【感想・ネタバレ】キャベツ炒めに捧ぐのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

やはり再読したくなった本。ネタバレありです要注意。

江子、麻津子、郁子の60代の女性3人が営むお惣菜屋「ここ屋」の、ご飯が炊ける描写から、この物語が始まる。
料理の(しかも、単なる家庭料理ではなく、売れるお惣菜を作る)腕は確からしい。

3人にはいずれも、それぞれの人生で関わりのあった男性への想いがある。離婚した相手を諦めきれない江子、1人をずっと思い続ける麻津子、夫を亡くした郁子。それぞれが持っている「想い」は、それぞれの「思い込み」でもある。現実とのすれ違いを認められず、捨てきれないところを、物語が一つずつ解いていく。共通の想いびととして描かれる進くんは、3人のおばさんたちに翻弄されて面白いが、ある意味重要人物でもある。

人って、簡単に思いを捨てられないし、吹っ切ることも難しい。それは美味しいご飯やお酒があっても振り切れることではない。でも、生きるための営みの中に、想いはある。
炊きたての米の旺盛な湯気に始まり、キャベツ炒めのシンプルな味付けで終わる、と思っていたら、最後に一波乱あった。この物語の妙味を味わう。

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2022年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・夫(のせい?)で息子を失ったと思っている
・ずっと好きだった人に振られても思い続けている
・結婚して同じ職場の人に主人を取られる

もう少し本の中では詳細に語られるけど
3人の抱える大人な事情はこんな感じ。
これが本を読むにつれて徐々に明らかになる。

どれも苦しいけど、のらりくらりと
それを受け入れながら日々を過ごしていく。
嫌な思いをさせられたと相手が思っている
その気持ちにかこつけて、前の旦那さんに
気まぐれに電話をしてしまう江子には
同情もしちゃうし、奥さんにも気を遣って
あげたらいいのにと両方思ってしまう自分がいた。
自分は悪くない上に、まだ好きだもんね…

たかが風邪でくらいで病院に
行かなくてもいいよと言った矢先に
肺炎で息子をなくしてしまう郁子。
前に進めそうなときに限って
その話を引き合いに旦那さんに当たってしまう。
とてもいたたまれないと思って読んでいた。

この二つはもしかしたら一番近い未来で
ありえるかもしれないという意味で
感情移入が一番できてしまった二人。

3人ともしっかりキャラクターがあってよかった。
3人ともパワフルなので60代というのが
まったく想像できずに読み終わってしまった笑

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2023年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

惣菜屋さんで働く3人の女性の物語。
3人とも60歳前後でそれぞれが大人の事情を抱えている。でも表立ってそれを出そうとせず、あくまでいつも通り淡々と働いている感じが、あぁ大人だなと思った。
3人の距離感もいい。かなり個性が強くて一見折り合いがつかなさそうに見えるけど、あくまで素のままで無理してない感じが心地いい。それぞれ事情があるのを察した上で、変に詮索したり気を遣ったりせず、いつも通りの自分で接してにいるのが、上手く回ってる秘訣な気がする。
(こんな大人な3人だけど、だからなのか?進に対してのアグレッシブさがおもしろかった。笑)
スタート時点での郁子の生気のなさが不安だったけど、徐々に元気になっていく様子がわかった。素敵な仕事仲間と美味しい食べ物に囲まれたいい居場所があってよかった。
それにしてもお料理がどれも美味しそう…!旬の食材を取り入れてる感じとか、使ってる調味料とかが、ちゃんと料理をやってきた人たちのそれだなーと思った。かっこいい。

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2022年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

各駅停車しか停まらない小さな町の、ささやかな商店街にある「ここ家」は、オーナーの江子、無愛想な麻津子、そして最近“従業員募集”の張り紙を見て応募してきた郁子の、三人の独り身女性たちが切り盛りする店。
江子は六十一歳。麻津子は六十歳。郁子は二人より年長だが、新入りのせいか年下のように扱われている。
人それぞれに大人の事情があるのだが、共通するのは料理が好きで食べることが好きなこと。
「ここ家」に四季折々のお惣菜が並ぶように、三人の日々にもそれぞれに変化が…


『静子の日常』を読みたいと思いながらなかなか巡り合わせが悪く、『リストランテ アモーレ』に続いて2冊目の井上荒野さん。
タウン誌に“肝っ玉おっかさんたち”などと紹介されるアラ還の女性たちにだって、心の中には熱く燃え盛ったりくすぶったりするものが、ちゃあんとあるのだ。
米屋の若い配達員・春日くんの登場で、三人それぞれにわかに華やいでしまったりするのも、可笑しみがある。
ただ、郁子以外の二人の先輩方の心情には、もうひとつピンとこなくて、何かもやもや。

けれど、お惣菜はとても美味しそう。
文庫の解説が平松洋子さんなのが、何だか得した気分。

最近どうも、美味しい料理やお菓子が絡む本ばかり読んでいるような気がする。読書のあと、作中に登場したアレやコレやを食べたくなるのは困りものだ。

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2021年02月01日

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