あらすじ
アメリカ南部。小さな村を飛び出し、都会をめざす16歳の双子。より多くを望んだ姉は挫折とともに実家に出戻り、妹は出自の秘密に怯えながら裕福に暮らす。もう交わらないはずの2人の運命だったが――。アメリカで125万部突破、オバマ前大統領が薦める一冊
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Posted by ブクログ
「ザリガニの鳴くところ」を読み終えたあと、たまたま手に取ったこの小説の翻訳も-友廣純さん-でびっくり!
良い翻訳家さんだと思います、とっても読みやすかったです。
小説としても完成度が高くて、人種問題をじわじわと感じることができました。
…わたし自身は、イエローだけど、他者と変わらないただひとりの人間。今日自分の顔を鏡でみて確認したくなりました。
Posted by ブクログ
「色の薄い黒人たちが暮らす町」で生まれ育った双子の少女。
自由を求め家出同然に都会に出る。
「白人」として生きる2人の道はやがて分かれ、全く別の生き方を始めるー。
黒人差別があまりにも染み付いてしまっているアメリカ。差別があらゆる場面で顔を出す。
『ビラヴド』と比肩する傑作。
Posted by ブクログ
数十年前のアメリカで、肌の色が薄い黒人という境涯に生きる双子の姉デジレーと妹のステラの人生の物語。
薄い色の肌にこだわる母や周りの人々に嫌気がさして、外の世界に憧れるデジレーと、貧しさのために大学に行く夢を絶たれたステラは16歳の時に2人で家を出て行った。
どんな思いや考えをもち、どんな人と出会い、どんな選択をするかで、いつも一緒にいた二人の人生がこんなにも別々の方向に向かい離れていく。
白人として生き、裕福に暮らすが、自分を守るためにつく嘘が嘘をよび、自分というものがわからなくなり、その上、娘を傷つけ苦しむステラの心境が痛いほど伝わってきた。
また、真っ黒な肌で生まれたデジレーの娘のジュードは、困難がありながらも自分に正直に生きてとても輝いて見えた。母を愛する彼女が、母の望みを知りながら応えられないことに苦しみ、本当のことを言えない辛さもすごく伝わってきた。
責任を伴いながら、大人になるにつれて本当のことが言えないことも出てくるし、本当のことは外から見えないこともある、と実感を含めて思った。
デジレーとステラが離れても、二人の娘ジュードとケネディが巡り合うという運命に、縁や味わいが感じられる物語だった。
また、今なお根深いアメリカの人種問題を知る機会にもなった。
人はそれぞれの境涯の上に人生を歩む。人種、性別、貧富、社会的地位…それらの問題を自分のものとしてしっかり考えていけるようにしたい。
Posted by ブクログ
ルイジアナの小さな町マラードで黒人夫婦の家で生まれたクリーム色の肌と、はしばみ色の目と、緩やかに波打つ髪を持った双子のステラとデジレーとその娘の物語。父親がリンチで殺されるのを目撃したステラとデジレーは16 歳で母親のアデルを一人残してマラードを去り、ニューオリンズで新しい生活を始める。10年後、デジレーは不幸な結婚生活から逃れる為、黒い肌の娘ジュードを連れて実家に戻り、ステラは母親とデジレーとの家族の絆を断ち、白人と結婚して白い肌の娘ケネディと白人として暮らす。外見が白人でも黒人の血が一滴でも混ざっている者は全て差別の対象とする血の一滴の掟(one-drop rule)。デジレーはありのままの自分をアイデンティティとして受け入れ、ステラは出自を伏せ白人になりすますPassingとして生きることを選択する。ステラはその選択の代償に母親やデジレーとの絆を失い、ペルソナとアイデンティティの葛藤に苦しみ、秘密が暴かれることに脅かされる日々をおくる。タールベイビー “tar baby”とイジメを受けながらも未来に向かい着実に進むジュードと、母親の秘密を知らされアイデンティティの一部が剥離するケネディの二人の従姉妹の物語も切ない。
有色人種の日本人でありながら「美白」とか「色の白いは七難隠す」とか白人の美の基準によるカラリズム(Colorism)に汚染された社会に気付かされたり、あらゆる属性の共存を目指す「ダイバーシティ」を宣伝用に虚しく叫ぶ企業や政治家を思い浮かべたり、その実、自分自身はそれらを非難する資格もない傍観者であることを自嘲するなど色々と啓発させられる一冊でした。
「私に言い訳する必要はないわ」彼女が言う。「あなたの人生なんだから」「でも、私の人生じゃない」ステラは言う。「私のものなんてひとつもないの」「あなたが選んだんじゃない」ロレッタが告げる。「だったら、あなたのものなのよ」 “You don’t have to explain anything to me,” she would say. “It’s your life.” “But it’s not,” Stella would say. “None of it belongs to me.” “Well, you chose it,” Loretta would tell her. “So that makes it yours.”
