【感想・ネタバレ】沖縄密約のレビュー

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Posted by ブクログ 2019年10月25日

1972年の沖縄返還における密約取材を巡り、外務省の女性事務官から機密文書を漏洩させたとして有罪となった毎日新聞記者、西山太吉の本。
密約が存在したことは、佐藤総理の密使として暗躍した若泉敬氏の自戒本や、外務省元局長の吉野氏の告白、さらにはアメリカ側の情報公開で明らかになっている。そうした密約がなぜ...続きを読む締結されるにいたったのかを分析していて、非常におもしろく読めた。
当時のアメリカとの優劣関係、国際・国内情勢から、政府が密約によっていろいろと取り繕ったのはわからないでもない。金銭的な密約は、官房機密費でも出したのかと思ったが、しっかり国会では総額としては通している。その内訳に実際には「払わない」といっていたものが含まれていたということ。
ただ、最後の方に書いているが、いろいろな証拠が出てきている中でも、頑なにそれを否定するという姿勢はいただけないと思う。交渉の相手方も、そして当事者も「ある」と言っているものを、今になっても「ない」というのは疑念しか産まないのではないか。当時の国際情勢、社会情勢上そうすることが正しかった、しかし嘘をついたのは申し訳ない、と言う方がいいのではないだろうか。
それから、思いやり予算がこの交渉から始まったということは初めて知った。金銭的交渉でいいようにやられて、さすがに国会通過が難しいというところを後年度負担という形で決着し、それが「思いやり予算」として雪だるま式に増えていったという。非常に、いやらしい話だなという印象。

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Posted by ブクログ 2014年01月05日

沖縄返還とベトナム戦争の絡み。
戦争に負けるということは、こういうことなんだなと思わせられる密約の内容。

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Posted by ブクログ 2012年02月23日

沖縄密約についての「真実」が書かれている。メディアのステレオタイプ化,民衆の政治的無関心によって,政府の隠蔽体質が成立し,密約のような「情報犯罪」が成立しうる。
生まれる前のことで難しい部分が多かったが,僕ら一般市民や,メディア,政府が学ぶべき事が多く書かれてある一冊でした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年09月27日

沖縄問題にあたって密約問題は重要である。

一部の政治家の思惑に、沖縄がつかわれてるのはきわめて不快であった。

またアメリカのしたたかさもこの本から学べる。

世界はニコニコ表面上は笑いながらも、その心の中では国益のためのいろいろな戦略が飛び交っているのだ。

外交力というのはこのような戦略をとり...続きを読む勝つことだと思う。

日本にはそのような外交力がなかったためこのような結果を招いてしまったといえる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年04月25日

[ 内容 ]
日米の思惑が交錯した沖縄返還には様々な「密約」が存在したことが、近年相次いで公開された米公文書や交渉当事者の証言で明らかになってきた。
核の持込み、日本側の巨額負担…。
かつてその一角を暴きながら「機密漏洩」に問われた著者が、豊富な資料を基に「返還」の全貌を描き、今日に続く歪んだ日米関...続きを読む係を考察する。

[ 目次 ]
第1章 「沖縄返還」問題の登場―その背景と日米の思惑(池田から佐藤へ ベトナム戦争と沖縄返還 ジョンソンからニクソンへ)
第2章 核持込みと基地の自由使用―交渉とその帰結(1)(明かされた核密約 基地の自由使用と事前協議の空洞化)
第3章 財政負担の虚構―交渉とその帰結(2)(米資産買取りの内幕 闇の主役と秘密合意 つかみ金、二億ドルの使途 追加された二つの密約)
第4章 変質する日米同盟(安保共同宣言と新ガイドライン 日米軍事再編)
第5章 情報操作から情報犯罪へ(密約を生む土壌 秘密体質の形成 情報犯罪は続いている)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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Posted by ブクログ 2010年06月02日

先日、ブログで書いた「運命の人」を読み終えてすぐに購入した本。小説の最後で主人公・弓成は言う。「沖縄を知れば知るほど、この国の歪みが見えてくる」。これは一体何を意味するのか。返還以降、対米関係において日本が置かれている状況とは何なのか。弓成のモデルとなった元毎日新聞記者・西山太吉さんが書いた本書は、...続きを読むそれらの疑問に多くの示唆を与えてくれた。

著者は、沖縄密約は返還全体を包み隠す虚構だといい、国家による「情報犯罪」と断じる。そして、返還交渉を検証することなく、これまで政府がとってきた道は(宣伝文句に使う)沖縄の負担軽減でも、(他国からの侵略に対する)抑止力の維持でもない。真相は「新たなる負担の追加」と「世界戦略への参画」という。

そもそもなぜ密約が必要だったのか。その理由を、日米交渉を支配する1つの法則「米側がまず交渉の主導権を握り、その上で自らの利益貫徹のため、各種の戦術を巧みに駆使しながら日本側の譲歩をかちとっていく構図」に見出す。そして「対米コミットと国内説明の絶対的な矛盾の中で、吉野(※吉野文六・元外務省アメリカ局長)が指摘したように最大限の『きれいごと』を求めようとすれば、落ち着く先は、やはりそのような犯罪になる」とする。国民には「“核抜き本土並み”の返還」を謳いあげ、アメリカには巨額支出と基地の自由使用を容認。相反する約束をしておきながら、“きれいごと”を求めた必然の結果として政府は、密約に行き着いたということだ。

