【感想・ネタバレ】わかりあえない他者と生きる 差異と分断を乗り越える哲学のレビュー

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Posted by ブクログ

みずからの人間性を否定したいという願望以上に人間らしいものはない ースタンリー・カヴェル

人間は一生懸命、動物にならないようにしている。たえず他者に訂正される事で、私たちは心を持つ。だから、孤立すると頭がおかしくなるのだという。また、非人間化とは、人間を動物化したり、機械化したりする事。こうした定義、哲学的な人間とは、という語り口が一つ一つ胸に刺さる。

コロナ禍で分断が露見したのか。元より人間には統一した思想がない事は、民主主義の必要性から自明。思想が異なるから、手続きが必要なのだ。ならば、コロナ禍で表面化したのは、その不寛容という事ではないのか。異なる意見に対して、許容できずに原状変更に臨む姿勢。それはまるで宗教論争のように、異教徒を包括できない。

避妊を伴うセックスは非効率の象徴であり、従い人間は効率のみを追求し得ない。仕事をする時は合理性や効率を重視しても、それは、非合理や非効率のための手段なのだ。思う存分、動物的にくだらない事をするために、人生の大半を機械的に生きる。その狭間の理性にしか、人間が人間たる領域は存在しないなかも知れない。僅かな人間領域の互いの非同質性に対して、いかに寛容性を発揮し、前後いずれの非人間化を共にするか。動物か機械か。エロスかマシーンか。

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2023年06月06日

Posted by ブクログ

ダーウィンは人種差別主義者だとか、Facebook は2030年までに終わるとか、こども授かる前に絶対合格できる親テストとか、優しい顔して過激な話しで面白いです。
他者を愛することすなわち、恋愛関係は永久に恋は続いてほしいということは、別の人と恋愛関係になることもできるという話しや他人のためにワクチン接種受けるのは間違いだという話しは納得しました。
哲学の対義語はもしかしたら科学かもしれないですね。
あとSNSとロックダウンは倫理的に毛嫌いしているのがよく分かりました。特に宗教に対して無知な日本人に倫理を勉強しないと他者と生きることが難しい時代なんだなぁと思いました。資本主義がよくわかっている人からたくさんの日本人が搾取されていることも気づかずに生きづらさを感じていると、ガブリエルさんはいいます。
もっと宗教を知り、倫理も学びたいと思います。

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2022年10月25日

Posted by ブクログ

新実存主義による他者論。ちょっと難しい感じ。

家族とは「親密さ」を基盤とした結びつきである。

家族を健全に保つのは「正しい喧嘩」である。

高い生産性の秘訣は短時間睡眠ではありません。
非効率であっていいタイミングがわかっているから効率を上げられるのです。

人生のこの部分(恋愛)に偶然はないと思うのです。物語が必要なのです。そして物語は予想もしていないときに生じます。思いがけずぴったりくる相手と出会うのです。だから自由と切り離せないのです。そして恋に落ちるわけですが,愛するためには相手が自分の思っていた人とは違うと気付かなければなりません。

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2022年07月29日

Posted by ブクログ

現代の個人を尊重する考えに基づいていて、個人的には好感を持てた。
まずは一人一人違うことを前提にされ、その違いにこだわり、その結果として、違いを超越し、違いにこだわらない、これこそが真の他者を受け入れるということか。同様に最小単位である家族についても言及されていた。
後半、やや内容が理解できない部分もあったが、それはこちらの読解力不足ということでしょう。

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2022年07月19日

Posted by ブクログ

世の中の問題、世間をにぎわせるニュース、それらについての意見について。
倫理観崩壊している目を疑うような信じられない意見や、反対意見をねじ伏せようとする不健全な態度を何度も、そして長く見てきて。わかりえないこと、分かり合えない人間は存在するし、自分が正しいと思う意見を他人に押し付けることはできないのだと悟った。

自分の心の中でそう思ってきただけで、口に出さなかったけど、そのものズバリのタイトルの本に店頭で出逢い手に取ってみました。

今まで読んできた現代の問題提起の本何冊かの内容に通じるような、またさらに理解が深まるようなものもあり、関連性を感じましたし、それまで読んできた本で自分の理解が及ばなかった部分がクリアになったり一歩進む手助けになったりしました。
例えば、『スマホ脳』の内容に近いことも著者は考えておりますし『人新生の資本論』のように現在の資本主義を著者も批判している姿勢が見られます。

