あらすじ
水銀、この美しい毒に囚われた二人の青年の数奇な運命――
昭和13年、鉱山技師の那須野寿一は、北海道東部の山奥で、巨大な水銀鉱床と地図にない集落を発見する。〈フレシラ〉という名のその集落には、ある秘密を抱えた一族が暮らしていた――。
フレシラの鉱夫となった一族の青年アシヤ。寿一の息子で、水銀に魅せられた源一。太平洋戦争、朝鮮戦争特需、水俣病の公害問題……昭和の動乱に翻弄された二人の青年の、数奇で壮絶な生き様を描く!
【目次】
第一章 赤い岩 ―昭和13年
第二章 水飲みたち ―昭和17年
第三章 不死身の鉱夫 ―昭和18年
第四章 冷たい山 ―昭和24年
第五章 ある母子 ―昭和26年
第六章 人間の血 ―昭和34年
第七章 湖底 ―昭和38年
第八章 飛ばない鳥 ―昭和39年
第九章 きらめく水のほとり ―昭和43年
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
水銀にまつわる村の少年の成長の話
芦弥の下の緩さは嫌い、妻も妾も子も誰1人幸せにならない
性描写も少なからずあったしきもい…
結局自分の事しか考えてなかった
それは集落という閉塞的な空間で育ったから仕方ないのかな
「また会えてよかった」と芦弥が忠樹に言った一言が刺さった!
読んでて色々思う事があって泣いてしまった
話の内容で現代人の私には…ん?って感じるところもあるけど結局こういう歴史があるから私たちは今
幸せに暮らせるんだろうな
Posted by ブクログ
昭和13年、北海道東部の山奥で、自然水銀の湧く巨大鉱山が発見された。
那須野寿一は、鉱山技師として調査に入った山奥で、ひとりの少年・榊アシヤと出会う。
その集落には、〈水飲み〉と呼ばれる水銀への耐性という特殊な体質を持つ者たちが住んでいた。
フレシラ鉱山に住む〈水飲み〉の一族と鉱業所で働く者たちの物語だが、かなり壮大でありとても重みのある内容だった。
水銀と共に生きる一族の繋がりの深さだけではなく、失踪や殺人、水俣の公害問題、動物実験、その中で戦争の混乱もあり、これが時代を感じるということなんだと思った。
読み応えのある一冊だった。
Posted by ブクログ
ガツンと重い作品でした。
面白かったです。
時は1959年から。
北海道のフレシラ鉱山で働く鉱夫たちの中に<水飲み>と呼ばれる、水銀に耐性を持つ血筋の者たちがいました。
その者たちは<水飲み>故に、水銀中毒を起こす心配がなく、フレシア鉱山で優遇されて働いていました。
その中の一人榊芦弥(さかきあしや)が主人公です。
アシヤは<水飲み>故に妬まれ、二番堀の底に落とされますが6日後に水銀を飲みながら生還し、不死身の鉱夫と呼ばれるようになります。
フレシア鉱山の内部抗争や家族間の諍い、人知れず殺人事件も起こります。
戦争がなくなり、平和になり、水銀の需要もなくなり、熊本で水俣病が発症します。
そんな斜陽産業に携わる男たちとそれを取り巻く女たち、家族、一族の物語です。
<水飲み>は竜血の山に愛された一族。
<水飲み>の不死身の鉱夫アシヤの生涯を描いた物語。
Posted by ブクログ
北海道の石北峠にあったイトムカ鉱山をモチーフにした物語。
水呑みと呼ばれる現地民を主人公にしたフィクションだけど、水銀鉱山の歴史を知ることが出来て、とても読み応えがあった。
Posted by ブクログ
これは水銀鉱山と生きた者たち、そして水銀に翻弄された者たちの物語である
ブク友さんにも〈酒飲み〉は多いと思います
例えば、カエルのアイコンさんとか
私は〈酒飲み〉ではありません
お酒は嫌いです
けど、〈水飲み〉です
仕事柄水はよく読みます
だけど、飲む水はウォーターの方です
なので、本物の〈水飲み〉ではありません
本物の〈水飲み〉は水銀を飲む者のことです
水銀は猛毒です
蒸気を吸い込めば立ちどころに病んでしまう
だが、本物の〈水飲み〉は生まれながらに水銀への耐性をもっているので問題ない
本物の〈水飲み〉に憧れて、私も試しに水銀を飲んでみました
だって、水銀ってちょっと美しいでしょ
美味しそうに見えるでしょ
そしたら、やっぱりダメでした
ちょっと言うか…、だいぶ気分が悪いです
なのでレビューは終わります
Posted by ブクログ
水銀を飲んでも中毒にならない特殊な体質を持つ〈水飲み〉一族。
この発想を思いついた岩井さんはすごい!
