あらすじ
●スーパートマトで病気知らず
●花粉症を治すお米
●害虫に負けないトウモロコシ
●青魚に豊富なEPA/DHAが大豆から摂れる……
実は日本人が世界一「遺伝子組み換え食品」を食べている?
第一人者が教える、SDGsな食卓の未来
【もくじ】
まえがき
●なぜ「科学者の心」を持つべきなのか?
●新型コロナワクチンもiPS細胞も「遺伝子組み換え技術」 ほか
第1章 誤解だらけの遺伝子組み換え食品
●誤解1:食べるとがんになりそうで怖い?
●誤解4:虫が死ぬ作物を食べて安全なわけがない?
●誤解6:消費者や生産者の選択の自由が奪われてしまう?
●誤解8:子や孫に影響が出るのではないか? ほか
第2章 なぜローマ教皇は「遺伝子組み換え」を認めたのか?
●遺伝子組み換え技術とはいったいなんなのか?
●遺伝子組み換え技術に関するリスクはないのか?
●世界中の研究者や公的機関が安全性を認めている
●バチカンが「遺伝子組み換えで生産性を上げるべき」と表明 ほか
第3章 遺伝子組み換え食品 世界の常識・日本の非常識
●スーパーの納豆にはこんな表示がされている
●なぜ日本では「遺伝子組み換え作物」が栽培されていないのか?
●世界29か国で栽培され、栽培面積も増加し続けている
●ウイルスに負けないハワイのパパイヤ「レインボー」 ほか
第4章 もしもがんを予防できる野菜があったら
●スギ花粉症を治すコメが開発されている
●抗酸化力がある作物でがんを予防する
●健康増進に役立つ「GMナタネ」や「GMダイズ」の開発
●ゴールデンライスが貧困層の子どもたちを救う ほか
第5章 「持続可能な社会」を作る方法
●批判して一番得するのは誰なのか?
●食料自給率37%の日本こそ「栽培先進国」に
●地球温暖化でも作物がグングン育つ
●温室効果ガスを減らす不耕起栽培ができる ほか
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
山根精一郎は、植物病理学の農学博士であり、日本モンサントで、41年間在籍し、遺伝子組み換え技術に携わってきた。著者は、「日常的に特定の野菜、特にキノコやアガリクスを摂取することで、がんの予防や免疫力の維持に役立つ可能性がある」と考えている。彼は、これらの食材に含まれる特定の成分(β-グルカンなど)が、免疫細胞を活性化させ、結果的にがん細胞の増殖を抑制する可能性があるという。それを遺伝子組み換え技術で達成しようとしている。
遺伝子組み換え食品で、健康被害がない。世界保健機関(WHO)や米国科学・技術・医学アカデミーなど、公的な機関によるこれまでの調査によれば、承認された遺伝子組み換え食品が健康に悪影響を与えたという事例は確認されていない。
日本国内で流通している遺伝子組み換え食品は、食品安全委員会や厚生労働省による厳格な安全性審査を受けている。この審査では、アレルギー性や毒性、栄養成分の変化など、多岐にわたる項目が科学的な根拠に基づいて評価される。審査をクリアした食品のみが、国内での流通や販売を許可されている。
多くの日本人は、「自然のままが良い」あるいは「人工的なものは気持ち悪い」といった感覚を根強く持っている。遺伝子を操作して作られた植物は、この「自然」という価値観に反すると感じられている。
遺伝子組み換え食品に関する情報が一般に十分に浸透しておらず、「よくわからない」「何となく怖い」と感じる人が多い。消費者は、国や企業の審査制度が十分に機能しているのか、本当に安全なのかという不信感を抱くこともある。しかし、事実として、健康被害は起こっていないのだ・
そういう中で、著者は、本書で、論考を重ねる。現在では、遺伝子編集技術も生まれている。その技術を使って、高GABAのトマト、高オレイン酸大豆も生まれている。日本では、スギ花粉症を抑えるコメが遺伝子組み換え技術でできている。スギ花粉コメは、花粉のように見える擬似的抗原タンパク質を作り、花粉と勘違いさせ、徐々に慣れて花粉症の緩和ができる。ビタミンA欠乏症の改善に役立つゴールデンライスが開発されている。
消費者にとってのメリットは、安定した食料を確保でき、機能性が向上した食品が食べられる。
農家にとってのメリットは、収穫量が上がる。ダイズ、トウモロコシ、ワタ、ナタネなどが世界的に増収している。雑草防除の手間が省ける。農薬の散布量が減る。労働時間が縮小し、大規模化が可能である。そのことによって、コストダウンができる。
著者の主張は、データに基づかない、根拠に乏しい情報を鵜呑みしないことが基本だ。自分の頭で考えて判断すべきだ。
フランスのセラリーニ教授らが、ラットのエサに遺伝子組み換えトウモロコシを食べさせて癌の発生率がたかかった文献が、出され、センセーショナルに報じられた。その論文は取り消しされた。このことがあまり知られていない。科学的に再現性のない事実が紛れ込んでいたのだ。いまだに、セラリーニ論文の亡霊が出ている。それ以降、遺伝子組み換え食品が癌になるというデータが出ていない。
害虫抵抗性のバチルスチューリンゲンシスが作るBtタンパク質は、害虫には効果があるが、人間や動物は消化し、分解する。遺伝子組み換え植物は、競合における優位性・有害物質産生性・交雑性は、審査で確認され、生態系を乱さない。
2017年、ローマ教皇庁のロベールサラ枢機卿は、「遺伝子組み換え技術によって作られたGM原料のパンの利用を認める」とした。
その背景は、10億人以上が栄養不足に苦しみ、2050年までに世界人口は増え97億人に達することで、食料不足が起こる可能性があるからだ。
チーズを凝固させるキモシンは、遺伝子組み換え技術で作られており、世界のチーズの60%は、遺伝子組み換え技術で作られている。
最近であるが、Pivot Bio社が開発した「Proven40」は微生物を利用したトウモロコシに、土壌中の窒素を固定し、トウモロコシの根に供給する微生物製剤である。微生物がトウモロコシの根に定着し、生育期間を通じて安定的に窒素を供給する。天候に左右されにくいため、雨による窒素の流亡(Leaching)や、揮発(Volatilization)による損失を防げる。従来の化学肥料の使用量を削減できる。いやはやすごい技術が生まれてきている。
とにかく、GM食品を避けたい人は、この本を読めば、不安は少しは無くなるだろう。
それにしても、遺伝子組み換え技術は、手段であり、植物をどのような育種するのか?そのことが重要だ。青い薔薇をつくるは、夢があった。植物の持っている力をどこまで引き出すことができるか?そこにかかっているのだろう。今の私は、セシウムの移行係数が高い植物が欲しい。