交渉もずさんだった。政権の総決算を任期までに行いたい佐藤栄作首相。次期総裁を狙うために最大限の貢献を果たそうとする当時の大蔵相・福田赳夫の思惑などが交錯。日本側の交渉は首相の任期が切れる“72年”返還という目標ありきで進み、外相・大蔵相・密使の3者によって各自バラバラで行われたという。

一方のアメリカは、「72年返還」というカードを有効に使って系統だった計画的な方法をとり、財政面と軍事面双方で大きな果実を得た。そして果実をその後、有効に発展させてもいく。アメリカは始めから返還交渉を出発点と位置づけ、今後に大きな実をつける果実の「種まき作業」とみていたのだろう。

例えば財政面では、返還時の米資産買取り分として積算根拠(いわゆる“つかみ金”)の乏しい3億2000万㌦を日本に認めさせた。またそれ以外に密約枠として、日米地位協定上、原則米側負担だった基地の移転・改良費用を日本に負担させた。「6500万㌦(当時の234億円)の“基地施設改善費”(米密約文書)こそが、返還時点での一時金ではなく後年度負担として受け継がれ、それどころか、年々肥大していった現在の“思いやり予算”の原型となったもの」。同予算は右肩上がりに急上昇を続け、94年度には2756億円にもなっている。

軍事面でもアメリカが当初描いた戦略が実現する。①沖縄返還を起点として、②周辺事態法(新ガイドライン、99年5月成立)、③日米軍事再編(06年5月1日採択)。著者は、それぞれの過程でアメリカの要求に従う政府の態度を説明し、「日米安保は、基地使用の弾力化と基地関係支出の日本側への転嫁(①)、そして基地使用の対象領域拡大と自衛隊の後方支援(②)、さらに日米双方の軍事力一体化・共同化(③)という形で変質を遂げてきた」と分析する。

“買戻し”反対の世論に対抗した佐藤首相の「沖縄はタダで返ってくる。こんないいことはない」発言。沖縄返還は、国民に知らされていない形の実態があり、いまも多大な負担が積み重なっていた。1度ついた嘘は必ずほころびをみせ、また新たな嘘をつく。だからこそ早期に公開して検証を行い、“失政の芽”を断つ -。“国家の嘘”を掴んだ西山さんはそんな義務感にかられ、国家と闘い、敗れてもなお歯を食いしばって立ち上がったのだと思う。本書は全体的に論理的な説明がなされているが、文書の端々から西山さんの怒りが伝わってくる。

くしくもいま、鳩山首相は苦境に立たされている。普天間移設を「5月までに決着させる」「腹案がある」と答弁したが徳之島案は米側に拒否され、5月決着は実現不可能な情勢。当然その状況はアメリカにみられている。また付け込まれる余地は十分ある。注視していきたい。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

メディアリテラシー学習3部作その3。仕上げ〜。コンテンツ産業の市場開放・規制緩和はダイナミックに行うべきでしょう。しかし、西山氏のこの本の内容をおさらいしただけでも「表現・報道の自由」は担保されなければ、との想いは一層強くなる。後半の米軍再編・集団的自衛権に結びつける展開は、現在では、ひとつの見解と...続きを読むして受け止めるべきものなのでしょう。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

沖縄返還に関しての外務省秘密漏洩事件で有名な当事者である著者が、あの事件の全貌と、その背景、そして今も続いている沖縄をめぐる日米の隠された事実について書かれている。
この問題となっている事件やその時代の政治権力の知識があると、より深く楽しめる。