この本を読んで自分の中で腑に落ちたのは、黒か白かではなく、二択でもなく、段階を追っていく必要があるという考え方。
言われてみれば当然なのですが、なぜか視野が狭くなっていて気づきませんでした。SNS、ニュースで世間をにぎわせる問題についてみんなが意見を交わすとき、なぜか二択に大きく分かれてしまう。発言の正当性、情報の正確性を遥か彼方に追いやりただフォロワーが多くRTされるというだけで重宝される薄っぺらい意見が独り歩きし続け、裏付けが取れていない情報がのさばっていく。
メディアやSNSに二択にされて騙されて振り回されてはいけないなと思いました。
早速、先日のMr.サンデーの番組の内容は信じられないもので大変恐怖を感じました。ウクライナ侵攻の話題から何故か日本が軍事力を持つか否かの二択でスタジオの有識者(なのか?単なる爺ではなく?)が話していたのですが、一体全体どうして今その話をしているのか、影響力のあるテレビで、と甚だ理解に苦しみました。

この本の中で、「非人間化」というワードが出てきますが、自身の安全を保障され命令するだけの立場の人間は戦争だけでなく日々の暮らしからも何から何まで国民を非人間化して見ているのだなと思いました。

私は、たとえ日本が他国から軍事侵略されようが、核攻撃を脅されようが、核保有したくない、日本国に核保有をしてほしくないです。
広島・長崎と被爆を受けた過去があり、一瞬でたくさんの人の尊厳も命も無残に奪い取り苦しめ続けるあの惨状。壕で負傷兵の救護に当っていたひめゆりの女生徒たちは地上戦が始まって絶望的になり自害のための手榴弾が持たされ、隣で学友が吹き飛ばされるのを目の当たりに…。
負の遺産として残された記念館・資料館、語り部の方の話。それらを実際に目に、耳にしてきて、二度と繰り返してはいけないと強く心に思い続けてきた。
防御のためにというのも詭弁だと私は思いますし、人間同士が地上でやり合うことでかけがえのない地球の自然にさらにダメージを与えて取り返しがつかないことを加速させてどうするつもりなのだと思います。
武器製造販売の人が儲けて、国のトップが権威を振りかざし、多くの罪もなく戦争を望まない人々の命が軽んじられ、自然が破壊される。馬鹿げています。

いざ、自分にその恐怖が迫った時、武器をもって抵抗したいとならないのか、大事な人を守るために武器をとらないのかと問われれば否定できませんが、そうなる前に「対話」を試みるべき、そこに至れるまでに倫理観の教育と倫理を重んじる意識を世界的に高めていくことが大事だと思います。

小さな意見の対立で二極化してどちらかにこだわり、そしてねじ伏せて満足するようなことを大人が繰り返して満たされていてはいけません。
SNSの使い方を誤ってはいけません。
誹謗中傷、転売、詐欺、著作権侵害など、倫理観の教育をもっと厚くすることで長い目で解決できないものか、とお花畑の頭で考えます。
小さい頃から子供を一人の独立した人間として接して倫理観についても日々教えることが大事と著者は言っていますが、ここで気になるのは軽犯罪、世間を困らせる問題の大元にあるのは境界知能の人たちが多いのではということ。
倫理観の教育が大事と言っても、それを理解できるかはまた別の話で、既に学習機会に恵まれている人達の理解がさらに進んだとしても差が広まり分断化が進むだけだと思うので掬い上げるのは大事なんだなと思います。

段階を踏んでいく理想の政治の在り方(P88)を読んで、人種・男女・LGBTQ差別の問題について、今は世界で段階を踏んでいるところなんだなと思わされました。
ハリウッドも作品もポリコレなんて揶揄することがありましたが、今は“あえて”それらを表舞台でフューチャーする段階なのだなと腑に落ちました。その時代を超えて、ようやく「違いにこだわらない」段階にいくべきなのだと。
この段階の考えが人々に浸透していないから反発もあるけれど浸透を待っていては遅いからエンターテインメントの世界からも急いで推し進めて人々に考えるきっかけを与えているのかな。今かなり神経質に業界人の過去の罪も暴かれていることは、いくら作品に罪はないという考えがあるとはいえ、必死に意識改革を推し進めている段階では糾弾するしかないのかなと納得できます。

前述で日本の武力行使について自分のスタンスを書きましたが、それと反対にいる人に対してSNSやYahoo!コメントで噛みついてねじ伏せようなんてことはしていません。
多くの人から構成されて社会、国となるからこそ様々な意見が存在するのですから、否定して消すことはできません。
何をもって良い/正しいとなるのか、自分から見てそうでも、違うスタンスの人からすれば私が信じられない意見の持ち主にうつるかもしれません。
正しいの綱引き奪い合いではなく、対話をして双方の落としどころを見つけるのが良いのかなと思います。とても難しいですが諦めてはどうしようもないですからね。。

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2022年04月26日

Posted by ブクログ

Audibleにて。
イグノーベル賞にあった惹かれ合う者同士の心拍や発汗の同期は、Zoomによる関わりでも起こりうるのだろうか?著者は、「他者を知るには相手の匂いを感じる必要がある」と述べる。五感(六感も含む)で知ろうとするからこそ同期は生じるのだろうか。
実感としてはそちらのほうが強いな。電話のカウンセリングが一番抵抗感が強いのは 、分からないことが増えるからだしな。

