あらすじ
「私は理系出身であり、財務官僚としてはきわめて珍しい経歴です」。現在、データとファクトを武器に経済ニュースや政策を論じ、日本で唯一無二の存在感を放つ著者。本書は三部から成る。「増税しないと日本は破綻する」という財務省のプロパガンダを破り、税の本質を示す第一部。歴代の総理は「財政再建」や「将来世代にツケを残さない」という役人の甘言に惑わされて消費増税に踏み込んだ結果、自ら政権を衰退に追いやってきた。その大元は、正しい使い方をすれば有効なはずの消費税を、歪んだロジックで乱用する文系思考にあった。第二部では、「狂乱物価の原因は石油ショック」「バブル期はものすごいインフレ状態」などの通説を覆し、誤った経済理論が「失われた二十年」を招いたことを証明。高度経済成長の真因を指摘する。第三部では、世論をつくる責任をよそに、恣意的でいい加減なデータ解釈しかしないマスコミの怠慢を突く。「ど文系」必読の内容。
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Posted by ブクログ
元財務官僚の高橋洋一が読み解く日本の経済について。
理系思考という名前がある通り、数字をベースに見る考え方は非常にわかりやすく納得できるものが多かった。
Posted by ブクログ
この本の著者・高橋洋一氏にはお世話になっていて、これで46冊目の本となります。この本はコロナ最中の2年前(2022)の夏頃に購入した本ですが、分厚い本ということもあり、読みかけになっていました。
現在、部屋に溜まった本を整理しているので、読みかけ本として処理しようとしたのですが、中身をめくってみると興味ある内容が随所にあり、この2日間かけて読み終えました。やはり読破して良かったですね。
以下は気になったポイントです。
・嘘の経済常識を信じ込んでいる、1)高度成長は通産省指導のおかげ、2)1ドル360円時代は為替介入していない、3)狂乱物価の原因は石油ショック、4)プラザ合意以降にアメリカの圧力で政府が円高誘導した、5)バブル期はものすごいインフレ状態だった、これらは全て間違いである。実際は円高にならないように介入していた、為替維持のためにマネーが大量に出回っていて物価が上がった、プラザ合意で為替レートを市場に任せた(=本当の変動相場性)にしたから、バブル期は資産価格(株、土地)のみ上がり、一般価格は通常であった(p171ー175)
・傾斜生産方式は、アメリカからの援助を引き出した(重油(1947)、原料炭、鉄鉱石などの基礎材料の輸入(1948開始))という点で、ポリティカル的には成功だが、経済的な意味でなほとんど効果が無かった(p189)
・預金封鎖は、猛烈なインフレ対策として強制的に貨幣の流通速度を下げるためと言われいたが、本当の目的は、債務償還のために富裕層に財産税を課すことであった、国民がもつ10万円以上の預金、不動産に対して最高90%の課税をして、国の借金を国民に払わせる措置であった、インフレ抑制でなく財政再建であった(p200)数年間で400億円集めたが、インフレ率が高かったため、増収分が目減りしてほとんど意味がなかった、514%,169%,193%,63%(1946-49)のインフレ率(東京小売物価指数)の結果、自然に名目上の歳入額も増えていき、財産税の徴収はかすんでしまうほどの増え方であった、財産税による徴収よりインフレによる増収が大きかった(p200)
・高度経済成長の最大の原因は、1ドル360円の為替レートである、完全に自由な為替相場だったと仮定した場合の計算上の為替レート(円マネタリーベース/ドルマネタリーベース)で考えると、1985年(プラザ合意)までは大きな乖離がある、この有利な為替レートが高度経済成長の最大の理由である(p223)日本と西ドイツは圧倒的に有利なレートを利用して稼ぎまくって国際収支が黒字になった、西ドイツには二回ほど切り上げ要求したが、依然として有利なレートであった、日本は固定されたままであった(p237)
・制度上は1973年に変動相場制になったが、実際には猛烈な為替介入(ダーティ・フロート)が続いていた、国民には分かりにくい形であった、これを完全にやめて真の変動相場制に移行したのが、1985年のプラザ合意であった(p244)308円の固定相場から近郊レートの140円に一気に近づいたら日本の輸出企業は倒産するので、ダーティ・フロートで市場に大量のマネーが供給されてインフレが生じた、これは石油ショックの前から起きていて、物価は急激に上がり始めていた(p249)
2024年9月2日読破
2024年9月3日作成