あらすじ
イラクもアフガンも、泥沼。世界の民主化、テロ撲滅を唱え、最強の軍事力を誇る超大国アメリカは、どこで間違い、力で劣るはずのイスラムに敗れつづけるのか。イスラエル偏重の米国内の政策決定、自国の国益を優先し強権政治やゲリラの支援に突っ走る矛盾、イスラムの文化伝統への無知……。こんなアメリカに追随する日本は危うい。博学の中東研究専門家が圧巻の現地取材を踏まえ、超大国「敗北の原因」を徹底分析。
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Posted by ブクログ
イスラムに負けた米国
著:宮田 律
朝日新書 054
アメリカの正義と、イスラムの大義
なぜ超大国アメリカはイスラムで失敗し続けているのか
アメリカにとってのイスラム政策とは
ユダヤ系ロビー
キリスト教右派
石油企業
軍事産業
これって、現代の十字軍ではないかと思ってしまいます。
石油という財を手に入れるため、聖地を手に入れるため、アメリカが
民主化=アメリカに都合の良い制度化を図っているが第一感です。
気になったのは、次です
■アメリカとムスリム
・イスラム世界では、過激派テロを封じ込めれば封じ込めるほど、アメリカに対する敵意や憎しみがまして、かえって若い世代のムスリムを過激派に近づけることになってしまっている
・イラクでフセインを殺害したことで、国内のスンニ派を、シーア派と対立させかえってテロが増えてきた
・裁かれるべきはフセインではなく、ブッシュ大統領であったが、ムスリムに共有される思いである
・アメリカは、イラク、サウジ、エジプトのスンニ派を応援してきたにもかかわらず、イラクを攻撃し、エジプトを見捨てた
・もともと、アメリカはイギリスと組んで、イランの石油利権を奪取していた
・アラブ・イスラエル紛争では、中立であるべきアメリカが公平な姿勢を取らなかったため、ムスリムの信頼を失った
・アメリカは中東の民主化を訴えるが、そもそもイスラム諸国の指導者たちとは、合意形成ができていない
・対テロ戦争を遂行し、罪のないムスリムを殺戮するアメリカに対して、多くのムスリムが、「不義なる国」のイメージをもっている
・アメリカの提唱する民主化で、パレスチナ自治区への経済援助を停止させイスラム過激派の台頭をゆるした。アメリカの政策・構想とは、ムスリムからみるとちぐはぐなのである
■イランの核武装
・イランから言わせると、隣国のパキスタンでも、インドでも核をもっている。だったらなぜ、イランが持ってはいけないんだ
・欧米や中国が核をもてるのに、イランにはみとめられないのか、欧米の不合理に対する憤りや反発は強い
・ヒロシマ、ナガサキはアメリカがおこなった人道上の罪として日本以上にイスラム世界では強く意識されている。なぜなら、第二次世界大戦後のアメリカのイスラム世界への軍事介入とムスリム市民殺害とイメージが重なるから
・アメリカはイランの濃縮ウランの製造を止める有効な手段をもっていない
■冷戦後の対テロ戦争
・アメリカはこれまで中東の共産主義化を食い止めるためにイスラムと融和をしてきた。
・今日、ソ連を中心とする共産勢力に代わる、脅威が必要であった
・アメリカの保守的なシンクタンクは、イスラムの脅威を喧伝するようになった
・イランにある巨大な石油権益をまもるためにアメリカは行動している。正義のためではない
・1990年代になると、イスラム原理主義の動きは中東全体へと波及していった
・アメリカはフセイン政権の人権抑圧も問題にしたが、多くのムスリムの目には、イラクとともに、パレスチナで困窮するムスリムに対しても支援の手を差し伸べないアメリカの姿勢を「偽善」的なものと映ったに違いない
目次
はじめに
第1章 対テロ戦争でイスラムに敗れたアメリカ
第2章 アメリカ・イスラム関係の歴史的発展
第3章 アメリカと「イスラム原理主義」との遭遇
第4章 冷戦後の対テロ戦争の予兆
第5章 アメリカと中東民主化
第6章 アメリカが強調するイランの「核兵器製造」
第7章 アメリカとイスラムの永続する戦争
おわりに
ISBN:9784022731548
出版社:朝日新聞出版
判型:新書
ページ数:272ページ
定価:740円(本体)
発売日:2007年07月30日第1刷