あらすじ
「この期に及んで、僕の話など聞いて、何になるというのです?」明智小五郎は、日本人ばなれした彫りの深い顔に笑みを浮かべながら、じっと蓑浦を見つめた。特徴的なモジャモジャ頭は、かつて蓑浦元警部補が事件の相談を持ちかけたときと、ほとんど変わりがなく、まだ白髪が混じることもなかった。しかし六十歳を過ぎた彼の顔には、細かな皺が刻まれていた。……(本文より)。謎に包まれた出生の秘密、一高・帝大時代の暮らしぶり、江戸川乱歩との邂逅、そして二十面相との秘められた関係等々、名探偵が自らの生い立ちを独白する。乱歩研究の第一人者が、研究の粋を尽くして描き上げた、明智小五郎の知られざる生涯!
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Posted by ブクログ
明智小五郎が自らの半生を語った回顧談。めちゃめちゃ楽しい一冊です。ただし惜しむらくは、乱歩の作品もいくつか読んでないのある……読んだけど覚えてないのもある……ので、ネタがわからずに素通りしちゃってる部分もあるんだろうなあ。乱歩作品、読み返したくなりました。
乱歩作品だけではなく、実在虚構取り混ぜた登場人物があまりに豪華すぎます。あの人とあの人がそんな関係!? とか。あの人とあの人が同一人物! とか。そもそも明智小五郎の出自がそれって!!! 凄い。あまりに凄すぎる。なんなんだこの超絶豪華キャストてんこ盛りは。夢のような世界かも。
でも確かに、明智小五郎よりもむしろ怪人二十面相のほうが主役かもなあ、ってのは思いました。やはり彼あってこそのあのシリーズなのかもしれません。
Posted by ブクログ
MCU(マーベルシネマテックユニバース)ならぬ「明智探偵小説世界」の怪作!いや快作!江戸川乱歩の生み出した名探偵明智小五郎が生みの親を凌駕して動き出し、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時代の事件を、史実も創作も併せてまるごと呑み込み、もうひとつの昭和史を描き出しています。それは、推理小説と呼ばれる前の探偵小説の黄金時代でもあります。世界的なスーパーヒーローも惜しげもなく投入され、しかもマニアックな歴史の裏方や、その時代を描いた映画やアニメや小説の登場人物もチラチラ、物語に絡んでニヤリとします。たぶん自分では半分もキャッチ出来てないと思います。人名全部書き出して調べると日本の資本主義が完成し最後の帝国主義として崩壊する時代のロマンチックでダークでミステリアスな物語がもっと見えてくるような。読んでてもメチャ楽しいですが、実はこの作品で一番楽しんでいるのは作者かも。二次創作物の鑑です。ただある種のお祭り小説なのでディズニーのスターウォーズに感じる大味な感じが気になりました。それも味のうちですよね。