あらすじ
北海道から茨城に引っ越した五歳の「私」。好きなことはペンちゃんの漫画を描くことと、家で遊ぶこと。新しい幼稚園は、うるさくて、トイレに汚い水があって、男の子が肩を押してきて、どこにいても身の危険を感じる場所だった。ある日、おゆうぎの部屋が誰も来ない安全な場所だと知り――。卒園までの半年間を幼児の目線で描く、著者初めての私小説。
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Posted by ブクログ
主人公のもりなつきは、言葉遊びをしている点で、太宰治の『人間失格』を思わせるところがあった。また、カフカの『変身』のように不条理なところが垣間見られた。
さくらももこの『ちびまる子ちゃん』にも通ずる大人チックな観察や表現も持っていた。ただ、ほとんど、もりなつきの目線から世界が広がっているので、作者の独白のようにも感じた。ドストエフスキーの『地下室の手記』にも近いだろうか。
ストレンジャーであることの意義を教えてくれる小説だったと思う。つまり、遠く北海道から訪れ、卒園後は別の小学校に入学することが決まっている。その通過点をトンネルを抜けるようにうまくやり終えることに、ただそれだけに注がれている。
Posted by ブクログ
最初、幼稚園生が大人の表現で?と、違和感を感じだけど、読み進めるうちに違和感は無くなった。
幼稚園のトイレ怖かった。子供なのに、子供嫌いな人に是非!小さい頃に思っていた感情が共感できます。
怒涛の幼少期の感覚
自分の幼少期の記憶で強く残っているものはなんだったか思い出すきっかけをくれる作品。
幼少期の記憶というのは大人になって繰り返し思い出すたびにちょっとずつ改ざんされたりしていくものだと思う。
この小説では5歳の男の子のお話だけれども、改めて
ああ、自分の幼少期にもこんな感覚になった、と思い起こさせてくれるところがある。
解説にもあったが、身体の感覚を伴ってが書かれている文章なので、
比較的(もう確認しようがないので)改ざんされていない、無垢に近い思い出がよみがえるのかなと思った。
自分も幼少期、こんな風に感じたことがあったな、と思いだせる、
まだ人生経験が浅いのでわからなかったけれど、今だったら名前が分かる感情などもあったんだなと。
能町さんはそういった鋭い感覚で子どもを描くのがとても上手だと思った。