あらすじ
あなたの好きな人、嫌いな人、だれにも言えない秘密。あなた以上にあなたのことを知っているのは、この「スマホ」なのですから。恐怖の通知が鳴り響く……。人気シリーズ第25弾! ぞっと背筋が凍る衝撃のショートストーリー! 【本書の特徴】★3分間ショートストーリー×20話! 朝読にもぴったり! ★呪いのメール、運命を狂わすアプリ……「スマホ」にまつわるお話をたっぷり収録! ★ラストには「まさか!」のエンディングをお約束! 【目次】●プロローグ/ここにいるよ/スマホ妖怪の恐怖/オレだよ、オレ/あの子のホンネ/パシャ・ポン/ありえない/丑の刻参り/不思議な贈り物/取り残されて/緊急通知アラーム/運命の日/お返し/地縛霊サーチ/ライフください/呪いの動画/ゲット/プレイヤー交代/ママのスマホ/ノロイノスマホ
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Posted by ブクログ
便利でついつい毎日使ってしまうスマホ。正しく使えば日々の生活を豊かにし、彩りを与えてくれるアイテムだが、その便利さの裏に隠された恐ろしい話の数々を貴方は知っているだろうか?
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児童書より、最近各社からよく刊行される、〇分で読めるシリーズのうちの一つ。このシリーズは前からいろいろなものが出ていたが、現代人がもはや手放せないほど生活に溶け込んだスマホを題材にした怖い話ということで購入。リングの呪いのビデオや、着信アリのように生活に深い根を下ろしているものが恐怖の対象に変わる話はいつだって興味深いのだ。
1話3分読みきりなので、あっという間に読める一冊だった。
ジャンルは王道ホラー、SFホラー、人の愛憎が渦巻くホラー、自業自得系、バイオホラーなど一通りのジャンルを楽しめる本であった。
現代社会の暗部を照らし出した怖い話などもあり、面白いの一言である。
お気に入りの話は「ここにいるよ」、「スマホ妖怪の恐怖」。
「ここにいるよ」
こちらの作品は、事故で恋人を亡くしてしまった語り手の春太に起こった出来事。間接的に恋人の百花が事故で死亡する原因を作ってしまった春太は、最愛の者を死なせてしまったのは自分の責任だと塞ぎ込み、家に引きこもりがちになってしまう。胸に去来するのはひたすらにあの日、事故現場になった場所へ恋人を向かわせしまったことへの後悔だ。
すべて夢であったらいいのにと、以前彼女と一緒に使っていた、相手の居場所が分かるアプリを起動する。すると、なぜか事故現場に彼女を現すアイコンが表示されている。まるで男性が起動するのを待っていたかのように、アイコンは点滅し、動き出すと、男性の住んでいるマンションの真下へとやってきた。にわかには信じがたい光景に恐怖心を覚えた春太。百花がいるであろう場所には当然の様に何もいないが、アプリの不具合にしては不気味すぎる動作に、その日は電気をつけたまま就寝するほどに恐怖心を覚えていた。
翌朝、昨日の出来事がが気になった春太は再びアプリを起動した。すると、アイコンは昨日と同じようにどこかを目指すように動き出した。なぜこんな動作をするのか気になり、誘われるようにそのアイコンに追従していくが……。
この本のコンセプト、ラストで君は「まさか!」と言うという本の第一話にふさわしい話。怖いと思わせておいて、いい話?いやいや、でもでも……。となる話だった。
ラストで文字通り「まさか!」という展開が待っているわけだが、今まで春太に見せてきた思い出のようなものってそういう意味?確かに最後にその結末を迎えるのなら、そうかもしれない。もし私が睨んでいるような通りだとしたら、素晴らしい展開である。多く語ると、かなりネタバレなのでかいつまむのも難しいのだが、この話を読んだ誰かに「これってこういうことだと思う?」と聞いてみたい。
「スマホ妖怪の恐怖」
都市の近代化が進み、同じくIT関連の発達が目まぐるしい現代。特にスマホが台頭してからの成長は凄まじく、ありとあらゆるものが便利で新しいものに変化していく。
そんな中、もはや誰も語らない妖怪たちは嘆くばかりだ。昔は暗がりから出ていくだけで怖がられ、噂されたものだが、大都市では暗がり自体が珍しく、身を隠して驚かすこともできない。多くの物が科学で語られる今日に、非科学的な存在である妖怪の話を好んで話怖がるものが少なくなってしまったせいで、発達とは真逆を行く羽目になってしまった。
語られ、恐れられることで力を得ていた妖怪たちは急激に力を失っていき、老い、消えてしまう未来に怯える。何十年も前に力をふるったトイレの花子さんですらその時代の流れには勝てそうになかった。
しかし、ただこのまま消えゆくわけにはいかないと、現代人の恐がるものをリサーチし、ついに現代人最大の恐怖がなんであるかを突き止めた妖怪たち。ここから、忘れ去られた妖怪たちの華麗な逆転劇が始まっていく。
こちらは、クスリとくる話。作中に出てくる人間たちが何を怖がっていたのか、読んでいる途中は分からなかったが、オチを読んで思わず笑ってしまった。
確かに、現代人はスマホの画面に表示されたそのメッセージには恐怖するかもしれない。これ以外にもSNSが炎上したり、自分の失態が拡散されたりするのも怖いかもしれない。なんだか恐怖の方向性が妖怪の求めているものと違うし、トイレの花子さんや人面犬の様に固有名詞は獲得できないタイプの怖い話(怪異でもない)だが、人間の恐怖心さえあれば老いることなく生きていけることは生きていけるのでいいのか?
ちょっと最初の趣旨と違う気がするけれど、本人たちがいいのならいいのかもしれない。
ただ、今はこの方法で人間たちは恐れおののくかもしれないが、これとは別の手を考えないといけなさそう。今回は妖怪側の勝利だが、すぐにこの恐怖には慣れてくるだろうと思うし、警察とかから注意喚起されたら多分もうほんとに一部のそういうことに慣れていない人たちのみが怖がるだけになりそう。
妖怪と現代人との戦いの行方は果たして今後どうなるだろうか。
他にも気になる作品は多数あったが、全部紹介すると大変なことになるので上記の二つを。
本当にいろいろはホラーがあったり、とんちの聞いたような話があったりと楽しい一冊だった。
どの話も面白かったが、私の中で一番怖いと感じたのはプロローグだった。この話は、スマホを毎日使い込んでいる人は誰でも恐怖を感じる話だろうと思う。
このシリーズはこの巻でなんと25冊目らしい。今から過去作を全部読むのは大変そうだし、全部が怖い話では無い様なので気になった巻だけ今後も読んでみたい。