水銀鉱山、戦争など自分の苦手なテーマなのに、この特殊体質の〈水飲み〉のおかげで面白くて一気読み。
苦手なテーマでもこんなに面白く読みやすくしてしまう岩井さんの発想に感動してしまった。
普通の人間は、蒸気を吸い込むだけでも危険な水銀。でも〈水飲み〉は水銀を飲んでも何ともない。
こんなにすごい能力があれば怖いものなしに思うけど、十分な教育を受けていない〈水飲み〉の生き方にはもどかしさを感じる。
実在した1930年代のイトムカ鉱山をモデルにしたノンフィクションをベースに、ミステリー、人間ドラマなどのエンタメ性もガンガン入ってくるので全く飽きない。
特殊設定や人間関係もクドいくらいに説明が入るので、サラーっと速く読んでもどんどん頭に入る読みやすさ。
自分の知らない時代の、見たこともない土地の興味のない鉱山の話なのに、自分もその場で一緒に観ているような感覚になるから不思議だ。
そして〈水飲み〉というあり得ない設定なのに、登場人物が生きてるように感じる。
戦争の時代に翻弄されながらも必死に生き抜く鉱山で働く人たちや、公害問題なども描かれている。
最初は興味がなかった水銀に、段々と自分も魅せられていく。
水銀は子供の頃に体温計で見たような…くらいしか記憶がないのでググってみると、大量の水銀はとてもきれいで美しい。
中国の始皇帝が不老不死の薬として飲みたくなるのもわかるかも。
読み終わってからも水銀についてもっと知りたくなってググりまくった。
知らなかった分野にも興味を持たせてくれた岩井圭也さんにハマってしまった気がする。
貸出中の作品が多いので、次は『楽園の犬』に進もうかな。
またもや自分の苦手なスパイや難しそうなテーマだけど、岩井さんなら何だかいけそうな気がするのでチャレンジしてみよう!
Posted by ブクログ
まことさんの本棚から
今確認したらまことさんが本作を読んでいたのは約2年前、よく2年も寝かしてたな
そしてまことさんのレビューを読んで読もうと思ったことよく覚えてたな
すごいなわい(結局自分)
はい、水銀を飲んでも毒にやられない得意体質をもつ”水飲み”と呼ばれる一族のひとり榊アシヤが辿った数奇な人生の物語であります
実際に北海道にあったイトムカ鉱山をモデルにしてるみたいね
でもって水銀ですよ
古代中国では不老不死の妙薬として皇帝たちが求めて飲んだとも言われています
始皇帝やナポレオン、エドガー・アラン・ポーも飲んでいたようですね
こうなってくるとみんなの興味はひとつしかないですわな
はいはい分かってますよ
「水銀て美味いの?」
ですよね
本作でも、水銀に魅せられたもうひとりの主人公とも言える鉱山の所長那須野が”水飲み”であるアシヤに尋ねており、それに対してアシヤは「あれだけ綺麗なものが、まずいわけねえ」と答えています
まあ実際にはただの金属なので無味だそうです
なんだよ夢がないなあ!
Posted by ブクログ
ファンタジーだけどリアルさもあり最期がどう迎えるか気になって気になって、、、
愚かさと純粋さとを感じながら、辿り着いた場所は幸せだったのか不幸せだったのか
Posted by ブクログ
重厚感あふれる物語なのに、なかなかページをめくるスピードが上がらず‥。多分、希望を見出せない暗い内容の所為? それでも岩井圭也作品は、知らぬ間に骨太な世界に引きずり込む"中毒性"を有している気がします。もしかしたら私、自称岩井中毒患者の一人かも‥。
物語は昭和13年から始まり、豊かな水銀鉱床を抱く北海道東部の未踏に近い山系で暮らしていた、水銀への耐性を持つ<水飲み>と呼ばれた一族の、30年間の壮大な物語です。
読み進めるほどに、歴史小説、人間ドラマ、ファンタジー、ミステリーなど、物語に内在する多くの側面に気付かされます。よく言えば「宝庫」で、私は楽しませてもらいました。
ただ、人によっては「盛り込み過ぎ」で、もっと焦点化しては?と受け取られるかもしれません。
さらに、女にだらしなく腑抜けな主人公・アシヤ。おそらく共感を得られにくいし、感情移入も難しいでしょう。
しかし、戦争や水俣病などの時代と社会情勢の波に翻弄されながら、銀採掘の盛衰を背景に、そこでしか生きられない者の運命・生き様を、鮮やかに描き切っています。
根幹テーマが「水銀鉱山」なのは間違いありません。他に利用され、自ら毒性をもつ水銀‥。アシヤは、30年で役目を終えたフレシラ<赤い岩>の山の象徴なんですね。心温まりはしませんが、アシヤの人生を丹念に描くことこそが、"竜血の山"を描くことだったのだと解釈しました。
昭和の時代の変遷を鋭く観察し、劇的な展開を示してくれた岩井さんの筆致に圧倒されました。
千早茜さんの、石見銀山を題材にした直木賞受賞作『しろがねの葉』を思い出しました。本作と同じ年(2022)の刊行だったんですね。時代背景・内容は違えど、濃密さは相通じるものがある気がします。岩井圭也さんの未知の骨太小説、盲点でした!
