【感想・ネタバレ】数字と踊るエリ 娘の自閉症をこえてのレビュー

あらすじ

娘の自閉症がわかった日、僕の運命は一変した。

数字を偏愛し、奇妙な質問と造語をくりかえすエリ。
他人の感情を理解できず、小学校には適応できない。
でも僕と妻は、決してあきらめなかった。
自作の教科書で入学直前までくりかえした、学校生活のシミュレーション。
通学する娘に毎朝つきそい、自宅では毎日、深夜まで訓練用の教材を手作りする。
「この子はきっと、成長してくれる」―その思いだけが、僕たち家族の支えだった。

自閉症と言われた我が子が家族の力で驚異的な成長をとげるまでの9年間の記録。


【著者からのメッセージ】

この2年半、新著を出すことが出来ませんでした。ひたすら、『数字と踊るエリ』の原稿を書いては直し、また改稿するということを繰り返していました。書き始めたときには、「日本で初めての家庭療育成功記を書いてやる」という思い込みや意気込みがありました。しかし、書いてゆくうちに「これを実名で発表していいのだろうか?」と恐ろしくなりました。苦しんだあげく、こういう形になりました。
「はじめに」にも書きましたが、特定のアプローチの効用を宣伝しようという意図は僕には全くありません。ましてや、僕たちの選んだ道を正しい選択肢として提示しようなどとはさらさら思っていません。
僕はただ、この本を、一つのケースとして、提示したいと思いました。だから、記録をたどりながら、事実をありのままに書くということに徹しました。
これは、ある家族の苦闘の歴史です。自閉症に特別な関心をお持ちでない方にも是非手にしていただきたいと思いました。読みやすい構成にするために僕に可能な努力は尽くしたつもりです。
本書が、この本を手にとって下さる方に、ご自分のご家族のあり方にまで思いを寄せるささやかなきっかけとしてお役に立てることを祈っています。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

今日発売の『週刊文春』の書評で取り上げられている。
この本を読んで矢幡さんのイメージが変わった。
自閉症の娘さんのために自分を「療育のための機械」と割り切るまでになるのは、普通できない。
心理の専門家なのだから、もっと同じ境遇の人に有用な情報を求めるのは、最後まで読めば愚の骨頂だとわかるはず。
矢幡さんのテレビでのイメージが180度変わった。
夫婦仲が不和になったことまで赤裸々に書かれているところが生々しい。
編集者の力と矢幡さんの勇気はかなり高い評価に値する。
彼のホームページでは、既に自分の体験と専門家の知識を融合した、同じ境遇の親子に有用な情報を提供している。

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2011年06月16日

Posted by ブクログ

良書である。「心の専門家」だと思われがちな心理職であっても、我が子の発達障害に直面することへの葛藤は大きい。どんな仕事をしていても、こと自分の子どもに対しては誰でも「ふつうの親」なのだ。オロオロし、不安に苛まれ、ひたすら成長を願い試行錯誤する過程に胸をうたれる。家庭療育をしようと考えておられる親御さんに「はじめの一冊」としてお薦めするのはちと憚られるものの、療育の成果が思わぬところであらわれる驚きと喜びなどが生き生きと綴られており、子どもたちの「伸びていく力」に心底敬意をおぼえる。エリさんとご家族のこれからに幸多からんことを。

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2011年09月22日

Posted by ブクログ

「数字の国から迷い込んできた天使」から「共に地上を歩む人間」になるために、臨床心理士である両親とエリちゃんが奮闘されている。自分が関わった子どもたち、特に同じ診断名がついていた子どもたちへの愛おしさが、自省の気持ちとともにわき上がった・・・

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2011年05月17日

Posted by ブクログ

著者は臨床心理士である。精神病に関しては知識を持っていると思われがちだが、自閉症に関しては全くの門外漢だった。そんな彼の幼い娘がどうも様子がおかしい。「彼女の個性なのだろう。これから少しずつ成長していくのだろう」と思っていたが、自閉症との診断を受ける。
それから手探りの療育が始まる。

高機能自閉症(アスペルガー症候群)についての本は何冊か読んだことがあるが、知的発達の遅れを伴う自閉症の本を読むのは初めて。
言葉によるコミュニケーションも難しく、自閉の世界に閉じこもる娘との間の壁に、何度もくじけそうになる。なんとか普通学級への登校が続けられるまでに療育が進んだのは、全てを娘に注いだ両親の愛情によるものだろう。

著者の娘の障害は、中程度だとのこと。自閉症に興味があって読んでみたけれど、高機能自閉症と中程度では全く障害度が違う。これが重度だとどうなるのか?
奥が深い。

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2019年02月21日

Posted by ブクログ

臨床心理士の矢幡洋氏の家族に起こった実話。ある意味専門家でもあった八幡氏が、一人娘のお嬢さんの異変にはっきり気づくのは小学校入学間際。そこから普通学級に入れるべく夫婦の凄まじいチャレンジの日々。文章は時にあまりに感傷的で、読みづらいときもあったが、そこは実話。小説の作家ではないから、深い哀しみや切なさ、苦悩につぶされそうになる自分たちを客観的に最小の文では表現できないのは致し方ない。研究書ともちがうこの本は、自閉症が療育によって、わずかながらでも着実に改善される様子を見て取れる非常に珍しい一冊になっている。同じ境遇の家族にも励ましになる一冊であろうと思う。

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2014年04月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

臨床心理士の作者が自閉症の我が子と歩んだ数年を記録した一冊。

専門家である作者と妻(同じく心理士・専門家)であっても我が子の「自閉症」に気付かずに苦しむ。親として「普通」の範囲であると思いたい心。不安を隠して何でも無さを装う日々。障害の程度、有無に関係なく親なら誰しもが感じる心の動きを書いていると思う。病に伏す妻、悲壮なまでに療育グッズ作りに打ち込む夫、どちらにも切ない同情を覚えた。

所々で障害に対する不用意な発言を感じないでもなかったが、「正直」と言えばその通りであろう。親とはエゴイスティックなもの。バカなものだ。そして我が子を何よりも一番だと考える「盲目」であって良いのだとおもう。

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2011年09月09日

Posted by ブクログ

いろんな疑問は抱くものの、全体像など、一読者にわかるはずはない。全体として巧すぎるために、絵空事のようにすら思える。が、ひとつの事例のひとつの側面の物語を読む中で伝わってくる苦悩や気持の揺れは、確かなものなのだろう。判断など、第三者ができることではない。

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2011年08月29日

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