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Posted by ブクログ 2023年05月26日

権力とは恐ろしい。使い方を間違えれば現在のようなウクライナ戦争も起こるし、北朝鮮のように国民が飢えてでも核ミサイルを飛ばそうとするなど、世間一般には間違っていると断言して出来ることが世界中で頻繁に発生する。
我が国の権力の頂点と言えば、民主主義国家だから原則的には国民にあるのだが、その代表たる国会そ...続きを読むして内閣総理大臣が実務上の最高権限となる。政治家たるもの誰しも最終的に目指すのは総理の地位であろうし、それを手にするためであれば汚い手、禁じ手を使う。
本書前半は池田総理から佐藤栄作へと権力の移り変わりに際して「利用された」と言っても過言ではない沖縄変換問題、沖縄密約の発生経緯を辿っていく。当然、沖縄を返還してほしい日本と基地として失いたくないアメリカの間の外交問題だから機密事項も多いのはわかるが、後に日本がアメリカに支払った(実質的に沖縄を金で買ったと言われる)表向きな金額とは別に、アメリカに支払った金がある。筆者はその存在に気づき国家を相手にした結果、逮捕されるという悲劇に見舞われる(執行猶予付き)。ここでも国家という強大な権力には1人の人間が立ち向かえないのが現実にあった。
なお、機密費問題に関してはその後に外務省の当事者が当時を告白したこと、アメリカ側では譲歩公開がされたことから、周知の真実として白日のもとに晒されるわけだが、それでも歴代外相はそれを認めない態度を続ける。しかし本書が言いたいのはそこではなく、沖縄という土地やそこに住まう住民たちの意思とは関係なく、国会議員の権力闘争に巻き込まれる事実についてである。
現在の政治を見ていても、日本は外交が弱いと言われる一昔、二昔前から大きく進歩しているようには見えない。寧ろ外務大臣の海外訪問のニュースからは行った国と誰と会ったかだけに注目が集まり、中身よりも外見しか見ていないのは昔も今も変わらない。だから秘密も容易に作られてしまうし国民の監視も甘い。そして中身のわからない日本の外交は弱腰とも取られる。
この弱腰傾向は太平洋戦争に負けてアメリカ占領下にあったのだから仕方ないと言えばそうかもしれないが、戦後も続く日米関係を見てわかる通り、余りにもアメリカに対して逆らえない状況は続く。確かに極東の不安定さにはアメリカの軍事力はよく効いているし、日本もそれが無ければどうなるか判らない。残念ながらそれを解決出来るのも外交力しかない。だから根本的には対外的に強い(最低でも対等に渡り合える)外交力=国力が必要だ。
現状を見れば少子化と超高齢化が続き、人口もじきに1億人を割る。若者は働く意欲を失い定職に就かないばかりか結婚もしない。地方の過疎化は益々進み空き家だらけで廃墟だらけのゴーストタウンと化していく。我が国だけが課題山積にも見えるが、それを解決している北欧の国々もある。
まずは国民が目を覚まし、自分たちの国の現状をしっかり見つめ、今後10年、30年先を見て何をするべきか真剣に考える必要がある。
話は飛んだが、国家権力に立ち向かう筆者の姿には勇気を貰える。

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Posted by ブクログ 2011年03月05日

西山太吉『沖縄密約ー「情報犯罪」と日米同盟』を読む。
読んでいくうちに1972年の西山事件と2010年の一色事件の
共通性に気づく。いずれも国家公務員法違反に問われた。

僕はふと疑問に思う。
僕たちは主権者として選挙のたびに投票を通じて
政党、政治家に権限を託す。
しかし、選挙と選挙の間に託した権...続きを読む力がどう運営されているか、
国民が監視する仕組みは充分なのだろうか。

沖縄返還にあたって日本がアメリカと密約と結び、
税金の使い方を隠蔽し、責任者たちが国会でも偽証する。
対中関係で領土が侵犯されている現実を示した映像資料を
突然「国家機密」として一部国会議員以外には公開しない。
国の未来を憂い、それらの情報を自己責任で公開した人間に
社会的制裁を与える。
一方でそもそもの国家運営について
どこまでの情報を国民に公開するかについては議論を深めず
仕組みも整備しない。

その役割を期待されるメディアの機能も決して充分とは言えない。
記者クラブでの限定された情報を
限られたメディアが使用していることは再三再四指摘されている。
民主党に政権交代しても期待したほどの変化は見られない。

西山事件では情報を提供した外務事務官と記者の男女関係、
一色事件ではインターネット時代の情報漏洩問題と犯人捜し。
いずれも、短期間に情報を売るためによりセンセーショナルに、
より扇情的に加工し、誘導する。
人々が過剰な情報を消費し疲れ飽きるうちに、
事件の本質はぼやけ次の事件に焦点がずらされ、
すべてが忘却の彼方に追いやられる。

国家を逆に揺さぶるメディアとしてWikiLeaksが現れた。
WikiLeaksが出現する背景には
国家、メディア、個人のパワーバランスの再修正を
テクノロジーの進化によって果たそうとする意志があるように
僕には思える。個人でなく集合的無意識の意志である。
道徳倫理の善悪ではなく、パワーバランスである。

日米関係について別の視点からも見てみよう。
リチャード・L・アーミテージ、ジョセフ・S・ナイ Jr、春原剛
『日米同盟 vs 中国・北朝鮮 アーミテージ・ナイ緊急提言』(2010)
を読む。
そもそも日米同盟なしに、日本の安全は保障されるのか。
中国、北朝鮮、ロシアの動きを見てみろ、
とアーミテージ、ナイは言う。
二人はアメリカ政界では、日本シンパと呼んでもいいだろう。
中国より日本との関係をアメリカが重視する必要があると
主張している。
その二人が、安全は政治的そして軍事的責任を
果たすことなしには得られない、現実を見よ、
と日本人に警告する。

「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思いこんでいる」。
イザヤ・ベンダサン(山本七平)の至言が頭に浮かぶ。
国家、メディア、個人。安全と平和の代償。
簡単には結論が引き出せない問題であることを真摯に受け止め、
自分の頭で考え抜くことを続けてみたい。
問題から目をそむけることで
平和も安全も手に入らないことだけは確実なのだ。

(文中敬称略)

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