Posted by ブクログ
昭和の水銀鉱山が舞台。ファンタジー要素がテーマに深く関わりますが、戦時中と戦後の水銀需要、水銀鉱山と水俣病など、事実も散りばめられていて不思議とリアリティのある読み心地。
終わり方がとても美しい。好き。
でも登場人物たちがあまり好きになれるタイプではなく星4つ。
Posted by ブクログ
01月-08。4.0点。
戦前から戦後の水銀鉱山の物語。北海道の鉱山に暮らす、水銀中毒にならない人達の集落、主人公は集落の子供。
主人公と水銀鉱山の関係者たちの物語、面白い。物語の熱量、人間模様の描写が非常に優れている。この作家、将来的に直木賞獲りそうだな。
Posted by ブクログ
久しぶりに寝る間を惜しんで読み切った程、引き込まれた。ただ、もう読み返すことはない。
話の内容はぐいぐい引き込まれる凄ぶる良質な作品ではあるのだけれど、内容が暗くて再読したくない。
主人公の性格が嫌だ。なんだよ妾って。絶対許すまじだわ。
誰も幸せになっていないし…困ったもんだ…
Posted by ブクログ
岩井圭也の小説を初体験。なるほど評判のとおり読ませる小説を書く作家さんだというのが第一の感想。
体質的に水銀中毒にならない耐性をもつ「水のみ」という人々を主人公格においているので、もっと土着ファンタジーかと思ったが、意外にも公害問題と産業基盤の変遷に踊らされる鉱山労働者の労働問題に主眼を置いた大河小説だった。
プロレタリアート文学というのは、思想臭がまとわりつきやすく、主義主張に賛同するかどうかはともかくも、俺のように娯楽としての読書をしている立場には、どうも説教臭くてなじめないことが多い。この作品にも一部そういう風味があって多少辟易とした。
そういう意味では、ファンタジー要素は臭みを和らげる効果もあって良かったのかも。逆に純然たるプロレタリアート文学を求めて読む人には、ブラック愛好家におけるコーヒーフレッシュや砂糖のような余計な味付けなのかもな。
Posted by ブクログ
アイデアだけで成り立つ小説かなという気はするが、何か西村健の炭鉱物のような荒々しさがある。
それにしても、この作家さんの抽斗の独創的なところには感心する。
Posted by ブクログ
北海道の巨大な水銀鉱床。水銀に耐性をもつ「水のみ」と呼ばれる山中集落の人々。戦争、特需、水俣病、差別。昭和の動乱のなか、炭鉱の町で水銀と共に生きる人々の壮大な物語。
水のみ、というファンタジー要素がありながらも、史実になぞらえた設定とリアルな描写でのめり込まずにはいられなかった。アシヤが人として出来上がっていないところが逆に生々しさを与え、感情をむき出しにする人々の心の動乱もよく見てとれた。
簡単に死人が(殺人含め)出すぎな感じも否めないけれど、あるいはそういった時代だったのかもしれない。
水銀というものの色や質感や冷たさが挿絵のように作品を景色づけていた。
終わり方はは少し物足りない気もしたけれど、それすら時代の成せるわざかと思えた。
読み応えばつぐん。
Posted by ブクログ
タイトルだけ見て、ついに岩井さんがファンタジーを書いたのかと狂喜したが、北海道に実在した水銀鉱山をモデルにした歴史大作だった。
昭和13年、北海道東部の町・辺気沼近くの山麓で、辰砂(硫化水銀の塊)が発見される。派遣された調査班は、山中にひっそりと暮らす部族と出会う。彼らは先天的に水銀に対する耐性を持ち、やがて開かれた鉱山で働くことになる。その中の1人、アシヤを主人公として彼の数奇な人生を描く。
軍事的に必要とされた水銀と、その毒性ゆえの採掘の難しさをうまく物語に取り入れている。予測不可能な展開に唸った。
Posted by ブクログ
舞台は北海道東部、フレシラ鉱山という場で始まる。
水銀鉱床を巡るノンフィクションであり、ミステリーでもある。
最近嵌まっている伊予原作品の科学ものとはまた違ったテイストだ。
主人公アシヤ∼水飲みという語が繰り返し作品中に出てくる。特に悲劇が起きた後には。
生来、自分の出自に疑問はあるものの、繰り返される差別苛めに立ち向かっていくうちに、身についた「不死身の」身上。
フレシア鉱山の組合トップにまで上がりつめる。
だがその身上から出た錆?で二重生活を余儀なくされ、3人の子を持つ。そしてまだ続く黒い悲劇と湖の謎に絡む不可解な出来事。
水銀=竜血。
水俣病に連なっていくとはいえ、或る意味 昭和期に書かれたオカルトもののニュアンスもあった。
水銀は液体であり、温度計に用いられている、そして猛毒であるという知識しかないが作品中語られる、史実、科学知識がスイスイと頭に入ってくる。
最近、暑くて読書するしかない夜半だが、「読書継続耐久時間」が哀しいほど減ってきている・・なのに、この本のリーダビリティは何故か巧まざるものがあった。