「他者の社会的な仮面を超えた所に人間性を見る必要がある」
 →これも我ー汝につながっていくものかな。自分ごとのように他者を考える…利他のためではなく、それが人間の幸福にとって必然だからそうする。社会的望ましさゆえでなく、そうしなければ「私」は顕現し得ないし、その先の幸福もないから。あくまで自分自身のために我ー汝を考える。そのための対話。
これを教育により理解して貰う必要がある。

「民主主義服務」の考え方は面白いな。今のままだと偶然そういう環境に行くくらいしか、自分と違う社会的な状況にある人と対話する機会は得られない。可能なのは、せいぜい読書くらいだが、好みによる選別が入るし、匂いを感じるまでには至らない。そういう機会を増やすしかないな。

「肌の色は意識にフォーカスされるのに、耳の長さに対してはそうではない。」
 →社会的な意味、コンテクストが意識の着目点を作る。これが付与されていないものは自然と「黙過」される。黙過は「社会的な文脈によって共創造されるもの」とも言えるか。黙過は個人の歴史によって否認・抑圧されるだけの現象ではない!

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2024年05月02日

Posted by ブクログ

わかりあえない他者と生きることを主義、考え方について突き詰めたわかりづかくはない哲学の本だったなぁと思います。マルクスガブリエルは好きで何冊か読んでおり、倫理資本主義という考え方もすごくいいなと思っています。一方で、マザーテレサはもっと人生を楽しむべきだった。彼女はそうではなかったと思うという話が出てきましたが、それは本人に聞いてみないとわからないのではないかなぁと思いました。作中断言されることが間々出てきますが、私はこれが解です。というよりもものごとはコインのように裏表があり、シーソーのように絶えず揺れ動いていて時代や環境や感情によってあらゆるものは常に変化しているのかなと思います。そうであるのであれば、今現在自分が納得できる選択を積み重ねていくのが1番メインになるのかなと思います。たまに納得できなくても進まないといけなかったり将来のこと考えてあえてそうでない方をとることもあるだろうからやっぱり100%これがってないのかなと。

作品のタイトルに対する唯一の解である”対話する”については、しないよりはしたほうが良いと思うけれど、結論を待ったなしに出さないといけない選択の場合は対話はその答えではないのかなと思ってしまいます。そこまで切迫してなくてもみんな日々の暮らしに必死だからなかなか難しいのかな。でも対話したほうがよいと常に思っておきたいです。

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2023年08月25日

Posted by ブクログ

面白いし興味深いけど、量が足りない。
一単元で1冊くらいじゃないと、情報量が少な過ぎて著者の意図している状況や考え方が分からない。

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2022年05月11日

Posted by ブクログ

他者をめぐるインタビュー集。
全くもって理解も共感もできない他者と、時間と場所を共有して生きなくてはならない時、どうすればいいのだろう。ロシアや北朝鮮をどう見ればいいのか、「他者」をどう考えればいいのか、そんな思いから読みました。
内容的には広く浅く、限りなく平易に語られていたけれど、わかりやすいというのはむしろわかりにくい事なのかもしれない。
あまりに一般的な言説は精緻さを欠くため、意図していることのコアな部分が見えてこないように感じてしまいました。

そんな中深く感じ入ったのは、自分のアイデンティティよりも前に他者との関係があるということ、他者がいないと自分の信念を疑うこともなく、その外側に出ることはできない、ということ。今の自分は他者によって形作られているということを理解させられた。
他者の本質はここにあるのかもしれない。

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2022年04月20日

Posted by ブクログ

「新しい実在論」、「新しい実存主義」を提唱するマルクス・ガブリエルのインタビューをもとにした本。

哲学者としては、若いし、かっこいいし、現実的な提言もおこなうしということで、最近、人気の様子。

あれもこれも実は存在するが、「世界」つまり、唯一の意味をもつ総体のようなものは存在しない、という主張は、彼に期待されているように思える「相対主義の乗り越え」というより、「相対主義の徹底」のように私には思える。

この哲学的なポジションは興味あるところで、彼の本はわりと読んでいます。

で、最近は日本でも人気で、インタビューをベースとした日本企画ものの本も多くなっている。

なるほどと思うところも多いのだが、政策提言的なところについては、よく言えば現実的、悪く言えば、わりと常識的かな?

彼の哲学的な主張と政策提言がどうつながっているのかはよくわからないでいるのだが、そんなに単純に良い悪いを言うことができるのかな?と思ってしまう。

この本の「他者論」もそんなに新しいものに思えないし、コピーにあるように「差異と分断を乗り越える」ような思想ではない気がする。

う〜ん、なんでもかんでも「哲学者」に聞いてみるというのも、そろそろやめた方がいいのかも。

わたしも、ガブリエルのこの手のインタビュー本を読むのは、この辺までとして、「なぜ世界は存在しないのか」3部作の最終作が翻訳されるのを待とう。

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2022年04月14日

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