あらすじ
■大増税か、国家の役割の縮小か。それとも債務危機か。
逃れられない究極の選択。従来の常識を覆す新鮮な問題提起。世界各国の経済・財政事情に通暁する財政のプロが、コロナ危機を経て、さらにこの先30年にわたる国家財政の未来を描く。2020年フィナンシャル・タイムズ紙ベスト経済書。
■医療、介護、気候変動、年金、インフラ整備、格差問題、教育投資、雇用確保……。コロナ禍への緊急対応のうえに、政府に持続的に加わる支出拡大の圧力。国家財政はこれからどうなるのか。政府が直面する本当に重要な課題は何か。
■実は、支出拡大の最大の領域は、技術の進歩が顕著な医療だ。年金はもはや大きな焦点ではなく、パンデミック対応も脇役でしかない。大きな政府か、小さな政府かというイデオロギーの違い、政策選択の内容にかかわらず、各国はこれまでにない財政の膨張に直面せざるをえないのだ。
■先進国経済に通じた財政改革の指南役が、数量データ、バランスのとれた明晰な分析、緻密な論理構成をもとに先進国財政が直面する支出拡大圧力を読み解く。医療技術と医療費増大の因果関係、雇用安定化・所得補助とデジタル化、介護サービスの展望、気候変動問題と国家財政の関係など、経済構造の変化と財政との関わりを明快に分析。さらに、ボーモルの「コスト病」説の問題、現代貨幣理論の誤りなど、経済理論上の論点も浮かび上がらせる。
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Posted by ブクログ
医療、年金、気候変動…。コロナ禍への緊急対応に加え、長年、支出拡大の圧力が政府を苦しめている。国家財政は今後、どうなるのか?先進国政府が直面する課題を読み解く書籍。
新型コロナ禍とそれによる経済危機は、先進国の政府支出を大きく膨れ上がらせた。大半の先進国では、コロナ禍前の債務が未曾有の水準にあったため、政府支出の大幅増をコロナ禍後も恒久化すれば危機を迎える。平常な状態が戻れば、支出減による債務の縮小に注力すべきである。
一方、長期的にみると、政府支出はこれからも大きく増える可能性がある。その要因は、例えば次のようなものだ。
・医療:慢性疾患の有病率の増加、高額な治療法の開発、医薬品への支出増などで医療支出が増加する。
・高齢化:人口高齢化により、介護と年金の支出が増える。
・地球温暖化対策:「気候投資への出資」など、気候変動に対処するための支出が増加する。
政府支出が増大しそうな分野には、所得補助もある。例えば、貧困の拡大を危惧し、「ベーシックインカム」(政府がすべての人に無条件で支給する定額所得)の導入を求める人々がいる。だが、この制度は、貧困層に不利益をもたらす。既存の福祉給付の方が、ベーシックインカムの給付よりも高いからだ。
多くの政府は、長年にわたって支出を切り詰めており、削減の余地は少ない。よって、巨額の支出増の財源を継続的に確保するには、納税者の大多数に大幅な増税をする必要がある。
増税と支出削減を避けるために財政赤字を認めると、いずれは債務危機やインフレの加速、経済危機をもたらす。新型コロナ禍で、このリスクは大幅に高まった。