏腹の驚くべき事実が次々と明かされる。
当時の史料からは、貴族たちの苦労がしのばれると同時に、彼らがたくましく生きていた様子もうかがえる。本書を読めば、これまでとは違った宮殿の姿が立ちあがってくるはずだ。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
18世紀、フランスのベルサイユ宮殿で暮らす貴族や使用人の普段の生活がどのようなものだったのかを、当時の報告書や書簡などの資料から読み解き描き出したもの。当時、ベルサイユ宮殿には貴族、使用人含めて千人を超える人間が出入りしていたが、思っていた以上というか思っていたとおりというか、「ベルばら」的な豪奢で煌びやかなイメージとはかけ離れたものであったようだ。慢性的な資金不足からくる老朽化や不足する設備による冬の寒さや夜間の暗さ、ゴミや屎尿の処理が追いつかないことからくる不衛生や悪臭などなどエピソードてんこ盛り。
最近はあまり聞かなくなったが、「ベルサイユ宮殿にはトイレがなかった」というのは一時、雑学の定番ネタだったなぁ。