初めのうちは、なりすましはとても単純な行為に思え、なぜ両親がその道を選ばなかったのか理解できなかった。だが、当時のステラはまだ若かった。自分ではない人間になるのはどれほど時間のかかることか、自分の居場所ではない世界で生きるのがどれほど孤独なものか、まだ気づいていなかったのだ。At first, passing seemed so simple, she couldn’t understand why her parents hadn’t done it. But she was young then. She hadn’t realized how long it takes to become somebody else, or how lonely it can be living in a world not meant for you.
Posted by ブクログ
読んでよかった。
大学で学んでなんとなく知ったつもりになっていたけれど、当事者の暮らしは想像できていなかった。
解説もわかりやすく改めて勉強しようと思いました。
Posted by ブクログ
同じ人種・民族の中にもある「カラリズム」、人種差別、DV、性的マイノリティ、母娘関係など、複雑なテーマが盛りだくさんの作品だった。結局、差別やいじめをなくすのは不可能なことだと思うけど、なくす努力は必要だと思う。
Posted by ブクログ
『ザリガニの鳴くところに』の友廣純さんの翻訳が気に入り、本作も読んでみた。やっぱり日本語が綺麗で読みやすい。
話が面白かったかと言われると微妙なところだが、平成生まれの日本に住んでいる私には想像できない人種差別について知ることができて読んでよかったと思う。
双子妹のパッシングがバレたり、最後は親子4人が揃うなど、勝手に安易な想像をしていたが、そういう大衆小説のような作品ではない。
Posted by ブクログ
色の薄い黒人。
ほとんど白人にしか見えない双子。
しかし、当時のアメリカはまだまだ白人と黒人の差別がある時代。
デジレーが子供を連れて帰ってきた。
本当は大学へ行きたかったステラ。大学に行くために高校は卒業したかったのに、働かなければならず、中退。悔しい。
2人で逃げ出す。
生まれ育った故郷から逃げだした双子は、始めは一緒に生活をしていたが、
ステラは突然いなくなる。
大人になり子供(ジュード)をれて、デレジーは、マラードへ戻ってくる。
ジュードとリースの恋
トランスセクシャル→性転換症→ 身体的性と性自認が一致しておらず、性別適合手術やホルモン療法などの施術を望む状態、もしくは、そういった手術を受けた状態のこと。
大人になったステラ。
肌の色が白いから黒人には見えない。
でも、いつもいつもビクビクしていた。
はっきりとラインがありこちらからは白人エリア、こちらが有色人種のエリアと決まっていたから。
夫も娘もステラが黒人であることを知らない。
ずっと隠して生きていたいと思ってるステラ。
あまりにも長く嘘をついてきたせいで、今更、本当の事など語れない。
嘘をつくのが当たり前になっていた。
白人として生きていくために。
再会した時にグッときた。
指輪の話のところも。やっと!と思った。
アメリカのこと何も知らなかった。
知らなければいけないと思った。
良書。
Posted by ブクログ
小さな町を出ていった双子のふたりの半生と、それぞれの娘たちの生きざまを静かな筆致で描いた物語です。彼女たちのその生きた旅路には、派手な事件やどんでん返しがあるわけではありません。ただ、目の前にあるさまざまな差別や偏見と対峙し、ひたすらに自分らしさをつかみとって、握りしめて、生きていこうとする姿だけが描かれています。そしてそれが、静かに確かに、胸を打つのです。
今もなお黒人への差別はアメリカに根強く存在していることは遠い日本でもよく伝わるほどです。けれど時代を遡れば、それはむしろ区別とでもいうような、同じひととしてすらみなさないようなむごさを伴うものでした。そんな時代を生きぬいた彼女たち一人ひとりが直面した「当たり前」の厳しさが、あまりにも辛い、と感じました。
