あらすじ
「社会学部はあっても世間学部はなくて、世間そのものは厳然としてあるのだった。世間は学問のレベルをはるかに超越した虚空にあるものと思えた」。若き日に学んだ「世間」、万華鏡のように千変万化する文士的「世間」、夫婦の、老人の…変遷するこの不可思議なものを追いながら、巷に潜む「世間」を描く。博識と豊富な経験とユーモアが横溢し、熟達の筆が明らかにする「世間」の姿とは。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
文章に勢いがある。いまも疾風怒涛。いまここの出来事に、過去や知識が二重写し、三重写しになる。さらりと鎮魂のことばもある。若いとこうはいかない。
「世間」で出来事を束ねるという趣向。まずは、「世間知らず」だった自分のことから始まり、4部で構成。個人的には、とくに第3部、文士と世間がおもしろかった。岡本かの子と瀬戸内寂聴の話や、憧れの坂口安吾になりきって写真家の坂口綱男に写真をとってもらうエピソードがいい。
南伸坊に「芥川龍之介って牛乳屋の息子なんだよね」と電話すると、「橋本治もそうだよ」という反応。「牛乳を飲んで育った子は栄養がついて背が高くなって頭がよくなるんだ」とか。なにを話しているんだか。