【感想・ネタバレ】娼婦の本棚のレビュー

あらすじ

【目次】
●はじめに――時に夜があまりに暗く、字を照らす光がなくても

〈第1章 女は無意味に旅に出る〉

●もしアリスが女の子ではなかったら
――『不思議の国のアリス』(ルイス・キャロル/矢川澄子訳)
●女の子の殻をさらに包む強力な殻
――『“少女神”第9号』(フランチェスカ・リア・ブロック/金原瑞人訳)
●娼婦になったり聖母になったりすればいい
――『悲しみよ こんにちは』(サガン/河野万里子訳)
●女子高生にある個室の自由
――『いつだってティータイム』(鈴木いづみ)

〈第2章 セックスなんかで分かるもの〉

●資本主義と愛と整合性のないカラダ
――『pink』(岡崎京子)
●たかが一度や二度のセックス
――『性的唯幻論序説 改訂版 「やられる」セックスはもういらない』(岸田秀)
●されどセックスが解放する時間
――『蝶々の纏足』(山田詠美)

〈第3章 女ではない奇怪な生き物〉

●買う男の論理があるのだとして
――『わが悲しき娼婦たちの思い出』(ガルシア= マルケス/木村榮一訳)
●基本的には他人事でしかない男の青春
――『大胯びらき』(ジャン・コクトー/澁澤龍彥訳)
●お金を介した男女の滑稽な話
――『遊女の対話』(ルーキアーノス/高津春繁訳)

〈第4章 信じられる神がいなくとも〉

●ありえないほど汚れた場所の、ありえないほど高貴な信仰
――『ぼくんち』(西原理恵子)
●夜のオカネと昼のオカネ
――『大貧帳』(內田百閒)
●この世で最も不公平な関係
――『シズコさん』(佐野洋子)

〈第5章 言葉を身体に貼り付けて〉

●夜が過ぎても生き残る可能性があるなら
――『夜になっても遊びつづけろ』(金井美恵子)
●若い女の心はそう整うものじゃない
――『私家版 日本語文法』(井上ひさし)
●一〇〇年越しの女の味付け
――『モダンガール論』(斎藤美奈子)
●それでもピンヒールは正義
――『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』(鷲田清一)

〈第6章 荒唐無稽な夜を生き抜く〉

●無敵だったココロと冷めた見解
――『桃尻娘』(橋本治)
●若さも九〇年代も空っぽだったと皆言うけれど
――『モモ』(ミヒャエル・エンデ/大島かおり訳)
●半分腐った世界でナウシカになれるわけもなく
――『風の谷のナウシカ』(宮崎駿)

●おわりに――それでも「絶望的に期待する」

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Posted by ブクログ

ネタバレ

p30
本当は、無意味の自由こそ最も大切にするべきことだったはずなのに、大人はそれを自ら手放してしまうのです。

p41-42
伸びるよりも咲くことを選ぶある種の人々の生き様は、自分の若さがいつか必ず喪失するものであるとは信じたくない私には、潔く思えました。彼女たちを目の前にすると、昼の光の下で男と肩を並べて、無骨なまま輝こうとする女性たちはどこか愚鈍で要領が悪いような気がしたのです。

p70
そのかわり、自分がどんなに矛盾しても罪悪感に押しつぶされたり、疑問を抱いたりはしません。不条理な東京にいるのだから、個人も不条理であるに決まっているからです。

p148
 昼の職にいた時に感じた、オカネについてやや不自由な気分というのは結局は比較的安全な場所にいる人というのは不運に対して許せる器量が目減りするという事実に依っているのではないかと思うのです。

p178
でも、言葉に不具合がないと思っていても、人生に感じている不具合が言葉に起因するものであれば、やはり言葉に関係しているとも考えられる。

p219
私には経験とは時間でしかないという感覚が、それこそ経験的な直感としてあるからです。

p221
空っぽな時間はそれでとても尊いものだし、空っぽな時間をふんだんに散りばめた私の若さは良質な青春だった。


官能小説を思わせるような表紙はどこか挑発的で、著者のバックグラウンドも込みで興味を惹かれ購読。楽しい読書時間でした。
著者の想定するターゲット外にいても、文章は、ある種、冷笑的、論理的と言えばいいのか、それ以上に論理主義的で清々しさすら感じます。つまりは、恐ろしいほどに客観的、俯瞰的であるし、AVや売春に対する後悔や嘲は感じられず、そこには冷徹で理知的な視点があるようにも思えました。
オトナやオンナ、オカネという単語に意味以上の意味と、視座を与え、読む人の価値観にも影響を与えるような文章。
書評、エッセイ、と一言で言えばそうなのですが、赤裸々で一般的な本の紹介文とは一線を画す。何より話の構成、導入がうまい。この人にしか書けないものを読んでいる、という感覚は心地よく、新たな気づきも多い読書時間でした。

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2022年10月16日

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