あらすじ
解説を聞きながら鑑賞するような楽しみ
写本制作は盛期ルネサンスまで千数百年にわたって、多様な環境のもと、ヨーロッパの津々浦々で行なわれてきた。その特徴としてすべての事例にあてはまるものがないほどだ。本書はそんな中世の彩飾写本(彩色だけでなく金か銀が施されているものをこう呼ぶ)が作られる工程を、制作に携わったひとびとの視点に寄り添う形で、写本研究の第一人者が解説していく。
中世に使われていたインクやペンは、今日使われているものとは性質も製法も異なった。挿絵の中の写字生は現代のペンとは違った持ち方をし、文字もじっくり観察すれば、現代のアルファベットとは書き順が異なる。同様に、「挿絵のデザインは誰がどうやって決めたのか?」「インクで書き間違えてしまったら、どう対処したのか?」「羊皮紙ヴェラムの最高級品は本当に牛の胎児の皮製なのか?」といった、写本を鑑賞するうちに浮かんでくる疑問の数々が、オックスフォード大学ボドリアン図書館所蔵の写本を中心とする多数の図版とともに検討される。
西洋中世写本の愛好家にその魅力を伝えつつ、専門家にも貴重な写本の細部について、新たな世界を開いてくれる一冊。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
題名の通り、羊皮紙の作り方から装丁にいたるまで写本の作り方を解説した本。実際の写本の図版がカラーでたくさん載っていて、読んでいてとても楽しい。写本の隅にある写字生の愚痴や下準備の罫線を引いた跡、装飾の手順や金箔の張り方など、当時の人々の生活が浮かび上がってくるような解説で面白かった。色とりどりの装飾で飾られた中身のみならず、皮に型押しや宝石や象牙などで豪華に飾られた本たちがぎっしり集められたという図書室、見てみたかったなあ。
Posted by ブクログ
中世の写本を作るのに使われていた紙や羊皮紙やインクや羽ペンの作り方やペンの持ち方、彩飾がどんな順番でされていたのか、写本の依頼がどう行われていたのかなど、細やかでわかりやすい解説が面白かったです。内容的には入門編のようなので、同じ著者の本をもっと読んでみたくなりました。