あらすじ
日本人特派員、土井垣が降り立ったソ連は“特ダネ禁止”の地だった。
謎に包まれた帝国で監視の目を潜り、取材を開始する土井垣。しかし、その周囲では次々に不可解な出来事が起こる──。
ソ連崩壊という世界的スクープを報じた斎藤勉をモデルに、魑魅魍魎が蠢くソ連崩壊前夜を圧倒的リアルで描き尽くす。
今、読むべき本物のインテリジェンス小説!
諜報、盗聴、罠、駆け引き、裏切り……
“ソ連崩壊”を世界に先駆けて報じた
日本人記者が見た「真実」とは?
「どうやら、この国のことを少し甘く見ていたらしい──」
吉川英治文学新人賞を受賞した『ミッドナイト・ジャーナル』、直木賞候補となった『傍流の記者』。
気鋭の著者が放つ、極寒の氷をも溶かす熱き闘いの物語!
解説は、保守派に換金されたゴルバチョフの生存情報の第一報を伝えた、当時、在ソ連日本国大使館の三等書記官だった作家の佐藤優さんです。
※この電子書籍は2019年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
産経新聞の駐ソ特派員であった斉藤氏をモデルとした「東洋新聞 土井垣」記者が,ペレストロイカ半ばのモスクワに赴任し,改革派と保守派の抗争,ベルリンの壁崩壊,保守派クーデターとエリツィンの台頭を経て,ソ連が解体されロシア共和国が設立されるまでの5年間を描く.
ゴルバチョフのペレストロイカは,国民の民主化運動よりも,むしろソ連構成国の民族運動に火をつけ,それはゴルバチョフらの予想を上回るスピードで進行し,グリップを失った共産党は70年間に及ぶ統治者の座から降りざるを得なくなる,
一方,赴任当初は当局発表の行間を読み取り,各方面を刺激しないような記事を作成することが特派員の業務であったのに対し,チェルノブイリ事故の隠蔽に端を発して始められたグラスノスチによって,土井垣らの取材活動は次第に自由度が増し,ついには大スクープをものにすることもできたのであるが,それは新生ロシアに根付くことはなかった.「私はあなたに『ソ連という国は変わらない』とも言ったはずですよ.」(p.408)