自分らしくあるために、選んだこと、選ばなかったこと、あきらめたこと、つかみとろうとしたこと。それらの欠片すべてがあわさって、今の自分を形づくっている。
心臓はただの拍動する臓器だけれども、無限の感情と行動を生む基礎となっているように、彼女たちが共通する「礎」を持っていても、無限の可能性と生き方が存在する。そしてそれを、この物語は温かく描き、それらを肯定している。苦しみもがきながら生きている人々へ寄りそう様なお話だと、そう思いました。
Posted by ブクログ
双子とその周りの人々の人生が描かれている。
時代をいくつかまたぎ、舞台となる場所もまたぎ、さまざまなキャラクターが登場して、深みのある豊かな作品
ちょっとミステリー的な要素もあって読み進めやすい作品になっている。
全てが簡単につながるものではなく、うまくつながらないシーンが心地よい
アメリカの人種社会の実態についても多少理解が深まる。
双子という設定がまた絶妙で、当たり前だが違う人生を送る部分にリアリティーを感じた。
Posted by ブクログ
アメリカの人種差別は複雑だ。混血ではなく一滴でも黒人の血が入っていたらいくら白人に見えても黒人となる。そして白人に見える双子の選びとって別れた運命を大河小説のように描いた本作、全ての人々が生き生きして読ませます。特に黒い上にも黒いデジレーの娘ジュードの強さ優しさが魅力的です。
重ねた嘘を守り抜いて魂の平安を失ったように見えるステラにいつか平穏な日々が訪れることを祈ります。
Posted by ブクログ
行方不明の叔母ステラにジュードが出会う確率は出会わない確率と同じである。そのことに数学が専門のステラは気づいている。努力をしても結果が自分の思うようにならないことはよくあること、でも運命に逆い空回りしてしまう。
リースがジュードに「ときどききみは、いまだに向こうにいるような態度をとるだろ」と言う。肌の色に劣等感のあるジュードは白人と偽るステラと似ている。その逆で、デジレーはケネディと演じる女性という点で似ている。遺伝がクロスしている。
この小説の中で世間によくいる男たち(ステラとデジレーの夫)は完全に脇役です。
Posted by ブクログ
人間を人類して差別する社会の救われなさ。
「ねえ、知ってた?ジュードは白人の女の子と友達になったりするのよ。そんな世の中になったのね。ねえ、あなたは知ってた?世界がそんなにも新しくなっていたなんて。」
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地図にも載らないような小さな田舎町。肌の色が薄い黒人が暮らす町で生まれ育った2人は年頃になるとそこを飛び出して都会に向かった。1人は結婚に破れて娘を連れて故郷に戻り、もう1人は自分を偽って白人と結婚して娘をもうけ、家族や隣人を欺いて生きている。互いがどこにいるのか知らないまま、それぞれの娘同士が偶然出会ったことから、再び結びつけられる---
苦しみながらも自分に向き合って生きてきた姉と家族だけでなく自分をも騙して生きる妹。
私は肌の色による差別の本当のところを知らないので何とも言えないけど、アメリカでは根深いものがあって、それがこんな小説を生み出すほどのものなんだということが、何だかやるせない気持ちになりました。同じホモサピエンスなのに。
Posted by ブクログ
アメリカの歴史的背景をアメリカ文学を通して知ってると、この本の重さが分かるのかなぁ。
カラーブラインド、パッシング、人種的差別。
島国の日本にはあまり馴染みがないもんだもんなぁ。
むらはちぶーとか、身分制度ーとか、そんなのを頼りに読むには、浅い気がする。
なので、勉強不足のわたしには星3個。物語は特に山場があるわけでもないので、たんたんとすすんでいく。
Posted by ブクログ
日本に生まれ育った人は、大抵見た目で人種を判断している。白人に見えれば白人だと思う。しかし人種というものに科学的根拠はなく、人間を人種で分けることは意味がないどころか危険なことだと考える人も増えている。アメリカでも現在はそうだろう。
しかし、ほんの少し前まではそうではなかった。
ジム・クロウ法(ワンドロップルール)により、一滴でも黒人の血が入れば、黒人と決まっていた。それがいかに個人や社会に浸透していて、人々を苦しめ、混乱させたかをリアルに感じられる物語だった。
見た目はそっくり、ということは見た目はほぼ白人だった双子が一人は白人(に成りすました、と描かれる)、一人は黒人のまま生きる。それが、彼女たちだけでなく、子どもたちの人生にも影響していく。
この小説が双子のデジレーとステラを描いただけだったらありきたりなものになったかもしれない。しかし、その子どもたちまでを描いたから、深みのあるものとなっている。一人は「タールベイビー」と呼ばれるほど黒く、一人はブロンドでスミレ色の瞳を持つ。この二人の人生が何度か交わるところが妙味となっている。
黒人同士で色が薄い方が価値があると考える、なんて聞いたらバカバカしいと感じるかもしれない。しかし、じゃあ私たちの中にそういう感覚はないか?あるだろう。私たちだけでなく世界のあらゆる時と場所でも。そんな差別意識を炙り出す作品でもあった。
Posted by ブクログ
おもしろかった。黒人差別について、あまり詳しく考えたことも知ることもなかったから、こんなに差別が浸透していた過去の現実に、読んでいて刺激された。
白人として扱われたい黒人、男性になりたい女性、ひとつの場所に留まりたくても留まらない人、逆に留まってしまう人。何者かになりたくてみんながもがいていて、人生の長い時間をかけて自分と向き合いながら、最終的に選んできた選択の上の運命とぶつかる過程が強くて綺麗だった。
Posted by ブクログ
アメリカ南部のマラードは、白人のように色の白い黒人が住む町だった。地図にも載らないほど小さなその町に住む美しい双子の姉妹デジレーとステラは、16歳のとき町が記念日の行事に浮かれている間に二人で家出をする。決して戻ることはないと思っていたが数年後、姉のデジレーは幼い子どもを連れて町へ帰ってくる。その子はデジレーには似ず、黒い肌の娘だった。
妹のステラは、白人として生きようと姉も過去の一切も捨て金持ちの白人男性と結婚していた。互いの今を知らずに、それぞれの場所で生きる双子だったが、その娘たちが偶然に出会う。
アメリカ建国以降続く人種の問題だけでなく、性同一性障害やDVなど、さまざまな社会問題をバックボーンに双子のファミリーヒストリーとして展開していく。偶然性に頼るシーンもない訳では無いが、ドラマチックな展開だった。
Posted by ブクログ
SL 2023.2.10-2023.2.13
双子の姉妹の物語。
その娘たちの物語。
人種差別、性自認、貧富の差。
今の日本に生きるわたしには深く理解できないことも多かったけど、しみじみとした味わいがある。
Posted by ブクログ
色の薄い2人の黒人が故郷を飛び出す。
一方は黒人と結婚して故郷に帰り、もう一方は白人として暮らし白人と結婚して裕福に。
そしてその子供たちは、トランジェンダーの恋人を持ち、自分の本当の姿を見失う。
昔のアメリカに強く残る人種差別を濃く書かれた一冊。
白人になりすましたステラは、裕福に暮らせるけど秘密のせいで私生活や娘との関係が上手くいかず元の家族とも疎遠に…
一方のディジーは、真っ黒な子供を産み元夫からの暴力に晒されたが、娘や恋人や母親と良好な関係が築いた。
ちょっと悲しいのが、ディジーは娘に秘密を作らなかったけど、娘はディジーに秘密を作ったこと。
なんだか2人とも報われない…
ちょっと不完全燃焼…
Posted by ブクログ
後半が面白かった。
黒人のお母さんと、白人のお父さんの間に生まれた子どもは、黒人という扱いを受けることに驚いた。
見た目が白人でも、実は黒人の血を引いているというだけで、ネガティブな感じになるのは衝撃だった。
Posted by ブクログ
「白い黒人」と呼ばれる人々の属性への拘りとその重さ。ここに出てくる人々の真剣さが、ずっしりくる小説。
書き手の真面目さが、最初から最後まで続くので、途中息抜きがしたくなった。
肩が凝りました。小説として、どこかで力を抜いてほしかったな。